『協う』2003年2月号 書評2


『協同組合』 はどのように日本に伝わってきたのか
松本 崇
京都大学大学院経済学研究科
修士課程


『協同組合のルーツを探る』
加藤整著
コープこうべ・生協研究機構
2002年9月 600円

 協同組合の歴史を振り返った著作は多々あると思うが、 本書は協同組合を紹介した初期の文献のレビューやそれらに関わりのある人物を紹介することで、 協同組合が日本にどのように紹介されたかを振り返った著作である。
 内容を簡単に紹介しておくと、 本書ではまず、 協同組合と関わりの強い 「一人は万人のために 万人は一人のために」 という標語のルーツを探っている。 その語源は諸説あり定かではないが、 協同組合運動の中で最初に用いたとされるのはドイツの農村協同組合運動であり、 それが日本に持ち込まれたときには 「各人は総員の為、 総員は各人の為」 という言葉で紹介されている。 次に 「ロッチデール公正先駆者組合」 について触れている。 ロッチデールを日本に紹介したのは、 外国人が書いた経済学のテキストを日本語に翻訳した文献たちであり、 日本人が書いたものとしては 「郵便報知新聞」 という新聞であったということである。 ここでは協同組合を 「協力商店」 としており、 この新聞に関わった人物たちは後に実際に 「協力商店」 を設立することになる。 また、 ロッチデールには何人かの日本人が訪れているが、 その中でも一番最初に訪れた二人の日本人についても紹介している。 そして最後に、 日本に協同組合が入ってきた当初はその名称は 「産業組合」 だったが、 それがいかに 「協同組合」 という名称に変わっていったかを振り返っている。 そもそもなぜ当初は 「産業組合」 であったかというと、 それはその存立基盤である 「産業組合法」 がドイツの 「産業及び経済組合法」 を範にとって制定されたからであるという。 だが、 そうした用語の使い方には学者の間から、 生産者に重きをおいた 「産業組合」 が強調され、 消費者組合としての性格が忘れ去られているとして批判が起こり、 いくつかの議論を経て、 昭和初期には 「協同組合」 という用語が文献にも登場することになる。
 本書では、 当時の文献からの引用を多々行っており、 そこから当時の状況を垣間見ることができる。 本書を読み終えた後に感じた印象として、 本書は 「協同組合昔話」 であり、 「昔話」 ということは協同組合に関わる人々全員が知っておいてもいい話であろう。 ページ数も短く、 読みやすいのでぜひご一読をお薦めしたい著作である。