1998年10月号
書評2
楽しみながら、 二酸化炭素を減らそう
坂本 淑子 京都消費者団体連絡協議会事務局長
『温暖化を防ぐ快適生活 地球環境と大気汚染を考える全国市民会議
[CASA] =編』
かもがわブックレット・118
1998年、 571円
地球温暖化は、 緊急のとりくみを要する問題です。
昨年のCOP3 (地球温暖化防止京都会議) では
「京都議定書」 が採択され、 先進国平均で5.2%という温室効果ガス削減目標値が決められました。
この目標は、 IPCCによる 「すぐに50%から70%の削減が必要」
という報告からみれば、 あまりにも不十分な数値です。
しかし、 この数値の実現さえ容易ではありません。
「京都議定書」 による日本の削減目標は6%です。
しかしながら、 基準となる1990年と比べ、 国内の温室効果ガス排出量はすでに約10%も増加しています。
つまり、 約17%の削減が必要となっているのです。
COP3に続き、 今年11月にはCOP4 (地球温暖化防止アルゼンチン会議)
が開かれます。 この会議では、 COP3で先おくりされた課題、
「吸収源」 や 「共同実施」 など 「抜け穴」 と指摘されている課題が議論される予定です。
「京都議定書」 を実効あるものにと期待したいところですが、
日本・アメリカなどの事前協議では 「削減数値をいかに大きく算定するか」
という 「数合わせ」 の議論が先行しています。
行政や企業に対策を求めるだけでは、 地球温暖化問題は解決しません。
家庭でのエネルギー消費量も増えつづけています。
市民・消費者自らが、 とりくみをすすめて 「温室効果ガスは削減できる」
という事実を示す必要があります。 経済・社会・自然科学の研究者との連携も必要でしょう。
そのなかでこそ、 温暖化防止にむけた経済・社会システムの変革、
技術の開発・普及が可能になります。
この本では、 地球温暖化問題をやさしく解説しています。
さらに、 家庭からの二酸化炭素排出量増加の原因を分析し、
排出量チェックや生活の見直しを提案しています。
著者は 「がまん」 や 「手間」 を強いてはいません。
「江戸時代や昭和40年頃の生活に戻る必要はない。
現在の生活水準を維持しながら 『これ以上はいらない』
と宣言すればいい」 と述べています。 そして、
省エネ機器の選択などによる 「3. 楽して二酸化炭素を減らす方法」、
生活のちょっとした工夫による 「4. 楽しみながら二酸化炭素を減らす方法」
を提案しているのです。
いま、 環境問題のなかでは、 ダイオキシン、 環境ホルモンなど化学物質汚染に関心が集まり、
地球温暖化への関心は薄れているように見えます。
しかし、 これらは同根の問題です。 どちらも安全性よりコスト・利便性を優先する社会システムに原因があるのです。
「みんながとりくむなら……」 とようすを見ている人々や企業、
行政の取り組みも、 「あなたの一歩」 から始まることをあらためて考えさせる一冊です。