2002年4月号
視角
ブロードバンド化とコンピューターリテラシー ― ウイルス騒動をめぐって
藤田 実
インターネットの利用者の増大と常時接続が拡大し、 日常化するとともにセキュリティに対する様々な問題も出てきている。
ウイルス騒動もその一つであり、 E-mail を利用している人の多くはウイルス付きのメールの1つ2つは受け取ったであろうし、 ウイルス対策をしていないユーザーでは感染した人も少なくないのではないか。
セキュリティ対策を止めることの出来ないマラソンに例える場合もある。 この場合、 マラソンを止める=インターネットの利用を中止するか、 システム管理者によるセキュリティ対策がされた特定の環境で禁止事項を守って利用をするという道しかない。
しかし、 いつでもどこでもだれでもがインターネットを利用するということは、 普通の利用者にも、 セキュリティ対策へのマラソンへの参加を強いることである。
現代に生きる私たちは、 インターネットを使うためには、 ウィルス対策など最低限必要 な基礎知識 (リテラシー) を持つ必要がある。
コンピュータ・セキュリティについての基礎知識をマスターする上で、 一般のユーザーにとってどのようなことがわかりづらいのか、 このことを少し整理してみよう。
一般のユーザーへいかにセキュリティへの意識を高めていくか。 このことをコンピューターリテラシーの問題として、 少し考えたい。
1 パソコンという商品の特性-最新のパソコンを買っても、 最新の状態とは限らない パソコンやインターネットの普及によるユーザー層の拡大によって、 出荷時にはユーザーが電源を入れたら一通りの機能は不都合なく即使えるようになってきている。 しかしソフトウエアの性質上、 何らかの欠陥があり、 それらの多くは判明すると、 頻繁に修正されている。
しかし、 多くのパソコンにプレインストールされている OS やソフトは、 メジャーな修正がほどこされ流通するまで、 最初に出荷された時点のままであり、 ユーザー自身でアップデートする必要がある。
例えそれがメーカーの最も新しい機種であろうとも、 インストールされている OS やソフトが出荷されたのが1年前であれば、 それは1年前からのセキュリティ上の欠陥をもっていることになる。
2 ユーザーにとって必要なセットアップがわかりづらい 最近のパソコンの多くにはウイルス対策ソフトがすでにインストールされているが、 そのセットアップがされていない場合が多い。
また、 ウイルス対策ソフトは最新のウイルスに対応するために、 定義ファイルの更新が必要であり、 更新は1年間程度有効であるが、 そのセットアップがなされていない、 あるいは、 更新期限が切れたまま放置されているなどである。
初心者にとってパソコンのセットアップはかなりの苦痛である。 そのため、 ウイルス対策ソフトがプレインストールされていても、 とりあえず設定は後回しにされがちである。
3 セキュリティの脆弱性の全てはほとんどのユーザーにはわからない 現在発見されている脆弱性は、 ブラウザーやメーラーだけでなく、 メッセンジャーサービスなどにも広がっている。 現在のウイルスはこのような複数の既知のセキュリティ上の脆弱性を攻撃している。
4 ユーザーの不正確な知識 すでによく知られてきてはいるが、 依然として見知らぬ他人から不信なメールが来ても、 添付ファイルを実行しなければ、 あるいは開かずに削除すれば大丈夫であるなどの曖昧な知識で対処している場合がある。
実際には、 メールのタイトルをプレビューするだけで感染する、 あるいは差出人もすでに感染した人だけでなく、 ウインドウズ標準のアドレス帳からランダムに差出人を偽って送り出す、 タイトルが日本語のウイルスもでてきている、 など、 巧妙化し変化が激しいため、 曖昧な知識にたよるのは危険である。
5 接続環境や動作条件の差による対策のばらつき 全くの初心者でなく、 ある程度の経験をもつユーザーに見られるのだが、 ウイルス対策ソフトの動作が重いなどによって、 あえてアンインストールをしているなどの例がある。
別な作業をしているといって、 ウイルス定義の自動更新やスキャンをキャンセルし実行しない例も多い。
初心者にとって有効なセキュリティを含めた自動更新機能が Windows で選択できるようになったのは、 つい1~2年前からのバージョンにすぎないが、 このような機能を有効にするある程度の速度での常時接続が確保されていない場合が実際には初心者ほど多い。
6 被害は自分だけの問題ではない、 足踏み台になることで加害者に加担する ネットワークに接続するということは、 多くのユーザーと何らかの情報を共有する作業であり、 相互に信頼すべき土台が必要でありそれを、 維持しあわなければならない。
今後は無線 LAN の導入によって、 ますます限られた場所と時間での利用という制約がなくなっていくであろう。 しかしそれは、 個人の千差万別の接続環境と状態のパソコンが、 複数のネットワークに接続することにもなり、 今まで以上のセキュリティを含めたコンピューターリテラシーを高めていく必要にせまられている。
これは日常的にインターネットを利用する全てのユーザーに必要なリテラシーであろう。
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