『協う』2003年10月号 特集


 第11回総会記念シンポジウム:第2分科会

子育て不安の背景と協同の役割


去る2003年6月21日・22日、 当研究所第11回総会・記念シンポジウムが行われた。 前号 (78号) の特集記事では、 『私たちのくらしとくらし方の 「今」 を検証する』 と題した初日のシンポジウムの様子を取り上げ、 そこでは 「不安」 を見つめ、 生き方や社会のあり方を問い直す必要があるということ、 そしてそのような中での 「協同」 のあり方や可能性について議論された。
 今日における社会構造のめまぐるしい変化は、 我々の社会の将来を担う子どもたちを育てることにさえも不安をもたらしており、 今まさに、 我々は子育ての不安・実態をしっかりと見つめ、 そのような中から子育て支援や協同のあり方を考えてゆかねばならない。
 そこで、 本特集では、 先の総会・記念シンポジウムの2日目に 『子育て不安の背景と協同の役割』 と題して行われた分科会でやりとりされた内容をお伝えする。


1:はじめに
植田 章氏
当研究所研究委員・佛教大学教授
  「子育て不安の背景と協同の役割」 と題してこの分科会を始めるにあたり、 まず私から、 この分科会のねらい、 共有しておくべき点についてお話ししたいと思います。
 まず、 子育て支援に関する 「政策」 の視点からお話すると、 1990年代に入り、 子育て支援と言う用語が政策的に取り上げられるようになりました。 そして今日に至るまで 「エンゼルプラン」 「少子化対策プラスワン」 「次世代育成支援対策推進法」 「児童福祉法の改正」 など、 次々と子育て支援政策が打ち出されています。
 その背景には、 出生率の低下問題、 女性労働力の確保、 男女共同参画社会の形成という課題のもと、 子育てと仕事の両立や男性の働き方の見直し、 地域における子育て支援サービスの充実が求められているということがあります。
 また、 実際の子育てに目を向けると、 色々な調査を見ても、 ほとんどの親は子育てに喜びと楽しみを感じる一方で、 同時に半数の親たちは何らかの悩みや不安を抱えています。 また、 育児に関して不安を持っていても、 相談する相手が身近にいないという問題もあり、 子育てについて情報を確認し、 共有し合える場の存在が今求められています。
 こうして子育て支援が求められている今日、 保育所や生協、 社会福祉協議会などにおいて、 専門職や当事者達の共同による子育て支援が活発になりつつあります。
 そこで、 この分科会では、 はじめに京都生協が今回実施したアンケート調査から子育ての実態をとらえた上で、 次に、 保育所や生協において実際に子育て支援活動に携わっておられる方から、 それぞれご報告いただきます。 そして、 そこから子育て支援の必要性とそこでの地域ネットワークのあり方、 協同の役割について学んで行きたいと思います。


