2002年4月号
特集
「組合員が見るあんなページ、 こんなページ」
生協の“ホームページ・コンテスト”
時代の動きに取り残されがちだと何かにつけて指摘される生協だが、 ここ1、 2年、 「IT 時代」 への本格的な取り組みがようやく模索され始めている。
生協がホームページを持つことも、 いまやあたりまえとなりつつあるようだ。 まずはホームページを開くという段階から、 よりよいホームページへと進化させる段階へ、 いま生協はさしかかっている。
そこで日頃から生協にきびしく、 そして暖かい視線を送る組合員のみなさんに、 全国の生協のホームページをさまざまな角度から批評していただいた。
題して、 “生協のホームページ・コンテスト”である。
●ホームページを見てみよう!
コンテストといっても、 何もそれぞれの生協のホームページを採点したり、 順位付けしたりしようというわけではない。
生協によって、 ホームページの作成と運営にかかわる体制、 予算、 方針はさまざまであり、 それを一律にランキングしたりすることなど無意味であるし、 不可能である。
そうではなくて、 それぞれのホームページのユニークな特徴、 長所を見つけて、 その知恵と考え方とを生協界で共有できれば、 今後の生協におけるホームページ制作やインターネット活用に役立つのではないか。
そんな思いから、 8人の生協組合員と研究者があつまって、 パソコンの画面を囲み、 延々6時間にわたって、 あれこれ生協のホームページを批評する座談会をもったのである (2002年2月20日、 せいきょう会館)。
今回取り上げたのは、 次の20の生協のホームページ。 このうちのいくつかの生協のホームページ運用担当者の方々からは、 方針や体制等をあらかじめうかがい、 そうした情報も参考にさせていただいた。 (本文中の画面は4月3日現在のもの)
***取り上げた生協ホームページ*** みやぎ生協 さいたまコープ ちばコープ コープとうきょう コープかながわ コープいしかわ コープぎふ めいきん生協 京都生協 大阪いずみ市民生協 おおさかパルコープ ならコープ コープこうべ おかやまコープ 生協ひろしま コープえひめ エフコープ ララコープ コープみやざき コープおきなわ
●こんなページに注目!
座談会では、 「トップページ」 「商品情報」 「レシピ」 「コミュニケーション」 「情報公開」 「その他」 の6つの観点から、 それぞれの生協の個性あふれるページがまな板の上に載せられた。
もちろん、 参加者によって視点や好みの違いがあるから、 必ずしも全員の評価が一致するというわけではないけれども、 それでもとくに評価が集まるページというのがいくつか出てくるものである。
そんな、 とくに目にとまったホームページを、 紹介しよう。
トップページ
トップページはホームページの入り口の部分で (英語で Homepage というとき、 通常はこのトップページを指す。 日本でいうホームページにあたる英単語は Webpage)、 まさにその 「顔」 といえる。
人間もそうだが、 この 「顔」 の印象が、 見る人の心を左右する。 トップページのデザイン、 見やすさ、 機能は、 人を呼び込む上で大変重要なものだろう。
さいたまコープのトップページ (写真1) は、 デザインが整っていて見やすく、 とてもいい。 話題ごとに色分けされていて見やすいし、 プレゼントやクイズのコーナーもあり、 おもしろい。「さいたまコープ」 の文字の横に小さなテディーベア (?) が配置されるなど、 デザインに遊び心を感じてしまう。
一方、 写真2は京都生協のトップページ。 字体といい、 上部にある写真といい、 「京都らしさ」 をイメージさせるデザインとなっていて個性的。
他にも、 生協ひろしまやコープおきなわなどのトップページが目を引いた。
商品情報
やはり、 生協のホームページになくてはならないのは商品に関する情報だろう。
商品そのものの紹介 (品質、 原材料に関する説明など) だけでなく、 産地の情報 (広大な大地の風景写真、 生産者のおじさんの顔など) まであれば、 見ていて楽しいし、 買ってみようかという気にもなってしまう。
