『協う』2004年2月号 書評1

 

「消費する住宅から創造する住まいづくりへ」
岩坪 恵未
関西大学商学部
杉本ゼミ4年次生


『コーポラティブハウス
-21世紀型の住まいづくり-』
高田昇著
学芸出版社 2003年3月 2200円+税

私たちは住宅をめぐって今までにない多くの問題を抱えている。 たとえばシックハウスや危険住宅等の安全性に関する問題や、 家族の変化、 ライフスタイルの多様化、 環境問題への対応といった問題は、 これまでのような企業から生活者への一方的な住宅供給では解決されずに残っている。 そこで著者は、 時代の変化に対応した住まい、 様々な問題を解決する突破口として 「コーポラティブハウス」 という住まいづくりを提案している。
 著者によると、 コーポラティブハウスとは 「出来合いのものを買う既製品の集合住宅ではなく、 『家を欲しい人が集まり、 協同して建てる集合住宅』」 であり、 そこに暮らそうという入居者から発信して、 住まいをつくっていくという方式である。 住まいづくりに住まい手が参加するというこの大きな特徴はコーポラティブハウスの可能性と深く関係しているのではないだろうか。
 では、 コーポラティブハウスに秘められた可能性とは一体何なのだろうか。
 著者は可能性の一つとして、 まちづくりの新しい展開を挙げている。 まちづくりの中にコーポラティブハウスを取り入れることで住環境の整備や長屋の共同建替え、 戸建コーポラティブハウス等の新しい展開が考えられるというのである。 本書ではその実例がいくつも紹介されており、 確かにコーポラティブハウスはまちづくりに有効だと思った。
 しかし、 現在のコーポラティブハウスに対する一般の認知度を考えると、 もっと単純にコーポラティブハウスの可能性についても書いて欲しかった。 たとえば、 国民の約半数が抱いている住宅に対する不満をコーポラティブ方式で解消できるのではないかということである。 高齢者等への配慮や収納スペースなど、 住宅の要素についての不満は、 既製品の住宅に住むことから生じることも多いだろうから、 住まい手が住まいづくりに参加するコーポラティブ方式を用いれば解消できることもあるだろう。 住環境も、 子供の遊び場やまちの景観など、 一人ではつくり出せないことがコーポラティブ方式なら実現できるのではないだろうか。
 本書を読んで、 著者の言う可能性だけでなく、 私たちの身近にある問題や住宅に関する不満がコーポラティブ方式によってどのように改善されるのかを、 一人でも多くの人に考えてもらえればと思う。