1999年6月号
エッセイ

妻木晩田遺跡&将棋

鳥取県生協専務理事

松軒 浩史


 全面保存が決まって本当によかった。 文化庁からは 『国史跡に匹敵する』 として全面保存の要請があり、 遺跡を保存支援する全国組織にまで発展した 「妻木晩田 (むきばんだ) 遺跡群」 は、 電鉄会社がゴルフ場計画を断念し、 鳥取県が国の補助も受けながら計画地のほとんどを購入することで合意した。 もしもボタンを押しまちがえることがあれば、 国内に二つとない貴重な文化遺産が壊されてしまうという状況を目前にして、 鳥取県の生協陣営も県連に結集し、 『日本で最大の遺跡群であり、 鳥取県民の誇りである妻木晩田遺跡群を全面保存されること』 を県に要望していた。
 妻木晩田遺跡群は、 鳥取県大山町と淀江町にまたがる大山山麓の丘陵部に広がる弥生集落で、 弥生時代の代表遺跡で知られる佐賀県吉野ケ里遺跡の竪穴住居跡を上回る墳丘墓群、 環濠、 集落群等、 国内最大級規模の遺跡群として注目されている。 特に、 この地域は山陰地方独特の四隅突出型墳丘墓が集中し、 弥生時代後期の 「ムラ」 から 「クニ」 への発展過程を示す国史跡級の遺跡として高い評価を受けており、 二○○○年前の鳥取県西部に繁栄したと思われる弥生集落を知る上でも貴重な遺跡である。
 若干話しは飛躍するが、 日本古来の文化を大切にし後世に伝えていく点では私も将棋を愛好している。 兵庫県の生まれで神戸にも近かったこともあり、 現在将棋界の最高峰でタイガースの大ファンである谷川浩司前名人のお師匠さんが開設されたJR神戸駅前にある将棋教室に四~五回通ったことがある。 私も生まれてからずっとタイガースファンであり、 前名人と同じお師匠さんに教えて頂いたことを勝手に誇りに思っている。 毎年年明けに開催される鳥取県労働者福祉協議会主催の将棋大会には、 県生協将棋サークルの一員として参加させていただいており、 今年は個人戦で準優勝をはたし棋譜も新聞に掲載された。 別図に準決勝戦で勝ちを拾った時の棋譜を掲載させていただいた。 局面は私の手番で5四の銀を4五に引いた手であるが、 この一手が今回の対局で一番自慢したい一手である。 単なる守りだけの意味ではなく、 次からの攻勢に打って出るための価値ある一手だと自尊している。



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