『協う』2004年10月号 特集

座 談 会
若者からみた生協の購買事業

~ 「安全・安心」 と消費することの楽しさ~

■座談会出席者
■Aさん (大学生, 女性)  ■Bさん (大学生, 女性)  ■Cさん (大学生, 女性)
■Dさん (大学生, 男性)  ■Eさん (大学院生, 男性)  ■Fさん (大学院生, 男性)

■司会
 秋葉 武 (立命館大学・産業社会学部・助教授)

 


組合員の高齢化が進むなかで、 次世代の組合員となる若い世代の意識をつかむことは、 今の生協にとって重要な課題ではないだろうか。 今回の特集では、 生協と関わりのある若者にお集まり頂き、 生協の購買事業についてそれぞれが思う生協への不満や期待を語り合ってもらった。


【司会】
 みなさん、 こんにちは。 今回の 『協う』 の座談会は、 若者の皆さんに焦点を当てて、 若者と生協との関わりを見ていこうという趣旨で企画しました。 例えば、 食品1つ買うにしても、 生協のほかにスーパーやコンビニもあります。 皆さんのライフスタイルのなかで、 とりわけ生協とはどんな形で接点があって、 どういう不満や期待を持っているのかということなどを、 どんどん話して頂ければと思います。
 それでは、 はじめに、 自己紹介として簡単なプロフィールとこれまでの生協との関わり、 また生協と聞いてイメージすること、 思うことなどを聞かせてもらえますでしょうか。
【Aさん】(大学生, 女性)
 初めまして、 私は関西大学に通っています。 大学では、 生協や協同組合について研究していて、 昨夜遅くまで 「共済」 についての卒業論文を書いていたので、 生協といえば 「共済」 です (笑)。 また生協との関わりについては、 兵庫県に住んでおり、 生協のお店がまわりにたくさんあるので時々利用しています。
【Bさん】(大学生, 女性)
 A さんと同じ関西大学から来ました。 滋賀県に住んでいて、 生協のお店はあまり見たことがないので、 共同購入のことしか知りません。 でも、 この前、 神戸に行って、 生協の店舗がすごく多かったので驚きました。 今日はいろいろなことを知りたいのでよろしくお願いします。
【Cさん】(大学生, 女性)
 私は関西学院大学から来ました。 家は兵庫県のそこそこ発展したベッドタウンにあって住みやすい街です。 生協については、 あまりよくわからなくて、 イメージは 「助け合い」 「安全・安心」 のブランドしかありません。 学生なので、 大学生協との関わりはすごくあるのではないかと思いますが、 普段あまり意識はしていません。 よろしくお願いします。
【Dさん】(大学生, 男性)
 龍谷大学から来ました。 今は京都に住んでいますが、 生まれは愛知県で、 小さい頃から生協と関わってきました。 家は僕が小さい頃から共同購入をしていて、 僕自身もバイトがてらに時々生協のバックヤードの掃除などをしたり、 中学校の時は、 共同購入で一括して集めたものを他の家へ持っていく仕事の手伝いもしていました。 大学に入ってからは生協の店舗でアルバイトをしています。
【Eさん】(大学院生, 男性)
 私は京都市でひとり暮らしをしていて、 京都大学の大学院に通っています。 自炊はほとんどすることが無く、 食事は大学生協か定食屋で食べることが多いです。 生協に対するイメージは、 「安全・安心」 ですが、 大学生協とは学食を通じてお世話になっていますが、 地域生協との関わりは少ないです。
【Fさん】(大学院生, 男性)
 E さんと同じ大学院に通い、 大阪に住んでいます。 生協との出会いは、 子どもの頃は母が共同購入をしていて、 僕自身はそれを通じて幼なじみができたという想い出があります。 が、 母は共同購入の場で近所の人の悪口を言いあうのが嫌になって辞めてしまったそうです。 うちの近所では、 共同購入による地域のコミュニティづくりはうまくいかなかったようですね (笑)。 生協のイメージはやはり 「安全・安心」 ですが、 最近は、 生協にはもっと 「生きる」 こと全体を支援する存在になって欲しいと漠然と思っています。 よろしくお願いします。