みやぎ生協のホームページでは、 商品情報の中で特に産直に関する情報に力を入れており、 「産直直結元気印」 というコーナーを設けている。
写真3と4はそのコーナーのページだが、 これは 「産直トマト」 の生育日記で、 苗を植えてからトマトとして育つまでを写真で紹介している。
もちろん、 トマトだけではなく他の作物や豚の生育日記もある。 写真5は 「産直物語」 で、 生産者がどのように産直に取り組んできたかが物語風に紹介されている。
これは 「ふるさと豚」 の生産者の方の紹介で、 その苦労や志を知ることができ、 大変ためになるコーナーである。
この他には、 おおさかパルコープの商品に関する Q&A のコーナー、 生協ひろしまの 「商品クローズアップ」、 そしてコープとうきょうの商品検査センターのページなどが、 とくに好評だった。
レシピ
どんな商品があるのかがわかったら、 今度はそれをどう調理したらよいかを考える。 そんなときにやはり便利なページが、 レシピのページだろう。
最近では食品会社や個人の制作による本格的なレシピ・ページが増えているが、 生協だって負けてはいない。 個性に富んだレシピ集をつくっている生協も多い。
おおさかパルコープのホームページでは、 写真6のように、 レシピを 「お肉」 「お魚」 などの食材別、 「焼く・炒める」 「蒸す・炊く」 などの料理方法別、 そして 「和風」 「洋風」 などのタイプ別、 と3つの角度から探すことができる。
また写真7のようにララコープは、 簡単に調理できる料理をそろえている。
量も多くて、 迷いながらもいろいろなレシピを見て選ぶことが楽しくなるページである。
この他、 量も充実して、 簡単に調理できるものが多いエフコープのレシピ集など、 ぜひいろいろな生協のレシピ集をのぞいていただきたい。
コミュニケーション
インターネットの大きな特徴としてよくあげられる機能が、 双方向性。 最近では、 組合員の声を聞き、 それを生かしていく手段として、 インターネットを活用する生協が増えている。
また組合員同士のコミュニケーションをホームページを通じて行っている生協も多い。
その際に最もよく活用されるのが電子掲示板だが、 今回見た生協の電子掲示板は、 大きく二つに分けることができるだろう。
一つは日本生協連が開発したインターネットショッピングのシステムである 「e フレンズ」 を使う方法。
これは組合員に 「e フレンズ」 の会員登録を行ってもらい、 登録した人だけが電子掲示板を見たり、 書き込みをすることができるというものである。
もう一つは会員登録をする必要はなく、 まったくオープンにする方法であり、 生協の組合員ではない人も電子掲示板を見たり、 そこに書き込みをすることができる。
おかやまコープは、 コミュニケーションの手段として 「e フレンズ」 の掲示板を使っているが、 ここでは会員登録をしなくても、 「お試し」 という形で掲示板を利用することができる。
また、 おおさかパルコープは、 コミュニケーションのためのページに入ろうというときにも会員登録をする必要がなく、 誰でも参加することができるという、 オープンな形をとっている。
コープみやざきは、 ホームページ全体に 「声を聞く」 という姿勢を鮮明に打ち出しており、 どのページにも組合員が感想や意見を言うことができるコーナーがある。
これほど明確にホームページの姿勢を打ち出しているところは他にはなく、 ユニークでおもしろい取り組み。
ちばコープはオープンな掲示板を使って組合員同士が交流しているが、 時には職員がフランクにコメントを書き込んでおり、 まさに生協と組合員との双方向のコミュニケーションが実現されている。
また、 リンク集を組合員がつくっているが、 そこでは組合員の個人ページへのリンクが張られている一方、 他生協や日本生協連へのリンクがない。 手作りの香りがする、 他にはないおもしろいリンク集といえる。