2:アンケートから見る子育ての現状
竹内 絹代氏
京都生活協同組合 組合員活動企画担当
■調査の背景~生協と子育て支援
 京都生協では、 今年 (2003年) 子育てに関する調査を実施しました。 そこで、 私からは、 中間報告としてですが、 アンケート調査の結果について報告したいと思います。
 その前に、 アンケートを実施するに至った契機を、 京都生協におけるこれまでの子育て支援との関わりを交えてお話したいと思います。 京都生協では1986年に 「くらしの助け合いの会」 がつくられ、 当初は活動の80%が高齢世代の家事や通院の援助活動でした。 しかし、 近年、 産前産後や育児援助の割合が増加し、 援助活動の半数が若い世代に対して行われるようになっています。 また電話相談では80%が若い方、 とくに子育て世代の相談に変わってきています。
 また、 他の組合員活動を見てもアクティブなメンバーはそのほとんどが女性で構成されていますが、 彼女たちが様々な活動に参加していくなかでは、 自分も子育てをしながら活動をするということになります。 そこで、 会議に出席する際の託児制度や、 商品学習や産地訪問に子どもも参加できるようにするといった取り組みを行ってきました。 他にも、 平和活動など様々な活動に子どもが参加できる形で取り組んできており、 職員サイドでは、 こうしたことから生協はこれまで子育て支援を行ってきていると考えていました。
 しかし、 近年子育て支援という言葉が注目される中で、 地域の総代会議などで組合員さんから 「生協は子育て支援をどう考えているのか」 「具体的にどうしようとしているのか」 という意見が多く出るようになり、 私たち職員は困惑してしまったわけです。
 そこで、 子育ての当事者は、 子育てに対してどんな願いや必要性を感じているのか、 当事者の声を聞こうということで、 私たちは植田先生のご協力を得て、 2486名の子育ての当事者にアンケートをお願いし、 802名からの回答を頂きました。 ここからはその中間報告をさせていただきたいと思います。
■調査の分析
 それでは、 まず 「少子化」 ということについて調査結果をみてみましょう。 京都府は全国で2番目に子どもが少ない地域なのですが、 京都府を北部・市内・南部と分けてみると、 京都市内では、 一人っ子の家庭が64%と高い割合を占めています。 一方で、 45歳以降では子どもの平均的な人数は2人であり、 経済状況や生活指数には大きな格差は無いため、 昨今の女性の就業率や住宅事情が大きく影響しているのではと考えています。
 次に、 生活習慣の乱れが及ぼす影響が指摘されている中で、 私たちの調査結果では、 子どもの生活習慣は、 おしなべて健全という結果がでています。 また、 祖父母との同居世帯の方が早寝早起きができているようです。 テレビやゲームの時間は、 平均2~3時間と少し多いと感じましたが、 親としては、 家の中で子どもの存在を確認しながら安心して手が放せるために、 こういうものに依拠してしまっているのではと考えています。
 3つめに、 子どもの友だち関係について聞きました。 調査では年齢が高くなるにつれて友だちが少なくなっていく傾向があり、 習い事のために遊ぶ友だちが減っているのだと考えられます。 また、 京都市内では、 車が多いとか、 高層マンション住まいのために外に出せないという意見もあります。 自由記載欄には公園設備に対して自由で安全で、 安心して遊ばせられる公園を求める声が多く見られています。
 4つめは、 回答者の子育てに対する意識についてです。 約9割の方が 「子育てが楽しい」 と述べる一方で、 同数が 「育児に自信がない」 と述べており、 子育てを何度も経験している層でも自信がないと回答しています。 また、 一日が充実して、 はつらつとしているかと聞いたところ、 8割近くの方が、 「いつも充実している」 とし、 就業との関係で見ると、 フルタイム労働よりもパート・内職をしている人の方がはつらつと生活しており、 仕事・子育て・家事という3つの仕事をうまくやりこなすことができるため充実感を感じているのかなと思いました。
 5つめは、 子育て支援活動の認知や必要性についてです。 子育て支援活動については行政の広報で知られることが多いようで、 実際に参加したことがある方も、 回答者の中では36%おられました。 また、 子育て支援の場では、 親自身のリフレッシュや、 交流ではなく、 「子どもがのびのび遊べる」 「子どもと一緒に楽しめる」 という意見が多く、 つまり子育て支援=親の精神的充足とは言えないということがわかりました。
 また、 子育ての相談に対しては、 自分の親や夫婦ではなく、 「身近な友だち」 に相談をする方が多く、 身近さや共感を求めたい傾向にあることがうかがえます。
■目立った自由回答欄への記入の多さ
         ~つながりを求める子育て
 このアンケートを回収してもっとも印象的だったのは、 「自由記入欄への記入の多さ」 でした。 回収した調査票には長文で、 それぞれの立場で様々な意見が書かれており、 そこからは子育てに関する共感を得たい、 言いたい、 わかって欲しいという回答者の心情がうかがえます。 その内容を大まかに見ると以下の4点に分けることができます。 まず (1) 国や自治体の制度、 仕組みに対する要望であり、 「気軽でない」 「対応が不十分」 と言った意見がありました。 つぎに、 先にも述べたように (2) 子どもが安全に安心して遊べる場所の要望がありました。 また (3) 地域との繋がりの視点、 これは生協の組合員ならではの期待とも言えますが、 「ふれあい」 「支え合い」 ということはもちろん、 身近に話し合える存在、 それも地域の小さい単位で話や相談できるところが欲しいという意見がありました。 そして (4) 家庭内でも悩みがあり、 夫が子育てに協力しないので協力すべき、 夫も家庭で働く社会にという、 男女協同参画の問題とリンクするような社会的背景を持った悩みが多く書かれていました。
 以上で、 私の報告は終わりますが、 最後に調査から見たキーワードとしては 「身近」 「地域」 「触れ合い」 があげられると思います。 今後このキーワードをもとに、 生協ができることをみんなで考えていけたらと思います。


