『協う』2004年10月号 視角
JAの変革とともに、
JA青年部への新たな期待
田中 照良
1. JA 青年部の組織・活動の概要
JA 青年部は、 昭和20年代前半から、 各地で農業に従事する青年が、 農協運動の先駆者として、 民主的農業政策ならびに理想農村を確立することを目的に組織してきた。
「貧しさからの解放」 を求める全国の農村部で共鳴を得て、 自然発生的に全国各地で組織されるとともに、 県組織の設立、 昭和29年には全国農協青年組織協議会が結成された。
JA 青年部は、 それぞれの地域で、 農業振興、 農業経営・ JA に関する学習活動、 農政活動に中心的に取り組み、 この他、 文化・スポーツ活動、
次世代対策、 消費者との連携等、 幅広い活動に取り組んできた。
就農者の減少などにより昭和60年には16万人を数えたメンバー数は、 現在はその半分の約8万人にまで減少している。 また、 近年では活動のマンネリ化などに悩んでいる。
このような悩み等を持ちつつも地域農業・ JA 運動の担い手たる地位を保っている。
2. JA 青年部への新たな期待
これまで JA グループでは組合員等利用者の高度・多様なニーズを充足し、 地域農業の振興と地域社会の活性化に主体的に対応できる JA を創造するために合併を進めてきた。
このような合併 JA を東北で稲作に従事しながら JA 青年部活動に参加している一青年は 「合併 JA の多くは期待された高度・多様なニーズに応えることはできず、
逆に懸念されていた組合員との距離が拡大するという状況にある(注)」 と合併 JA の問題点を総括したうえで 「しかし、 JA を抜きにして地域農業の振興と地域社会の持続的発展はありえない。
改めて地域に密着した事業・組織運営を展開することへの期待も高まっている。」 と述べている。 だとすれば JA を変革し地域社会等を発展させるため JA
青年部に対して次のことが新たに期待される。
■ JA 改革に向けて JA 運営への積極的参画
青年が合併 JA を否定的に評価する理由として、 JA を取り巻く環境が大きく変化しているにもかかわらず旧来からの事業・組織運営が継続されていることが挙げられる。
JA 青年部では 「JA 運営への参画」 を大きな柱としているが、 参画を促進するのは JA 改革に取り組むためである。 とりわけ早急な改革が求められている
JA の経済事業については、 物流施設の集約・統合、 要員の絞込みと合わせて、 マーケティング戦略の構築がまず問われている。 地域農業の中核的な担い手である青年部代表の、
マーケティング戦略構築に向けての積極的な参画と実践を抜きにして経済事業の改革は進まない。 漫然とした参画でなく旧来のやり方を改革していくための積極的な参画が期待される。
■女性との連携による農村社会の変革
JA 青年部は、 地域農業・ JA 運動の担い手たる地位にあるものの、 政策決定の場への参画は限られているのが実態である。 同様に農家女性も、 農業生産において重要な役割を果たし、
起業を通して地域の活性化に寄与しているにもかかわらず地域の方針決定の場へ参画している割合は極めて低い。
今後は、 実質的に地域農業・地域づくりを通して地域活性化に貢献している青年部・女性部がパートナーシップによって政策決定の場への参画を積極的に求めていく必要がある。
性別役割分担意識の強いことに対し、 若い女性が 「農村・農業を敬遠する」 理由となっており、 そのことが農村の配偶者問題となってあらわれてきている。
JA の変革とともに女性とのパートナーシップによって農村社会の旧習を打破し、 明るい地域づくりへの努力が JA 青年部に期待される。
3. 若干のまとめ
「介護保険制度」 の実施や平成14年 「米政策改革大綱」 など政府・自治体の地域政策が後退するなかで、 協同組合による地域の農林漁業や地域福祉など地域づくりへの役割発揮が期待されている。
JA が魅力ある地域づくりを進めるためにはこれらの中心的担い手である青年部・女性部の声を JA 運営に積極的に生かしていくシステムの確立が問われている。
(注) 『経営実務』 2002年臨時増刊号 「元気の源は自然との知恵くらべ」 より
たなか てるよし
全国農業協同組合中央会 教育部