●生協といえば 「安全・安心」。 でも…

【司会】
 ありがとうございます。 皆さんやはり生協には 「安全・安心」 や 「信頼」 というイメージを抱いているようですね。 でも、 今や一般のスーパーでも 「安全・安心」 は当然のごとく重視していますが、 そういった一般のスーパーと生協とで商品に対するイメージの違いはありますか?
【Aさん】
 やはり、 買い物をしていて、 品揃え1つ見ても、 他のスーパーと比べて 「何でも売ればいい」 というのではなく、 売るものを厳選しているというイメージは強く感じますよね。 消費者・生活者としての私たちを守ってくれているというイメージはあります。
【Eさん】
 確かに、 特にコープ・ブランドの商品については、 強い安心感を抱きますね。 でも、 その他の野菜とか魚とかの商品については、 他とどこが違うのかな、 という印象があります。 さらに、 こういう商品も 「安全・安心」 という面では、 一般のスーパーよりもちゃんとしているのかも知れないけど、 「おいしさ」 という面から見れば、 他の生鮮関連に力を入れたスーパーや高級スーパーの方が上なんじゃないかなという印象があります。
【司会】
 なるほど。 それでは、 そういう 「安全・安心」 というイメージは、 そもそもいつ頃みなさんの心の中で生まれたのでしょうか?
【Dさん】
 僕の場合、 小さい頃から現在まで、 食べてきた食料品の95%が生協のもので、 他のものに触れていないから生協が信頼できるのかも知れません (笑)。 やっぱり、 他のスーパーで買った物は、 外国産の商品も多いということや、 実際不味く感じたりなど、 何か抵抗を感じてしまいます。
【Cさん】
 私の場合は、 小さな頃はあまり生協との接点はなかったのですが、 高校の近くに生協の店舗があったので利用していました。 普通のスーパーにある商品は 「買わせよう」 という感じできらびやかなパッケージが多いけど、 生協のは、 やさしくて柔らかなイメージがしますね。 その反面、 ちょっと地味だなぁという感じも抱いていましたけども。 実際の商品もイチゴが丸ごと入ったアイスバーとか、 一般のメーカーではそういった素材をそのまま活かしたモノがなかったので、 生協のアイスは大好きでした。
【Bさん】
 私は、 大学のゼミで生協の商品づくりについて学んだ時に 「安全・安心」 というイメージを生協に抱きました。 私の家は、 共同購入ではアイスやお菓子、 パンを買うことが多いので、 商品の性質上、 安全や安心というのが明確にわからないですね。
【Fさん】
 僕の 「安全・安心」 も、 A さんと同じく子どもの頃から親や親戚から植え付けられた経験から来るものがあります (笑)。 でも、 E さんが言われたように、 「おいしい」 「楽しい」 と 「安全・安心」 は別かな、 というのは子どもの頃から感じていて、 例えば、 食べ物ではないですが、 子どもの頃に親戚の家で使っていた生協の洗剤の匂いがきつくて、 あまり好きではなかった記憶があります。 また先日、 生協の店舗で梨を試食したんですけど、 どうもあまり美味しくない。 生協には 「安全・安心」 を前提として、 消費したときの美味しさ・心地よさなどももっと追求してもらえればいいなと思います。
【司会】
 それでは次に、 もう少し具体的に商品について話を進めたいと思うのですが、 E さんや F さんの言っていた、 「安全・安心」 と 「おいしい」 の違いという点、 また他にも商品の価格という点から見て生協の商品はどうですか?
【Dさん】
 モノによりますよね。 僕は生協の店舗で、 主に水産部門で働いているのですが、 近くに新しくできたスーパーでは、 同じような種類のお造りでも、 398円で6切れ入っているものが、 うちの生協では4切れしか入ってないのに498円もするんです。 また、 味自体も美味しくないんですね。 僕は主に夜に買うので、 おろし立ての時は美味しいのかも知れませんが…。
【Cさん】
 さっき言った高校生の頃食べていたアイスは本当に美味しかったし、 値段も安かったので、 お買い得感もありました。 でも、 野菜などは、 「安全・安心」 に気をつかうと値段を下げるのは難しいですよね。 私がアルバイトしているスーパーでも、 低農薬ブランドの野菜は高いですし。
【Aさん】(大学生, 女性)
 私はバイトに行く前に、 生協でお弁当をよく買うんです。 生協のお弁当は、 コンビニに比べると 「つくっている」 感じがして、 新鮮で、 値段もそんなに高くないし、 味も季節感があっていいとおもいます。 でも、 食料品となると、 やっぱり、 値段も高いし、 そんなに惹きつけられる魅力も無いので、 そこで買い物しようとは思わないですね。 ただ、 私はひとり暮らしなので、 お肉の少量パックが嬉しくて、 最近は普通のスーパーでも売っていますが、 それだけはよく買いに行きます。


