『協う』2003年4月号 特集2
生協女性トップセミナー (講演II)
雇用・労働市場の激変と女性が働くこと ―ジェンダー視点から
木本喜美子 (一橋大学社会学部/教授)
『協う』 今月号では、 前回に引き続き1月25、 26日に大阪において開催された 「第5回女性トップセミナー」 の模様を要約して紹介する。 前号では御船美智子先生の講演を取り上げているが、 今号では、 続いて報告いただいた一橋大学社会学部教授・木本喜美子先生の講演の模様をお伝えしたい。
私は、 女性や家族や労働をジェンダーの視点で読み解き、 日本の現状分析をしたいと考えています。 女性の地位が日本では低いといわれていますが、 これは常識中の常識ですし、
とりわけ働く女性の地位が低すぎるという問題があります。 この状況は、 近年日本の社会が変化してもなかなか変わっていません。 それがなぜなのか、 というところに私の大きな問題意識があります。
実際、 男性の賃金を100として換算すると、 いまだに女性の平均賃金は64程度ですし、 女性管理職は数えるほどしかいないのが現状です。 1987年に、
女性の地位についての大規模な国際調査がおこなわれたのですが、 日本は99ヵ国中37位という恐るべき低い順位だったのです。 先進資本主義国の一員として、
保健衛生状態などは非常によいが、 働くという領域や政治的に活動する領域がぐっと低いのです。 さらに、 2001年に国連が調べたジェンダー・エンパワーメント指数
(経済や政治の場面へ女性が参加しやすいかどうかを測定した指標) は31位ですから、 10年以上たっても、 さしたる改善が見られていないのが現状です。
1. 戦後日本の雇用慣行と女性
○企業社会とジェンダー規範
「男は外で働いて、 女は家を守る」 というジェンダー別規範 (言い換えれば性別分業) が、 どの時期に大衆的に普及し、 定着したのはいつなのか、 ということを探ってみますと、
それは第2次世界大戦後ということができます。 戦前期、 新中間層と呼ばれるサラリーマンのはしりの人たちの家庭に、 まず 「主婦」 が誕生します。 ただ、
これは一握りの階層だけでしたので非常に憧れられたものでした。 ところが、 第2次世界大戦後に、 労働者階級の多くが、 一握りのホワイトカラーのものであった
「主婦」 を持てるようになり、 やがては家庭電化製品に恵まれて、 豊かな生活をめざしうるようになりました。
これを保障したのが、 大企業を中心として整備された雇用慣行モデル (終身雇用、 年功賃金、 企業内組合) です。 ふつう、 労働者が働きに出たとき、
その仕事に対して賃金が払われますが、 彼が抱えている生活 (家族生活) を保障していくような賃金体系が、 モデルとしてできあがり、 多くの労働組合もこれを要求し企業がそのかたちを整えていきます。
加えて、 直接賃金だけではなく、 企業福祉も、 扶養手当から始まって社宅はもとよりマイホーム資金の貸出しまで、 どんどん充実させていきました。
もっとも、 このモデルは大企業と公務員に保障されたものですから、 実際には全体のほぼ30%の人にしか実現しえないのですが、 中小企業も余裕が出てくると似たような賃金体系や企業福祉制度の導入を活発に行うようになりました。
日本と欧米諸国を比べたときに決定的に違うこととして、 日本の場合は 「家族賃金」 (家族賃金:その扶養家族に対する生活補助的な性質の手当てをも含めて従業員に賃金を支給すること)
という考え方が賃金体系のなかに実質化したり、 あるいは企業福祉として具体的に補償されたりした点を忘れてはいけないと思います。 これは日本独自のありかただと思います。
結局、 「近代家族モデル」 は日本では第2次大戦後の高度成長期にブルーカラーも含めて大衆的に実現した、 ということが非常に重要です。 「会社人間+専業主婦」
が望ましいライフスタイルや性別分担のありようとして、 1960年代を通じて定着したのです。 さらに、 日本では、 このような近代家族モデルが1970年代、
80年代にも継続し最近まで引っ張られてきています。
しかし、 日本以外に目を向けますと、 1960年に戦後の第2次フェミニズム運動が活発に起こっています。 先進国の多くの国々では60年代を通じて、 近代家族モデルは疑いの眼で見られるようになっているのです。
