『協う』2005年4月号 書評1

米田佐代子 編
金いろの自画像 -平塚らいてう ことばの花束-


井上 英之
大阪音楽大学教授
(大月書店、2005年5月、1200円+税)


 本書の「あとがき」で、この本のタイトルについて記している。即ち、「これは平塚らいてうが書いた『元始女性は太陽であった』の一節『女性よ、汝の肖像を描くに常に金色の円天井を撰ぶことを忘れてはならぬ』がヒントです。らいてうは少女のときも、老いてからも自分の意思で『わたしはわたし』を生きた女性でした。そのイメージを『金いろの自画像』と表現したのです」と。
 編者の米田佐代子は、近現代日本女性史の専門家として知られ、大著『平塚らいてう』(吉川弘文館)では、あえて積極的に平塚の消費組合運動と宮澤賢治とを対比していることから、私は注目してきた。
 本書には平塚の著作から抜き出した60の「小文」が8つのテーマ別に配列してある。編者は現在、NPO平塚らいてうの会「らいてうの家をつくる平和・協同プロジェクト」代表であることから、私は単に消費組合でない「協同」に関する貴重な「小文」をどのように撰ばれたのかと期待をしたが、なるほどみごとなものが選ばれている。
 砧きぬたに消費組合の家をたてた時の〈それそうとうの理由〉、クロポトキンに学んだ〈協同自治の新社会〉、消費組合の店・事務所・集会所を持った「我等の家」設立時の〈家庭生活の協同化〉、医療組合運動を支持する〈我らの病院〉、老親介護とは異なる〈老人の共同の家〉、主婦論争時の〈開かれた家庭の窓〉や〈他人の子どもへの愛〉、常に自分自身の成長をめざし後ろを振り向かないという生き方を示した〈古いキモノ〉。これは「『家庭のドアは開けっ放し』  協同自治社会への夢」というテーマにまとめられている。
 この他にも、ジェーン・アダムスのハルハウスに学んだ〈気持のいい自由な休息所〉、「地上の全人類が相愛相助の協同生活を営むことを望」んでいるとした〈わたしは世界民〉、関東大震災での救援活動によってつくられた希望を語る〈相愛共助の心〉、なども選ばれているが、これらは、社会改造と結びついた平塚の協同の精神を示しているのであろう。
 ここに紹介した小文(〈 〉はその見出し項目)は、主婦論争時のもの以外はすべて戦前のものである。生活「協同」組合の「協同」のイメージは、平塚らいてうにあっては「我等の家」時点で多面的なものに結びつけられていることを、米田は描くことに成功している。
 私達は「協同」のイメージと具体化の実績をどこまで達成しているのであろうか。