●もっと楽しく買い物ができる
 そして、 安全・安心を実感できる店舗を…

【司会】
 ここまで、 生協の 「商品」 の面について話してきましたが、 それではその商品を置いてある 「店舗」 の雰囲気や売り方についてはどうですか?
【Aさん】
 一般のスーパーでは、 野菜に霧を吹きかけながら販売している店舗もあって、 単にイメージだけかも知れませんが、 とても新鮮そうな感じをアピールしているので商品がとても魅力的に映りますね。 コープの店舗は値段の割に1つひとつの商品に新鮮さが感じられないし、 店舗全体が地味で暗いですよね。
【Dさん】(大学生, 男性)
 売る側としても、 そういう実感はあります。 ただ単に野菜を並べて 「はい、 買ってください、 うちのは安全で信頼できますよ」 と言うだけだから、 新しいお客さんは増えないのだと思うんです。 「買いたい」 と思わせるような売り場をつくらないと。 でも、 生協の店舗の中にも部門によってはやる気のあるところもあって、 いろいろアイデアを出して、 POP をつくったり、 商品を綺麗に並べたりいろんな努力をしています。 また、 「少量パックが欲しい」 とか、 色んな組合員さんの要望にもたくさん応えていたり、 やはりそういう魅力のある部門は実際の売上げにも反映されていると思います。
【Fさん】(大学院生, 男性)
 店舗での売り方って大事ですよね。 生協の店舗は値札にもコメントが付いたりしていますが、 そこに栄養とかアレルギーのことが書いてあると生協らしいですけど、 ネギに 「薬味にどうぞ」 とか、 とりあえず的なことが書いてあるとねぇ…。 せっかくコメントを付けるのだから、 そこで生協らしさをだして欲しいですよね。 また、 僕もみんなと同じ意見で、 同じ安全・安心でも、 他のスーパーの方がアピールするのが断然上手い。 我々の誰もが、 生協は安全・安心って言うイメージは抱いているけど、 訴えかけてくるものがないから、 それをうまく実感できない。 もっと言うと、 生協は安全・安心を売り物にするだけじゃなくて、 例えば遺伝子組み換え食品についても、 なぜそれが良くないのかということを消費者に教えることから始めて欲しいと思います。
【司会】
 なるほど、 店舗の魅力づくりって大切ですよね、 それでは引き続きお聞きしますが、 あなたにとって魅力があるお店、 無いお店とはどんな店舗ですか?
【Eさん】(大学院生, 男性)
 生協の店舗の商品を見ていて感じるのは、 例えば肉とかが必要になって、 それを生協に行って買うことはあっても、 店頭で肉や魚を見て、 衝動的に 「これ、 食べてみたい」 と思えるような商品はないんですよね。 品数の少なさ、 店舗が狭いということが問題のように感じます。 あと、 駐車場が少ないとか。
【Bさん】(大学生, 女性)
 以前ひとり暮らしをしていたときに、 近くにとても生鮮に力を入れた食品スーパーがあったんです。 野菜や魚も 「新鮮さ」 が売りみたいで、 店員さんのサービスもしっかりしていて、 商品1つひとつの値段は高かったのですが、 お客さんがたくさん来ている。 また、 その店は 「市場」 みたいなにぎやかな雰囲気を出していて、 お店にいてすごく楽しいし、 商品にも自信を持っている感じで、 「買っても大丈夫」 という感じがします。
【Fさん】
 昨年、 いわて生協の店舗に行く機会があったのですが、 すごく広くて、 魚や野菜も新鮮なものがたくさん並んでるんです。 雰囲気もすごくいいし。 先ほどの話だと、 みんな生協の生鮮品には不満を持っていて、 それ以外の食品には概ね好意的だから、 こういう店舗が近くにあったら、 他のスーパーよりもかなり魅力的に映るでしょうね。
【Dさん】
 生協の店舗って、 客の立場で行ってみると、 入り口は暗いし、 中も暗いし、 人も暗い (笑)。 びっくりしました。 また、 生鮮品については、 実際に生協店舗で働いている経験から言うと、 発注台帳をみても、 お造りの発注がかなり少ないんですよね。 でも、 その背景には丸もののお魚を仕入れても、 パートさんがおろして並べる能力とか時間がないという事情もあるのです。 また、 お給料もそういった能力ではなくて、 何年働いたかで決まるので能力のある人が辞めてしまうこともあります。 そして能力のある人がやめてしまうと、 また一から育てないといけないし、 当然商品や店舗としての魅力もなくなってしまうので、 いいこと無しですよね。
【Cさん】(大学生, 女性)
 私がバイトしているスーパーでは試験があって、 それに合格するとお給料も上がって、 社員でも頭が上がらないような責任のある仕事を任されたりするんです。 そういったことも、 店舗の魅力を生み出す1つの要因なんじゃないでしょうか。 他のスーパーのいいところを取り入れれば、 生協にはどこよりも強い 「安全・安心」 のイメージがあるから、 もっと変われるんじゃないかと思います。