3:子育て支援が生み出す地域の絆
有信 裕子氏
吹田市立山三保育園 保育士
■吹田市における子育て支援と保育園
 私は吹田市で保育士をしています。 他の都市では、 市内に設けられた数ヶ所の比較的大きな子育て支援センターで活動が行われるケースが多いのですが、 吹田市では、 公立の保育園の一園一園が地域の子育て支援センターとなっています。 子育て支援のために、 施設面では何も改善されていませんが、 在園の子供たちと、 地域の子供たちと一緒に子育て支援を進めています。
 さて、 1990年代に入って政府は子育て支援を強調するようになりましたが、 吹田市では、 私が就職した1978年、 ちょうどその頃から子育て支援に取り組んできました。 当時、 保育士が行った調査の中で、 保育園は、 両親が忙しいという 「かわいそうな子どもたち」 が行くところ、 自分たちの生活とは関係ないところという意識が強くありました。 そこで私たちは税金で支えられている公立の保育園として、 地域の中にどう根づいていくかということを追求し始めたのです。 しかし、 予算や子ども達に何かあったときの責任などの問題から実現できないこともたくさんありました。 そのような中で、 園児と近所の子ども達と公園で一緒に絵本を読むなど、 できることから私たちの地域支援は始まったのです。
 1984年には、 大阪府内の自治体職員による 「0歳児の実態調査」 が行われ、 その中で母親たちは学習する場や頼るところもない孤独な子育てをしていることが明らかになり、 調査活動を通じて、 子育てをしながらすごく悩んでいる地域の人たちがいることを肌で感じたのです。
 そして、 私たちは、 自分たちが預かっている子どもだけを見ていていいのだろうか、 公立保育園の保育者として、 地域の子供たちにも責任を持たなければならないと、 より積極的に地域支援に取り組むようになりました。 ちょうどその頃、 市の保健センターの職員から、 1歳半検診後のフォロー事業を一緒にやらないかと言う話があり、 保育園でも、 保育センターの事業化を進めているところでしたので、 保育園での育児教室を始めました。 この時点では試行的なものだったのですが、 1987年より、 吹田市育児教室として市内公立保育園全園で行われています (2000年には、 0歳児育児教室も開始)。 ここでは、 来てもらって教える、 こちらばかりが提供をするというのではなく、 お父さん・お母さんこそが子育ての主人公だというスタンスで教室を開いています。 また、 保育園が無い地域には、 スタッフが出張して、 幼稚園や公民館を借りて、 育児教室は市内どこでも受けられるようになっています。
■地域に根ざした保育園を目指して
 さて次に、 私の所属している山三保育園での子育て支援の取り組みをここで紹介したいと思います。
 まず、 私たちの保育園では一年を通じて季節ごとに行事を行っており、 地域の人にも気軽に参加してもらい、 保育園の子ども達と一緒に遊んでいます。 また、 七夕や運動会・クリスマス会などは、 最近はその企画運営をお母さん達にまかせるようにもなりました。 他にも、 育児教室、 親子運動会など、 お母さん達が積極的に参加してもらいながら、 お母さん達がお客さんではなく主人公として参加できる子育て支援活動になってきているかなと思っています。 また、 先にふれた育児教室でも、 0歳児育児教室では、 初めてお母さんになった方に保育園に来ていただいて、 どういう遊びをしたらいいか、 離乳食の試食などを行っています。 こうした地域開放事業や育児教室は、 保育士、 栄養士、 看護師とそれぞれの専門職が力を合わせて運営しており、 私たちは、 公立保育園が地域の財産になって欲しいと思っています。
 このような育児教室が終わると、 お母さん達は、 せっかくとお友達になれたのにとすごく残念がられるので、 サークルをつくることになりました。 山三保育園では14のサークルが活動しています。
 こうした保育園を通じた活動によって、 地域の子どもを、 地域で見守ることにより、 自分の子どもを知ってくれている大人が地域の中にたくさんできるようになりました。 また保育園で2002年度に関わった方は7000人にものぼっています。 最近では、 自治会との連絡もずいぶんと出来てきています。 地域に根差すことを目指してきた20年間でしたが、 やっとここに来てようやく少し根が張れてきたかなと感じています。
 私は、 保育園だからこそできる子育て支援があると思っています。 初めてお父さんやお母さんになったとき、 当然のことですが、 子育てを理論的に分かっている方は非常に少ないのです。 そのようなときに専門的にアドバイスできる保育園は、 もっと色々なことが出来ると思っています。 親自身が失敗して、 色々な子育ての形を作り上げ成長していく、 お手本と言う子育てはありません。 しかし、 子育ての実践現場から子育てに大事なことの発信はこれからも続けていきたいと思っています。
 私たちは、 子ども達が地域の宝と言えるような社会をぜひ作りたいと思っています。 そこでは、 子育てセンターは身近なところにあるべきだと思います。 もちろん、 保育園でなければいけないと言うことではなく、 生協さんであれ、 子育てサークルであれ、 身近にそういう存在がある。 そして困ったときに、 「大丈夫だよ」 と声をかけ、 できることならしてあげると言える人間関係を地域の中でどうつくっていくのか、 ということがこれからの大きな課題だと思います。 そういう、 まちづくりの一環を公立の保育園としてこれからも果たしていきたいと思っています。