双方向のコミュニケーションではないが、 コープおきなわと京都生協では、 ホームページの管理者 (生協職員) の日記が公開されている。
管理者の素顔を垣間見ることができ、 これも一つのホームページを利用したコミュニケーションだろう。 コープおきなわは 「めぐめぐにっき」 というコーナーで、 管理者の 「めぐめぐ」 さん (女性) が会話口調で毎日の出来事を楽しそうに綴っている。
京都生協は 「桂川」 というコーナーで管理者の 「ぐうすか」 さん (こちらは男性) が写真も織り込みながら、 同じく毎日の出来事を綴っている。
また、 コープおきなわとコープえひめでは職員紹介のコーナーがあり、 どんな職員が生協で働いているのかがわかる。 写真8はコープおきなわの職員紹介で、 様々な職員のプロフィールがのっている。
写真9はコープえひめの職員紹介で、 こちらは支所ごとに職員の皆さんを紹介していて、 自分の担当が所属する支所にはどういう人がいるのかがわかる。
情報公開
インターネットはオープンな空間であり、 そのオープン性を生かして情報公開を進める行政や企業も多い。 生協のなかにも、 ホームページ上で経営状況などの情報公開を進めているところが増えている。
また生協が普段どんな活動を行っているのかを紹介していくことも、 ホームページの有効な活用方法で、 そういった取り組みを行っている生協も多い。
コープいしかわには、 事業活動報告のページがあり、 目標がどう達成されたかを解説し、 決算報告も行っている。
また、 理事会の報告を行うページもあり、 理事会で何が話し合われたかを紹介しており、 積極的な情報公開の姿勢がうかがえる。
大阪いずみ市民生協は、 決算報告や新年度の取り組みの紹介とともに、 総代会で何が話し合われたのかを詳しく紹介しており、 総代会に参加してない組合員も内容を把握できる。
コープかながわは、 生協紹介のコーナーの中で情報公開の姿勢を明確に打ち出しており、 問い合わせ先も紹介していて、 自らの姿勢をちゃんと実現していくんだという意気込みが現れている。
コープぎふは、 生協の活動の一つ一つを詳しく紹介するというよりも、 生協で取り組まれていることを全体的に押さえて紹介している。 特に初めて生協に触れるという人にとっては、 全体像を把握しやすく、 親切な紹介である。
またユニークなところでは、 コープこうべの生協紹介がある。 写真10のように、 「おしえてコープ」 という子供向けの生協紹介コーナーをつくり、 マンガで生協の活動を紹介している。
これは子供だけではなく、 おとなにとってもわかりやすい内容だ。
その他
ならコープは、 「お問い合わせ早見表」 (写真11) というコーナーをつくり、 生協の連絡先の一覧を載せている。 これは生協に何かを問い合わせたいときに非常に便利なページである。
エフコープとさいたまコープは地域内の観光情報や生活情報に関するページを設けており、 地域内に住む人やその地域に観光に行く人にとって楽しめる内容となっている。
福岡のおすすめスポットの解説や、 「さいたまを散歩しよう」 というコーナーは、 大変ユニークである。
めいきん生協には、 コープメイト (パート職員) の人たちがつくる 「くらしのパッチワーク」 というグループのページがある。
独自の視点で商品を紹介し、 さらにその使い方、 レシピも載せており、 なかなかおもしろいページになっている。
ララコープは、 「豆知識コーナー」 (写真12) というページを設けており、 組合員から寄せられた様々なくらしの知恵やアイデアが公開されている。 大変役立つ内容であるとともに、 豆知識の量も400点以上と、 かなりの量になっている。
●気がついたこと、 望みたいこと
前回この 『協う』 で 「IT 特集 第1弾」 としてコープおきなわでの座談会の記録を掲載したのは2000年10月の第16号だった。 そこで若林靖永さんは、 i モードを使った店舗からの商品情報発信を提案されている。
あれからまだ1年ちょっとしかたっていないが、 すでにコープこうべでは、 このサービスが始まっている。 日進月歩の IT 社会であるが、 生協陣営もなかなか頑張っているのである。
