2002年2月号
エッセイ
「職員・定時職員一人ひとりへ」
生協しまね
専務理事 安井 光夫
ずいぶん前に聞いた話ですが、 つい最近同じ話を聞く機会があり紹介したいと思います。 今から二六年前、 東京の日野市で移動図書館 「ひまわり号」 の活動が始まりました。 当時の図書館の多くは 「良書追求・悪書追放」 が基本であり、 良悪の判断は図書館側で決められていました。 日野市図書館館長だった前川恒雄さんはそうした図書館のあり方に疑問を抱き、 良書が先にあるのではなく<市民がほしがる本を中心に揃える>ことを真ん中に据え、 トラックに本を積み移動しながら市民一人ひとりに何がほしいか聞いて歩き、 要望のあった本から増やしていきました。 その結果、 市民の図書館利用は急激に高まっていったそうです。
生協しまねが今、 進もうとしている方向は、 この前川さんと同じ価値観を持って生協を進めるという生き方です。 生協と重ねて考えれば、 読み (買い) たくない本 (商品) を押し付ける図書館 (生協) ではなく、 自分の読み (買い) たい本 (商品) が常に置かれている図書館 (生協) を目指すという事です。
最近の事例で言えば・・
・「一度に食べきる事ができないから買わない」 等の声をもとに五個入りのサンライズパンを二個入りで試したところ 「食べきれるし、 これなら二袋買いたい」 と通常の六倍の利用があった事。
・出雲支所では、 「とれとれイワシ」 の使い方を組合員から聞き出しそのことを広げ続けた結果、 継続した利用につながっていった事などです。
この事例を通じて言える事は、 商品の 「押し付け」 や 「売っておしまい」 の世界からは何も生まれてこないこと。 「商品を買って、 使ってから始まるくらし」 の世界を深く耕すことによって多くのことを発見できたり、 具体的にしなければならない事が鮮明になるということです。 改めて、 くらしをちゃんと看る事の大事さ、 実践を通して方針を検証する事の大事さを痛感します。
昨年に続き業績は停滞をしています。 組合員に対しても職員・定時職員に対しても申し訳ないと思っています。 一人ひとりの日々の実践を正しく評価する事なく、 「ことば」 だけを先行させている自分に気がつきました。 方針をかざし 「くらしを看ろ」 「ちゃんと聴け」 と押し付けているだけで、 実践から学ぶ事をおろそかにしてきました。 「言う人」 「やる人」 ではなく、 いっしょにです。 同じ現実、 現場、 現物を通して心を通わせ、 感じ合いながら未来を築いていきたいと思います。
最後になりましたが、 年末、 年度末に向け、 役割は異なりますが、 私もいっしょにがんばっていきます。 また、 「実際はこうだよ」 とか 「もっとこうしたら」 等遠慮なく意見を言ってほしいと思います。
いまの、 <生協しまね>を一番理解していただけると思い、 年末に職員・パートに出した手紙をエッセイとして送ります。
(安井光夫)
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