●意外と面倒?共同購入

【司会】
 ここまで、 商品、 そして店舗について話し合ってきました。 それでは最後に、 共同購入や個別配達について考えてみたいと思います。 皆さんの今のライフスタイルからみて、 このような購買方法はどのように感じますか?
【Bさん】
 カタログはもう少し、 若者向けの工夫が要るのではないかと思います。 我が家では主に親が見ていて、 あまり惹かれるものがないので、 私は見ないですね。 いいものがあれば、 ちょっと待っても欲しいと思うけど、 お菓子などはコンビニやスーパーで買ってすぐに食べたいですし…。
【Aさん】
  (座談会の場で実際にカタログを読みながら) 確かに、 カタログは全部同じようなレイアウトだし、 メリハリが無くて、 何がポイントなのかよく解らないですね。 正直、 もう飽きてきました (笑)。 あと、 その時々のお買得商品を使ったおすすめのレシピとかをもっと提案してくれるといいですよね。
【Fさん】
 おまけに、 なんだか 「安い!」 的な普通のスーパーのチラシの寄せ集めみたいで、 あまり 「安全・安心」 という気がしないですよね。 せっかくのこだわりの商品なんだから、 センスのあるデザインで、 もう少し商品の 「うんちく」 とかのせてくれると楽しんで読めるんだけど…。
【司会】
 共同購入・個配という配達方法自体はどうですか?
【Aさん】
 やはり、 配達なら1週間に1回ではなくて、 もっと頻繁に届けて欲しいですよね。 1週間分の予定や献立を考えてまとめて注文するのは大変です。 あと、 共同購入については、 ご近所さんへ行って、 みんなで分け分けしながら 「今日もいいお天気ですね」 とかいう5~10分のために、 わざわざ化粧して着替えないと行けないなんて… (笑)。 「あの人、 今日も化粧してないわ」 とか 「若いのに気をつかってないのね」 なんて言われたら、 それこそ耐えられません (笑)。 その日一日用事がなかったら、 絶対にすっぴんで家にいたいし、 同じ準備するのなら、 外へ買い物に行って、 ひとりで 「今日は何にしようかな」 なんて言いながら買う方が楽ですね。 知ってる人に会わなくていいし…。
【Dさん】
 僕は以前に商品を宅配するアルバイトもしていたと始めに言いましたけど、 その時も 「他の人の家に上がり込んで商品を持って帰るのが面倒」 と言う声を聞きましたね。 そして、 僕たちに家まで配達してもらえるように頼むのですが、 それすらも 「面倒くさい」 という人もいたんです。
【Fさん】
 それは時間的に拘束されるのがイヤなのかも知れないですね。 実際、 宅配便とかを時間指定で届けてもらうように頼んでいても、 その日はそれが届くまで何だか落ち着かないし…。 あと、 時間をかけてカタログから商品を選ぶより、 店舗で商品をカゴに入れていく方が楽なような気がしますしね。