親子が共に学び・共に喜びあう子育て
生田 理恵氏
名古屋勤労市民生活協同組合 組合員
にこにこクラブ代表
 私たちは、 名古屋勤労市民生協の施設をお借りして子育てサークルを運営しています。 私たちの活動している店舗である 「コープ一いっ社しゃ」 がある地区は、 マンションが多く建ち並び、 子育て中のお母さんも多く住んでいます。 子育ての環境としては、 学区内には公園はもちろん、 子育てサークルや習い事の場なども多く、 また保育園の開放や児童館、 図書館などの公的施設が利用できます。
 私たち 「にこにこクラブ」 のメンバーは、 子どもを出産した産院主催のエアロビクス教室で知り合った10名が教室修了後に、 生後5、 6ヶ月の子どもをもつ親たちを中心として2001年6月に活動を始めました。 当初は個人の自宅や飲食店に集まり、 場所の確保には苦労していました。 そこで、 メンバーの一人のお姑さんが生協の理事をされていたことをきっかけに、 コープ一社の2階をお借りして、 そこで活動をすることになったのです。 当時はほとんどのメンバーが非組合員で、 それを機に組合員になりました。
 私たちの活動は、 お菓子作りが中心で、 子どもに添加物が少ない生協商品を使ったおやつを食べさせたい、 母親の愛情を伝えたい、 また母親同士会話をしながら、 ホッとお茶をする時間があるといいなと思いから活動を行っています。 活動は月一回で、 事前に代表者がお菓子の試作などの準備をしています。 また、 その試作時の写真でポスターを作り、 コープ一社の掲示板に貼ってもらって新たな参加者を募っています。 参加費は500円で、 当日は参加者をお菓子づくりと子どもを見るグループに分け、 途中で役割を交代しています。 お菓子づくりの後は、 おしゃべりを通じて母親同士はリラックスすることができ、 また子育ての情報交換もしています。 子ども達にとっても、 仲良くなったりケンカをしたり、 社会性を学ぶ場になっているのではないかと思います。 他にも、 めいきん生協では組合員が5人以上集まれば、 生協の商品を買うことが前提で月1回、 1人300円ずつ支給してもらうことができ、 にこにこクラブが終わった後、 みんなで利用して試食するということもしており、 生協に行く回数が増えたという声も聞いています。
 子どもが2歳を過ぎてからは、 お菓子づくりだけでなく、 おもちゃづくりやアンパンマン体操を取り入れており、 子ども達はみんなで何かをする楽しさを体験することができ、 たくさんの笑いがあふれる空間になっています。 また、 その場だけでなく家に帰っても、 お菓子を作ったり、 手作りおもちゃで遊んだりと、 本当に親子が楽しめる活動になってきたのかなと感じています。 他にも、 クリスマス会やお弁当を持って公園に行ったり、 生協のデイサービスヘの訪問などもしています。 今後、 英語の先生を招いて、 英語で遊ぼうという企画や、 保健師さんを招いて3歳前後の子どもについてお話を聞いたり、 主人達も交えてバーベキューをしたり、 夏になったらプールに行こうなど、 仲間がいるからこその楽しみがどんどん膨らんでいます。
 はじめに話したように、 私たちの住んでいる名東区は、 友達づくりには苦労しない環境なのですが、 自分からその場に行かず、 一人で子育てに苦労している方も多いのではないかと思います。 私自身も、 子どもとの接し方に戸惑い大変悩みました。 けれども、 にこにこクラブに参加していて、 他のお母さんの子どもに対する接し方から学んだり、 困ったときには仲間が親身になって相談や助言をしてくれました。 身近に子どもの成長を一緒に楽しんでいける仲間がいると言うことがとても良かったと思っています。 今後も、 子どもとともに親である自分自身も成長できる場を続けていきたいと考えています。

