2002年4月号
エッセイ
「大学改革の中で、 問われる生協の存在価値」
京都大学生活協同組合
専務理事 平 信行
大学生協に関係する者にとって、 国立大学の法人化を中心にした大学改革が目下最大の課題です。 京都大学においても法人化を前提にした中期計画、
中期目標の検討が始められています。 大学生協の存在基盤が大きく変化するわけですから、 私達も強い関心を寄せこれからの大学生協のあり方についての検討を進めています。
言うまでもありませんが大学は研究機関であると同時に高等教育の場であもあります。 したがって当然のことですが学生は大学を構成する重要な (基本的と言っていもよい)
存在であるはずです。 しかし今日の大学改革への動きを見ていると、 この学生の人達の意思形成への参加はあまりにも疎かにされているのではないかと、
懸念と問題意識を抱き続けています。 参加問題だけでなく、 法人化への基本的指針 (中間報告など) において学生サービスの現状評価や今後のあり方が何も語られていない状況もあります。
二十一世紀の大学作りというテーマにしては、 あまりにも大きなモノが欠落しているのではないかという印象を強くしてきました。
京大生協では今、 あらためて自らの 「使命」 と二〇一〇年までのビジョンを策定していこうと検討中です。 その一つとして昨年十二月の理事会で二〇一〇年に向けたビジョンを描き出すワークショップを行いました。
理事と参加した店長のみなさんが、 自らの描くビジョンを出し合うとりくみでした。 豊かな食事環境の実現から、 研究室サポート、 国際交流、 学生生活サービス、
エコキャンパス等々幅広く深みのある内容で期待と思いが出し合われました。 その中で最も多く意見が集中したのが 「全大学構成員による参加と運営」
という表現でまとめられるテーマでした。
「学生が生協に参加、 活動し、 生き生きと学生生活が送れるようにしたい。」 「人と人のつながり、 協同の輪を広げ、 人間形成、 社会
(大学) への貢献をはかります。」 「できるだけ多くの組合員 (大学構成員) の参画により、 生協事業の向上、 改革をすすめ、 豊かな生活と勉学研究環境実現をめざします。」
等に代表されるビジョンが熱い思いで出し合われ、 語り合われました。
「使命」 と 「ビジョン2010」 は現在第一次案をまとめたところです。 「ビジョン2010」 では九つのテーマで構成されていますが、
その前文に次の一文を掲げることになりました。 『京大生協は、 京都大学構成員が主体であることの特性を生かし、 協同の精神と民主的で開かれた運営によって、
「Mission:三つの使命」 の追求と 「Vision2010」 の実現を目指します。』 九つのテーマを実現していくために、 共通のベースとして
「協同と民主的で開かれた運営」 を貫き、 そのことを最大の拠り所にしていこう、 という宣言です。
大学改革は本当に意味のある、 多くの人達のためになる方向で成し遂げられることを期待しています。 その支えとして大学生協の協同の精神と実態が貢献していけるようにもなりたいとも思います。
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