『協う』2004年12月号 エッセイ
ロマンとソロバンは協同組合の永遠の課題
生活協同組合共立社
理事長 山中 洋
二〇〇〇年九月、 「全国子どもを守る文化会議」 で井上ひさし氏の講演がありました。 そのお話に感銘したメンバーが是非現地にいって自分達の眼で勉強をしようということになり、
イタリア視察団が二〇〇二年十月に組まれたのです。 一九八六年にボローニャにある生協 「コープ・アドリアティカ」 と姉妹協定を結んでいる共立社にも参加をという話があり、
「協同のあるまちづくり」 「いつまでも安心してすみつづけられるまちづくり」 を地域スローガンとしていっしょに活動している庄内医療生協やJA余あま目るめ町農協にも呼びかけ参加することにしました。
私は二つの問題意識を持って参加をしました。
一つは、 ヨーロッパの生協が一部の国を除けば大きく後退している中で、 イタリアの生協が大きく前進しているのは何故か。
二つ目は、 井上ひさし氏が語っているのですが、 国連で認定した今ヨーロッパで一番住みやすい街ボローニャ、 この街づくりにコープ・アドリアティカがどのような貢献、
役割を果たしているのか。
その様な問題意識の中、 今回学んだ大きなことは、 「社会的バランスシート」 「ロマンとソロバン」 という言葉とその思想です。
「社会的バランスシート」 は、 一年間の協同組合の活動を通じてその成果、 課題を組合員に明らかにすると同時に、 社会や地域にどの様な貢献をしたかを具体的な数字をもって公表していくことです。
イタリアにはいろいろな数多くの協同組合が存在しますが、 この様な思想で貫かれるとすれば、 協同組合の社会的評価、 また、 協同の思想が地域の中に循環関係として形成され、
それが生協への結集、 事業への結集へと繋がっているように思われました。
また、 「ロマンとソロバン」 は、 協同組合の永遠の課題と思います。 そしてそのバランスがむずかしいと思うのですが、 ロマンを失った協同組合は生き残れたのだろうかと常に思いつづけています。
最後に今年四月、 この鶴岡で共立社、 庄内医療生協、 高齢者福祉生協、 社会福祉法人山形虹の会の四つの組織 (四者協) が中心になって 「庄内まちづくり事業協同組合
『虹』」 を発足させました。 活動エリアは高齢者率が二九%を超えています。 イタリアの協同組合の思想を大切にし、 庄内まちづくり事業協同組合が高齢化社会に少しでも役立てる様にがんばっていきたいと思います。