春日井 久美子氏
名古屋勤労市民生活協同組合 組合員
にこにこクラブ
 私も、 生田さんと同じく、 初めて子供を持ったときは、 色々失敗ばかりしていました。 にこにこクラブでの活動を通じて、 お母さん同士で相談してそれを乗り越えることができ、 私自身も成長することができ、 子供も、 回を重ねるごとに楽しく遊べるようになり、 親子共々にこにこクラブをやっていて良かったと感じています。
 最近は、 お菓子作りだけでなく、 簡単なおもちゃ作りにも取り組んでいます。 例えば、 以前ミニーちゃんのぱくぱく人形を作ったのですが、 にこにこクラブの活動あとも、 家に帰ってから食事時に 「今日つくったミニーちゃんと一緒に食べるよー」 というと、 子どもが嫌いだったものも良く食べるようになったとか、 おちつきのない子どもが、 座って食べるようになったとか、 ミニーちゃんがとても大活躍していて、 私も嬉しく思いました。 他にも、 デイ・サービス・センターでペットボトルのピンと紙のボールをつくってお年寄りとボーリングをしたりしています。
 親である私自身も、 親同士のおしゃべりや、 お菓子をつくること、 またそれを教えることがいいストレス発散の機会になっています。 これからも、 にこにこクラブのようなサークルが増えていったらいいなと思いますし、 子どもが大きくなってからも生協を通じて他のお母さんたちの手助けができるといいなと思っています。


文責:玉置 了 (京都大学大学院 経済学研究科
博士後期課程)



分科会をふり返って
植田 章 佛教大学 教授  
 公立保育所における子育て支援の取り組みは、 保育所の育児教室、 園庭開放事業等の諸行事で知り合った親たちが中心になって、 自主的な育児サークルを誕生させています。 ここでは、 親と子が主人公になる運営の仕方を大切にしながら、 家に帰ってからも、 親と子が子育て困難に前向きに向かい合えるような援助を提供しています。 また、 地域の関係機関とも連携を図りながら親たちをバックアップしていくネットワークづくりを進めています。 こうした取り組みを通して、 保育所が地域の子育て支援の中心として、 地域の財産として、 なくてはならない存在であることを市民の中に定着させてきています。
 名古屋の組合員さんは、 子どもを出産した産院で主催されていたエアロビクス教室で知り合った仲間たちが、 「食の安全と子育て」 をテーマに 「産院」 から 「生協」 にステージを移して、 身近な暮らしの場で 「子育てクラブ」 を作ってきた教訓について報告されました。 ひとりひとりの組合員の思いやねがいを大切にした 「子育てクラブ」 の運営は、 組合員の力を引き出し交流を深める中で、 子育ては、 親の一方的な思いで進めるのではなく、 子どもの成長を共に喜びあっていくことが大切なことに参加者は気づかされます。 いずれの報告も、 子育ての当事者は親であり、 発達の主体は子どもたちであること。 子どもが育つということは、 子どもと親が育つということ。 「子育て支援」 に関わる関係者も育つということを教えてくれています。
 京都生協が組合員を対象に実施した子育てに関するアンケート調査結果からは、 親の仕事と暮らし、 子どもたちの生きる現実に学びました。 分科会での議論を通しては、 「子育て支援」 の取り組みは、 地域の子育て文化をどう育むのかということが大切であること。 生活文化を継承していくことが地域の中で子育て文化を形成していくことにも結びついていくことが明らかにされてきました。
 今、 「出会い、 語り合い、 学びあい、 支えあう」。 このことをサポートする子育て支援の取り組みが求められています。 子育て・子育ちの困難や問題の解決・緩和は地域が舞台となって展開されるものです。 生協がそうした 「場」 を提供することにとどまるだけでなく、 地域・暮らしの中で育児サークル、 子育てクラブ等の子育て支援の 「場」 をどれだけ作り広げていくのか。 組合員の主体的な力と地域の持つ 「保育力」 「教育力」 に依拠しながら、 子育て支援の場づくりを関係機関とも連携しながらコーディネートしていく活動を生協が担っていくことが求められているように思います。