また、 この頃以降、 実態としても 「家族」 は大きく変化しています。 たとえば1980年のデータでは、 アメリカでもイギリスでも、 専業主婦を持つ家族は十数%にまで減少して、
その他の多様な家族の類型が登場してくるわけです。 日本以外の多くの先進国では、 日本のような強力な近代家族モデルは、 その基盤を弱めていったのです。
○企業社会のなかの女性労働
ここで、 企業のなかで女性労働はどのように位置づけられたのかを確認しておく必要があるでしょう。 結論から言えば 「位置づけられなかった」 というのが正しいと思っています。
女性は短期就労しか求められず、 まともな労働力として位置づけられなかったのです。
なぜなら、 日本的雇用慣行は、 あくまで男性だけを前提にしてきたからです。 終身雇用も年功賃金も男性のものでしたから、 企業のなかで働く女性たちはひどい目に遭い続けてきました。
そして、 そのなかでも特にひどい目に遭ったのはシングルマザーたちだったと、 私は思っています。 主たる稼ぎ手と目される男性を持っていない人たちが餓死するような事件が、
豊かな社会で起きました (1996年)。 家計維持者になりうる男性を持たない女性で、 かつ母となった人は、 きわめてひどい状況におかれるのです。
戦後の労働運動は基本的に男性労働運動であって、 ここで挙げた女性たちのように命綱を絶たれたらどういう状況になるかということに、 なかなか思いが至らなかった。
このことは、 後知恵になるかもしれませんが、 よく考えてみなければならないと思います。
要するに、 戦後、 「主婦」 という生き方が、 ひとつの 「幸せな生き方」 の戦略になり、 そして、 そのことが実は、 総体としての女性の社会的地位の低さと背中合わせでもあって、
時にはそのなかから命を脅かされる女性たちも生まれました。
ただし、 私は、 近代家族モデルのなかにおいて主婦が果たしてきた価値もあったと考えています。 それは、 命や暮らしにかかわる領域の社会運動の担い手としての価値で、
これは非常に大きかったし、 もちろん現在も大きな価値であり続けています。 逆にいえば、 働きづめの男性たちが手を広げられない分野を、 女性たちが担い、
女性の視点から主張していったのです。 専業主婦のそうした活動がなかったら、 日本社会はもうとっくに磨滅していたかもしれないと思います。
2. 女性労働の変化
○労働市場の変動と女性主体の変容
時代のなかで 「主婦」 という生き方が、 どんどんマイノリティーのものになりつつあるのは現実です。 そこで今度は、 女性労働の変容について簡単にお話ししたいと思います。
言うまでもなく、 女性労働者は増大しており、 そこにはサービス経済化の影響が大きくかかわっていることも明らかです。 職業別に見ると、 サービス業、 卸・小売業、
金融・不動産業などで女性労働者は増えていて、 サービス経済化が女性の労働市場への参加を呼び込んだといえます。 また、 正規雇用者と非正規雇用者の推移を見ると、
じわりじわりと非正規が伸びています。 そして、 最近はっきりしてきたのは、 正規雇用の非正規雇用への置き換えが徐々に進んできたことです。 正規雇用は、
大幅には減っていませんが、 横ばいから少し下降気味で、 それに対して非正規がじわじわと増えています。
なぜ、 パートタイムも含めて、 このように女性がたくさん働きに出るようになったのでしょうか。 もちろん、 収入のためであることは当然ですが、 同時に社会参加のひとつのチャンネルとして働くことが選ばれているのも間違いありません。
これには、 家庭電化製品の普及などにより、 家事労働時間が短縮されたことも、 ひとつの要因といえるでしょう。
こうしたなかで、 なかなか克服できない問題は、 女性の年代別就業パターンが M 字型であることです (図)。 出産年齢で労働力率が低下し、 基本形が
M 型のままで台形に近づかない、 というのが日本の問題とされています。 これに対してアメリカやスウェーデンではほぼなだらかな台形になっていて、 出産年齢でも労働効率は低下しません。
もっとも、 日本はまだ基本形は M ですが、 次第に変化しつつあるといえます。 出産年齢での低下率が小さくなってきていますし、 また中高年の再就職が進展してこの年代での労働力率がどんどん高くなってきています。