もちろん多くの生協にとっては、 ネットを活用した事業展開はまだまだこれからの課題だろうが、 ホームページを活用した情報の提供やコミュニケーションという点では、 各地ですでに本格的なスタートが切られていることを今回確認することができた。
各生協のホームページは、 決して画一的ではなく、 それぞれの生協の個性を発揮していたし、 生協らしくない (?) センスのいいデザイン、 趣向を凝らしたレイアウトや仕掛けに感心させられることも多かった。
大企業のホームページに見劣りしない、 カラフルなホームページを見ながら、 生協も営利企業に負けずにホームページを開設してくれ、 と90年代中盤に散々訴えていたことを懐かしく思い出す。 ただその反面、 ホームページのあり方の基本について、 いま一度確認しておくべきではないかと感じたことも何度かあった。
まず第一に、 生協のホームページにアクセスするのは、 多様な環境にある人々だということである。 華やかな画像満載の、 動きのあるページはたしかに楽しいけれども、 アクセス環境によっては、 いわゆる“重い”(表示が完了するまでに非常に時間がかかる) ページとなってしまう。
アクセスのしやすさはページ構成についても重要なことで、 たとえば、 ほとんどの生協はホームページ上に店舗の地図を示しているが、 店舗の場所を知りたいという組合員 (予備軍) がすぐにその地図を見つけられるかというと、 トップからなかなかそこまでたどり着かないような構成のページも見られた。 組合員 (とその予備軍) は、 高速回線を使っている人間ばかりでないことを忘れないでいて欲しい。
また、 あるページから別のページへリンクを張る際に、 「ここをクリック」 としているページが多いが、 ひとつの画面のなかにいくつも 「ここをクリック」 があると、 音声読み上げソフトを使ってホームページを閲覧しているユーザーは混乱する。
ホームページは、 視覚に障害をもつ組合員に対しても、 有効なコミュニケーションの手段となりうるものであるが、 音声のみを頼りとするそういうユーザーは、 「ここをクリック」 が並ぶページを前に、 途方に暮れてしまうだろう。
リンクする場合は、 「ここ」 ではなく、 たとえば 「商品紹介のページ」 をクリックするというようにきちんと指定しなければならないというのが、 ホームページ制作にあたっての基本である。
そのほか配色や画像の扱いなど、 どんな人でも気持ちよくアクセスできるように、“バリアフリー”なホームページづくりの基本事項を、 もう一度徹底して欲しい。
さらに、 ひとむかしまえのお役所のような無味乾燥なページがなくなったのは喜ばしいことだが、 それがともすれば基本的な生協の情報提供、 情報公開の軽視へとつながっているのではないかという危惧も感じざるを得なかった。
みなさんの生協は、 生協の基本中の基本である 「定款」 や 「総代会議案書」 を、 ホームページから閲覧できるだろうか。
そんなものはつまらないし、 誰も読まないだろうというのは、 たしかにもっともではあるけれども、 しかしそれでも、 社会的責任のある事業体として、 そういう情報をネット上に公開することは絶対に必要なのである。
こんなことはコストをほとんどかけずに実行できるのだから、 ぜひ生協の社会的義務として、 情報公開をさらに進めて欲しい。
楽しく愉快なページづくりには力が入り、 工夫が凝らされているが、 その一方で 「世界最初の生協は19世紀後半にできたロッチデール公正先駆者組合です」 などというデタラメな説明が生協のホームページに散見されるのはちょっと情けない (ロッチデールは世界最初の生協ではなく、 むしろ後発の生協である)。
“お堅い”ページにも、 もうすこし精力を注いで、 生協運動に対する組合員と社会の理解をさらに広めるホームページを作り上げて欲しいと思う。
(文責:杉本貴志・松本崇)
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