【司会】
 今日は、 生協の購買事業というだけで、 短い時間でしたがこれだけ多くの課題が見えてきました。 それでは、 最後に皆さんから、 今日の座談会でのやりとりを踏まえて、 生協に対する要望や希望を一言ずつ頂けますでしょうか。
【Aさん】
 今の生協の店舗には特徴が感じられないといった皆さんの意見が強く印象に残っています。 安全・安心を売り物にするスーパーが多い中で、 生協が生き残るためには、 組合員・消費者に、 利益追求のためだけの経営ではないということ、 商品の中にこだわりをみせることでアピールしていくことが必要ではないかなと思います。 これからの生協には、 ほかの民間企業にはできない、 こだわりを持った商品開発、 販売事業を展開し、 そして何よりいつまでも 「一番身近な存在」 でいてほしいですね。
【Dさん】(大学生, 男性)
 今回の皆さんの意見は実際に生協で働くものの一人として、 「なるほど」 と苦笑させられた内容でした。 「生協のブランド力と生協らしいことをやっているだけで固定の組合員さんがついてくるだろう」 という考えは甘いと思いました。 生協の良いところをわかってもらう為の努力 (たとえばビラ配りやお試し入会など) をもっと行いながら、 また買い物に行きたいと思えるような楽しみがあればと思いました。
【Bさん】(大学生, 女性)
 私は、 滋賀に住んでいるので、 やはり共同購入のことが気になります。 カタログにはもう少し詳しい説明が欲しいですし、 産地や栄養、 アレルギーに関することだけでなく、 それをどういう風に料理にしたら美味しいとか、 若い主婦層などに役立ちそうな情報をもっと載せて欲しいと思います。 またコープしがのホームページには献立の提案や節約術、 また環境に関することなどが沢山載っていて勉強になるのですが、 こういうページの存在を知らない人も多いと思うので、 もっとアピールしていく必要があると感じました。
【Cさん】(大学生, 女性)
 私は、 次の2つのことが印象に残りました。 1つ目は、 生協は組合員や一般消費者に、 商品の良さを伝え切れていないんじゃないかと言うことです。 生協は、 安全・安心というのは何となくわかるんですけど、 もっと共同購入のカタログを工夫したり、 店舗についてはもっと消費者の視点に立った活き活きした売り場にする必要があると感じました。 そして2つ目に、 これまで生協が成長してきた時代のニーズとは変わっていて、 食生活、 また近隣の地域との関わり方なども含めた多様なライフスタイルのニーズにあわせた取り組みが必要とされるのでは、 と感じました。 生協には、 他には負けない安全・安心のブランド力、 そして組合員からの強い信頼もあると思います。 そのことを大切にして、 かつ競合企業に遅れをとっている部分を改善できれば、 今まで以上に組合員・消費者からの熱い支持を得られると私は期待しています。

【司会】
 若い皆さんの話を聞いていると 「生協の事業を根本的に変えていかないといけない」 という印象を強く持ちました。 でも、 生協も若い皆さんにとって充分に魅力のある存在であると言うこともわかりました。 今日は本当にありがとうございました。
(まとめ・玉置 了)


座談会を振り返って  秋葉 武 

 今回の座談会は実に面白かったし、 彼らから多くのことを教えてもらった。
 入職歴の長い生協職員と話していても、 残念ながら、 今回の出席者のような率直な視点を得られる機会は多くない。 むしろ、 彼らは事業が右肩上がりだった1980年代を懐かしんで語りつつ、 生協事業が停滞した原因を ■民間スーパーとの競争が激化した ■若い世代の食生活が乱れてきた といったように、 外部に 「責任転嫁」 する傾向が強い。
 今回の座談会からみえてきたのは■■以前に、 「売り手として当たり前のことができていない」 という素朴な彼らの指摘であった。 そして、 この 「当たり前のこと」 を正面切って捉えてこなかった、 生協幹部や (私も含めた) 研究者の責任は重いといわねばならない。
 出席者から指摘があったように、 生協の店舗は新しい顧客を開拓するという視点が希薄で、 店舗としての水準は世間の平均以下といえる。 その店舗事業の損益分岐点を下げるために、 生協は正職員をパート職員に置き換えることがなされている。 しかし、 その結果、 販売の質が落ちていることが少なくない。 パート職員に置き換えることが悪い、 といっているのではない。 一部の民間小売業者と違い、 生協はパート職員の努力が報われるような、 評価の仕組みを確立してこなかったのだ。 職員と組合員の狭間で、 従来見過ごされがちだった 「パート職員」 の存在は、 これからの生協の店舗事業を展望する上で、 重要な鍵となりそうだ。
 同時に、 生協は赤字店舗をどう扱っていこうとしているのだろうか。 結論からいえば、 筆者は単位生協が戦略として、 「撤退のマネジメント論」 を確立し、 店舗を閉鎖していく以外に現実的な選択肢はない、 と考える。 それほど、 一部の民間スーパーとの質の差は開いている。 先日、 首都圏を中心に展開し、 中高級スーパー 「O」 (株式公開している) を視察した。 店舗規模は生協と同サイズだが、 店舗の雰囲気、 店員の質…、 あらゆる点で生協はとうてい太刀打ちできないことを痛感した。
 生協関係者はこうした現実をまず直視した上で、 新しい取り組みを始めるしかない…。
 今回に限らず、 若い世代の視点から、 生協の抱える様々なテーマの座談会を企画していきたい。 読者の皆さんで 「こういうテーマを扱って欲しい」 というのがあれば、 ぜひご一報下さい。