30~34歳層の上昇の第一の理由は、 ひとつには働き続ける女性が増えたこと、 第二の理由は、 未婚化・晩婚化が進んだことが挙げられます。 また、 30~34歳層の就労希望を調べ、
「いまは働いていないけれども、 働きたい」 と答える人たちのデータを拾って加えると、 前後の年代の労働力率と大きな変化は見られなくなります。 したがって、
どの年代においても働く志向性は基本的に高いが、 何らかの困難・障害があって、 いまは専業主婦をしている人たちもかなりいるということになります。
○労働への参入、 矛盾の可視化
さて、 女性たちが労働にどんどん参入するようになってきたわけですが、 このことが、 労働現場の持っている矛盾を非常にはっきりと暴き出すことになってきています。
まず、 男性の賃金を100として女性の賃金の平均値を調べると、 少しずつですが次第に上昇してきています。 これは、 女性たちがだんだん長期勤続化するようになってきたこと、
少しずつ大事なポジションに就くようになってきたこと、 を反映しているといえましょう。 しかし、 まだ依然として男性賃金の60~70%程度というのが現実です。
ちなみに日本以外の状況ですが、 最も男女賃金格差が少ないのはオーストラリアで、 88~89%です。 イギリスやフランス、 ドイツもほぼ80%です。 日本は先進国のなかでも特に男女の賃金格差が大きな国だということが確かめられます。
また、 管理職に女性が占める割合についても、 部長以上では数えるほどしかいないというのが現状です。
このように、 女性の勤続年数も次第に長くなりつつありますが、 この点については、 正規従業員だけが勤続年数を伸ばしているのではなくて、 パートも伸ばしているという点も注目すべきです。
正規の女性の平均勤続は8.5年ですが、 パートでも4.9年 (ほぼ5年) です。 私が調査している企業にも、 パートタイマーとして同じスーパーマーケットに15年以上勤続している女性が数多くいます。
しかし、 このように長く勤続していたにもかかわらず、 男性社員との昇格差別がとても大きいのです。 20~30年勤続している彼女たちは、 男性と比べて何百万という年収差になる昇格差別に対し、
裁判に立ち上がることも多くなりつつあるのです。 加えて、 私は辞めた圧倒的多数の人たちが、 みんながみんな、 会社を辞めたくてハッピーな選択として主婦になったのではないかもしれないと思っています。
会社に残って裁判を闘っている人たちの主張は、 「ほんとうはもっと仕事をしたい。 仕事で自分の能力をもっと試したい。 手応えを確かめたいのだが。」 と思いつつも、
泣く泣く辞めていった人たちの意見を代表しているかもしれないのです。
○調査事例から
しかし、 トップがきちんと政策決定をおこなえば、 多くの女性たちが、 企業や生協などの組織の中枢部分で力を発揮する可能性があるということを忘れてはいけないと思います。
そこで、 全国チェーン展開をしている大手スーパーの事例を紹介したいと思います。 この会社は、 1996年から 「女性店長づくり」 にとても力を入れて取り組んできましたが、
その間の経緯は実に興味深いものでした。
多くの男性店長たちは、 当初、 「どうせお飾りだ。 どうせ、 すぐつぶれるさ」 と言っていました。 90年代に女性店長になった人たちを、 女性店長第1世代とすると、
この第1世代から最優秀店長賞にノミネートされる人が出てきて、 当初の見方が大きく変わるに至りました。 いまでは、 全国で10人選ばれる優秀店長賞の一角を女性が占めるようになっています。
こうして、 店長に抜擢された女性は、 96年に最初の一人が誕生し、 90年代中に9人、 2000年には一挙に19人に達しています。 こうしてわずか5年の間に、
当初 「お飾り」 と言われていた状況ではなくなったのです。
それでは、 この人たちが採ったマネジメントはどのようなものであったのでしょうか。 結論からいえば 「ボトムアップ・マネジメント」 です。 スーパーの人事部は、
こうした女性店長の実績を見た後に、 「女性だから、 よく気がつくのだ」 と言いましたが、 それは違うと思います。 ボトムアップは彼女たちが戦略的に採っているやり方であって、
彼女たちが女らしい性格をそこで表現しようとしてやっているのではない、 ということです。
