『協う』2003年2月号 書評1

生協運動を歴史で綴る
吉田 智道

京都府生活協同組合連合会
会長理事



『現代生協運動史 上・下』
日本生活協同組合連合会
コープ出版 2002年6月 5,250円

  「現代日本生協運動史」 上下2冊 (日生協刊) は、 日生協50周年記念事業のひとつとして、 一昨年の 「現代日本生協運動史・資料集」 全3冊 (おなじく、 日生協刊) をひきつぎ、 その作業の集大成として刊行されたものである。 B5版で年表等も含めて全900頁、 本文だけでも750頁を超える大作であり、 執筆者はもちろん、 編集にかかわられた方々の御苦労に敬意を表したい。
 上巻は、 戦前の運動を扱った序章と戦後60年代までを扱った3つの章でなりたっている。 戦後のこの時期に、 運動の再建がはかられ、 生協法そのほか活動の条件がかちとられ、 時期時期で主役の交代はあったが、 一定の主体的力量が蓄積され、 日生協という連帯組織が設立・維持されてきた。 これらの成果の上に、 60年代末から70年代を通して、 主婦を中心に市民生協群が全国につくられ、 急成長し、 これまで生協運動を支えてきた生協と合流して生協運動の主力が形成されて活発な活動が展開されるわけだが、 それらのことは下巻の扱うところとなる。 その意味では、 極端に言えば、 上巻全体が前史ということになるだろう。
 下巻は、 70年代、 80年代、 90年代にそれぞれ1章があてられ、 叙述は2000年にまで及んでいる。 各章の初めに序節が置かれ、 情勢と概要が述べられているのは上巻と同じだが、 終りに到達点と課題 (ないしは展望) が置かれている。 叙述の仕方は、 まず日生協の活動や地域生協の活動が本体として述べられ、 その他の生協の活動は各分野の生協の活動としてつけ加えられるという形をとっている。 もちろん、 時代を特徴づけるような出来事やとりくみ、 たとえばオイルショック、 生協規制、 ICA 東京大会、 バブル崩壊、 阪神淡路大震災、 CO-OP 共済などについては、 場合によっては特別な節なども設けて述べられている。
 下巻で一番関心をひかれるのは、 やはり、 同時代史ともいうべき第6章90年代の叙述である。 旧社会主義国や中国などの参加で急拡大した市場経済とそのボーダーレス化、 バブル崩壊とながびく不況のもとで、 組合員のくらしも生協の経営もきびしい状況にある。 そうしたなかで破綻した生協も出ているが、 組合員の声と参加で商品開発や事業の改善改革をすすめ、 組合員・職員が元気になっている生協もたくさんある。 経営構造の改革もすすめられている。 生協間の連帯もさまざまな形ですすんでいる。 そこで、 生協はなんとか危機をのりこえ、 未来をもつことができると思うのであるが、 それは実は今後の実践で証明が求められていることである、 といえよう。
 この本は、 通読するというのも当然の読み方ではあるが、 概要部分と必要項目だけを読む、 あるいは項目だけを拾って読むということでもよいのだと思う。 敬遠することなく、 まず手にとられることをおすすめしたい。