『協う』2006年10月号 書評2

山崎 丈夫 著
地域コミュニティ論 -地域分権への協働の構図-
(自治体研究社、2006年7月、2500円+税)


佐藤 尚子
地域と協同の研究センター


 1999年4月に3,232あった市町村が、2006年4月には1,821となる。この7年間に1,993の市町村が合併して582市町が誕生した。住民・議会・首長とそれぞれの立場から、わがまちの現在から未来をみすえ、また地域産業の振興とまちのアイデンティティにかけて、住民投票制度をも使って合併のありようを論議し決めてきたまちもある。町村会は政府の合併案に対し「基礎的自治体の連合」案を提案しており、平成の合併第1幕の取り組みには地方自治制度を発展させる貴重な実践がいくつもあった。引き続く2009年度末までを第2幕とし、「人口1万人未満の」町村や大都市圏の自治体が合併の対象になるといわれている。くらしを成り立たせている地域と基礎自治体との関係、そして国のありようについて、都市の住民が真剣に論議しあい、人権保障を可能にするしくみとして地方自治制度の充実がはかられることを期待しながら、この書を読んだ。
 日々暮らしていて、その地域的区画内で個人的に解決できない共同の問題がおきたとき、依拠するところは町内会・自治会である。「企業社会」といわれる社会を生きてきた日本人が、地域とむきあい、その基礎組織である町内会・自治会に主体的に参加し、地域の共同管理能力を高めていくなら、ずいぶん住みやすい地域になっていくだろう。その力の高まりが真の地方分権をつくっていくのだろう。この書では「地方分権は人権保障をするための地方自治制度の整備とそれに向かう取り組みである。自己決定権の拡大を求めるまちづくりや地域社会設計について、住民と行政のパートナーシップによる地域づくりが求められている。その取り組みの進展が地方分権を促進させ、地方自治の水準を規定する」という。
 また「いずれにしても地域分権の担い手は、任意の個人ではなく、コミュニティ組織、地域住民組織である」という。住民が小学校区ほどの区域で、どのようなまちを構想し福祉や教育のあり方を論じ設計し、行政とともに協同していく営み、その営みから住民による統治のしくみをつくっていく。そのもっとも基礎的な活動は町内会・自治会である。この視点をもつことが時代を拓くうえで鍵と思う。それだけに多くの人に読んでほしい1冊だ。あわせて、神戸市西須磨地区の14年にわたるまちづくりの実践記録『「身近な自治」の仕組みづくり-震災10年を超えて、地縁と知縁をむすぶ-』(西須磨まちづくり懇願会編著、2006年2月)を読まれることをおすすめする。