3. 今後の課題
職務配分と評価の決定的重要性
もっとも今後も多くの課題があると思います。 私が強調したいのは、 職務配分も見直すべきであるということです。 「女はこれができる。 男はこれはだめ」
という形で職務配分をやっていくと、 組織が固定的になってしまって非効率的になりやすいと思います。
発言権が弱いことから生じる問題事例を挙げてみたいと思います。 食品スーパーはどこでも、 若い女性を雇うとレジに押し込めるというやり方を伝統的に採ってきましたが、
このことによってレジは 「女性部門」 になってしまい、 レジの発言権が弱いという実態を生むことになりました。 このような状況のなかで、 なんらかの間違いで金銭が合わないといったトラブルが、
レジで発生した場合を考えてみましょう。 このようなトラブルは、 レジでの打ち間違いが原因という場合ももちろんありますが、 商品に付いているプライスシートの位置が悪いために発生することもしばしばです。
ところが、 レジの発言権が弱いために、 店舗の中心にいる男性に向かって 「このシートの位置、 なんとかしてください」 と言っても、 全然聞き入れようとしてくれません。
一定の部署に発言権がないことにより、 職場の重大な問題がうまく解決できないという事態が起こっており、 それはたいへんな非効率の原因となっているのです。
やはり、 各職場で女性の任用と育成をかなり本気で考えるべきでしょう。 それはジェンダー公正の視点からも当然なのですが、 まずは最初のアプローチとして効率性の観点からだけでも、
より積極的に主張していくべきではないでしょうか。 硬直化して非効率的になっている組織を改善していくためには、 女性の任用と育成が必要であるという点をまず主張し、
その上でジェンダー公正を組織の中に根付かせていくべきでしょう。 こうして、 発言力や権限を女性が握れば、 パート処遇も含めた合理的なありよう (=公平処遇)
を提起することも可能になると思っています。
■ディスカッション
パートの均等処遇の問題についてもう少し深めていきたいと思います。 パート店長は、 コストが安いから起用するというメリットもありますが、 女性店長がなぜ必要なのか、
効率性との観点でもう少し詳しいコメントをお願いします。
パートと正職員との処遇格差の問題ですが、 これは究極的な課題で、 短期的に解決できる問題ではありません。 でも、 あえて究極という点でお話しすれば、
「パートとフルタイマーは時間差があるだけ」 というかたちで処遇していく可能性を私は考えています。 もちろん、 手放しでこれを言ってしまうと、 「正社員の処遇を低く切り刻んで、
パートのようにせよ」 という話にされてしまうので、 そこはとても注意深く言わなければなりませんが、 きちんとセーフティネットに守られて、 8時間働く人は8時間分の賃金とセーフティネット、
4時間の人はその半分のアクセス権がある…というようなヨーロッパタイプを念頭に置いています。 その意味で、 「パートとフルタイマーに差があるとしたら、 働く時間差だけです。
それを選びなさい。 それによって著しい格差があるような処遇はしません」 という状態を、 目指したいと考えています。
ただ、 実際の格差是正は、 おそらく段階的に進んでいくしかないと思いますが、 厚生労働省のパート懇が苦肉の策のひとつとして 「女性の平均賃金の7割」
を出したということは、 私は一応評価しています。 それさえ中小企業を含めて経営者を納得させるのは難しいかもしれないという状況のなかで、 「均衡」 という切り刻んだ言い方でありながら、
その水準を一応つくろうということに関しては、 評価したいと思います。 ただし、 女性の平均賃金がそもそも、 男性の6割程度で、 とても低いことを忘れてはいけないと思います。
そのため、 まだ先は遠いと思っています。
次にパート店長についてお話しておく必要があります。 地方の食品スーパーの例ですが、 そこでは新しい店を展開していくときに、 トップから 「この店の切り盛りができて、
顧客対応もできて、 きちんと食品に関するノウハウやスキルも持っている人を店長にしろ」 と命じられて、 人選したら、 結論は 「社員にはいません」 ということになりました。
