『協う』2004年6月号 書評1

 

路面電車で町が変わる
中本 智子
『協う』 編集委員(京都市在住)



『LRT (新型路面電車) が京都を救う-都大路まちづくり大作戦-』
土居靖範・近藤宏一・榎田基明共著
つむぎ出版 2004年1月 750円


 この書では 「路面電車で町が変わる!」 目からうろこのすごいシステムが京都という街の具体的なプランとして提案されている。
 私の知っている路面電車…と言えば、 中、 高の六年間毎日学校に通った南海上町線という路面電車。 都会の中を行くこの電車は、 かなり交通量の多い道路の間を車を縫うようにギシギシと進んでいた。 架線に乗り上げた車と接触事故…ということもたまにあった。 もう1つは京都の市電。 小さい時から京都へ来ると足は必ず市電だった。 どこまで乗っても一乗り20円だったと思う。 大阪から比べると交通量は少なく、 なんとなくのんびりとしていたようだったが、 ただ、 どちらの場合も電車を降りて道路を渡る時が恐怖。 道の真ん中に作られた狭い石段のような停留所で降ろされた乗客は、 車を横目にみて大急ぎで道を横断しなくてはならなかったからだ。
 ところがここに書かれている LRT 〔新型路面電車〕 はちょっと違う。 蓄電池を使用し、 車体のステップは段差のないバリアフリー仕様。 これまでのガタゴトという電車と違い乗り心地もデザインもよいらしい。 そして繁華街 (京都では四条通と河原町通) は 「トラジットモール」 と呼ばれる車をシャットアウトした歩行者天国となるので、 車を避けて道路を渡る危険もなくなる、 と言うわけ。 停留所間を短かくとる LRT は買い物客の足にもなり、 まさに商店街の 「横に動くエレベーター」 といえる。 そのほか、 路面電車と 「コミュニティーバス」 を乗り継ぎ利用する町歩きの方法や、 観光都市京都としての目玉とも言うべき 「パーク・アンド・ライド」 (郊外の駐車場に車を停めて、 公共交通を利用して街中に入ってきてもらう) など、 路面電車を核とした車をなくす革命とも言うべき提案がされている。
 こうなれば京都の街は格段に住みやすくなるに違いない。 でも現実に狭い路地裏にまで車がひしめきあって、 町が今にも窒息しそうになっているのは、 私たちが便利さと引き換えに生活の中から 「歩く」 ことを排除してきたツケなのだということにも改めて気付かされた。 LRT 革命はすごいけれど、 私たち自身が今の車中心生活を 「歩く」 生活にシフトチェンジできるかどうかが大きな問題であり、 革命を成功させるカギともいえる。 …ということで、 明日からまず歩くことから始めましょう。 ただし車に気を付けて!いまはまだ京都は危険地帯。 左右確認。 お気をつけて…。