1998年10月号
視角

求められる、 組織内の情報循環と強力なリーダーシップ   

野々 康明



98年6月2日開催の通常総代会での主な意見は 「共済で稼いで剰余が出るというような経営状況で大丈夫か」 「既存店対策も充分できないのに新店づくりには疑問だ」 「一人・二人班は切る、 班運営費は削るという提案は組合員の理解が充分得られていない」 「専従職員への組合員の期待と実態とのギャップが大きすぎる」 「理事会は今日の経営状況をどう打開しようとしているのか見えない」 等々であった。
採決の結果、 第1号議案 (97年総括と決算)、 第2号議案 (剰余金処分)、 第4号議案 (98年から3カ年中期計画) は賛成多数で可決されたが、 第3号議案 (98年方針) は反対63、 保留144、 賛成234、 棄権31となり、 過半数の賛成が得られなかった。 黒字決算ではあるが厳しい経営数値で出資配当なしという現状にたいして、 痛烈な批判と同時に98年をふくむ今後3年間の中期計画は承認するという、 とまどいながらの総代の採決の姿が数字に表れている。 提案者側として深い反省を痛感する。
今回の総括として経営問題など重要な項目がいくつかあるが、 生協の命ともいえる 「組織運営」 について考えてみたい。

総代との日常的な情報交流
厳しく問われたのは、 ひごろから組合員に情報を広く知らしめているか、 意思決定へのプロセスがきちんとできているか、 理事会・組合員・職員の役割を明確にしきれているかという点である。 こういったことをないがしろにしたことは生協発足以来一度もないと自負するが、 現実はどうなのかを正視せよということであった。
広報やコミュニケーションが実に弱く、 一人ひとりの組合員にほとんど届いていないという認識が必要だろう。 内容はもちろん、 媒体、 ルート (毛細血管がつまっていないか) を含め、 総点検と抜本策が必要である。
総代会の運営や総代の選出についても、 反省、 改革の必要を感じた。 かつてほぼ全域に班ができていたころは班長会も総代も全体の意見を反映していた。 しかし、 いま20万人組合員全体を網羅するような総代の選出の仕組みはできていない。 現在5地区に分けて地区ごとの運営をやっているので、 総代会は各地区独自におこない、 別途、 全体総代会についての事前検討の場を設けている。
地区総代会は法的なものではないので、 できるだけ総会に近い参加を考えた時もあった。 各層からのバランスよい総代選出の前提として、 双方向の日常の情報強化をはかり、 お互いによく通じあっているという状態をつくること、 また楽しく自由に参加できる企画、 とりわけ店舗における来店組合員とのコミュニケーション重視などをはかり、 ひごろから生協へ関心をよせてもらい、 各層から多くの人に総代に立候補してもらえる工夫がぜひとも必要である。

全体を反映した総代会の運営は?
総代は総代会当日だけでなく、 日常的にどんな役割があるか。 1年間活動してきた人が総括や方針を議論するとはかぎらない。 にもかかわらず議論し、 意思決定しなければならない。 「生協さんの課題」 なのか、 「私も含めた組合員全体の課題」 なのかは、 総代の位置づけに関わってくる。 今年は総代対象に双方向の情報発信の強化をはかり、 さまざまな企画への参加を呼びかけていきたい。
そもそも総代会では、 どういう項目を議案とし、 どういう内容で構成すべきか、 どのような採決方法がいいのかも、 大きな課題である。 できるだけ総合的に具体的に組合員が実感できる議案書に、 と努力してきた。 しかし、 そうすればそうするほど 「全面的反対ではなく、 この部分が賛成できない」 という意見が出てくる。 そして保留、 反対が多くなる。 否決は否決であり、 理事会は執行できなくなる。
議案の事前検討としての地区別の話し合いでは、 319人中117件の発言があり、 それなりに成果もあった。 しかし、 各地域では同一提案で論議しなければならない。 基本的に議案を変えることはできない。 「提案が変わるかもしれない」 では、 理解は得られない。 そのため、 「いくら意見を言っても提案は変わらない」 という声になり、 全体総代会でも発言したいという要求になる。 全体総代会での徹底論議の方法を構築しなければならない。

いま、 理事会に求められているもの
総代会決定を日常的に執行している理事会への批判が厳しく出た。 地区枠の理事候補は地区で検討し、 全体枠の候補は検討委員会を設け、 可能なかぎりオープンな理事選出に努めてきた。 総代会当日は理事候補者の顔写真、 経歴、 所信表明の資料を配布した。 しかし、 「理事が何をやっているのかわからない」 「理事は遠い存在だ」 という声がある。 常勤理事の執行能力にたいしては、 ひときわ手厳しい声がでた。 現在の厳しい経営状況を突破するにふさわしい強いリーダーシップが求められている。


のの やすあき
名古屋勤労市民生活協同組合副理事長


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