それでもあきらめずに探したら、 結局パートさんしかあり得ないということに気づいたのです。 パートに対しスキルアップや、 マネジメントのノウハウの教育が行われて、
パート店長の第一歩が踏み出されたのです。 なお、 彼女たちパート店長は、 その後パートタイマーではなくフルタイマーとして処遇されるようになっています。
いまは 「安上がりだからパート店長を育成する」 という話になりがちですが、 「顧客にどういうサービスが必要で、 誰ならそれができるのか、 という目線でやったらパート店長になった」
という話は、 パート店長の誕生が人材の効率的配置のからなされたという非常に教訓的な事例ではないかと考えています。
なお、 パートがこれまで以上に活躍している場面は、 女性パート店長の増加だけに見られるものではありません。 いちばん下でマネジメントする人を主任、 次に課長、
そして店長、 と3ランクに組織を分けるとするなら、 多くのスーパーではパートの主任クラスへの抜擢を昨今非常に進めています。 その場合、 企業によって違いますが高卒の初任給かそれ以上の年収は保障されるようになってきています。
これで、 パート待遇はずいぶん改善されることになってきています。
パートと正職員との処遇格差を考える際、 いまの生協の賃金体系から見たときに、 同一労働、 同一賃金のなかでやれるかどうかという問題であると思います。 現場では、 パートさんの持っている生活感やさまざまな提案能力は、 非常によくわかります。 ただ、 そのことを賃金とどう結びつけるべきかという点は、 どの生協でも非常に悩んでいる問題だと思います。 実際、 同一賃金でやれるかといえば、 正規職員の賃金を下げるわけにはいかないという問題が大きな障害となります。 今後、 供給事業高が伸びる要素はあまりないと思うので、 この点は特に大きな制約ではないでしょうか。 このような現実を踏まえた上でどのように考えていけばいいのでしょうか。
生協だけではなく日本のほぼすべてのスーパーマーケットが、 パートさんのやる気に依存して、 そのボランタリーな労働に救われている部分が大きいと思います。 「パートさんたちは、 どうしてこのような低賃金で、 こんなにもアイデアを出して、 どんどんがんばるのか」 と、 たぶんみなさんもお感じになることが多いと思うし、 私がインタビューしたときに最も驚くのもそれです。 しかし、 やはり、 このような現状に安住していてはいけないと思います。 「男性社員のかわりにパートさんに泣いてもらう」 ということでは、 たぶん、 もうやっていけないだろうと思います。 実際にも、 いくつかの大手のスーパーは一定の取り組みを始めていると思います。 パートさんに高卒並の年収を保障するようになっている事例は、 大手スーパーがパートさんの力を痛いほどわかってきているからではないかと感じています。
店長にもなりうるような女性は、 どうしたら育成できるのでしょうか。 現状ではまだまだ少ないので、 今後そういう人たちをたくさんつくっていくうえで、 生協としてどんな工夫が要るのでしょうか。
女性を育成しようと思ったら、 下からちゃんと育っていく足がかりをつくることが重要です。 そして、 男性のマネージャーに対して、 「女性を特に育成する」
ということを十分に理解してもらわないとなりません。 なぜなら、 男性マネージャーはどうしても男性にしか目が行きませんから。 女性のマネージャーは当然、
女性の部下に目をくばることができます。 男性とは、 女性店長の育成について、 効率性の問題も含めて現状を踏まえて徹底的に議論する必要があります。 また、
女性部下の育成を具体的に目標化しなければならないでしょう。 それがないと、 たぶん、 きちんと下から育ちあがらないと思います。 下からきちんと育ちあがれば、
「店長って、 おもしろそう!」 となるのです。 私が調査したスーパーでも、 数多くの女性店長が出てくると、 いろいろな女性が 「私も店長、 やりたい」
と言うようになりました。 また、 「店長は無理だけど、 課長ならやりたい」 という女性も出てきています。
ですから、 私が6年間観察してきた結果から判断するに、 クリアすべき課題を解決していけば、 雰囲気は加速度的に変わると思います。 各生協の女性トップの皆さん方に、
是非、 こうした女性の育成と任用という問題をお考えいただき、 積極的に提言していただけたらと願っています。