2001年10月号
人モノ地域1
「賢いお買物の楽園」 なのか
---カルフール光明池店見学記---
多くの話題をまき散らして今年1月30日(火)14時オープンしたカルフール。 当研究所昼の部編集委員 (組合員) たちが出かけた。 気持ちのいい初夏5月17日、 遠足気分。
「幕張」 「南町田」 についで3店目のカルフール光明池店は大阪府和泉市室堂町、 大阪・難波から泉北高速鉄道を利用して光明池駅下車5分ほどのところにある。
明るい・楽しい・買いやすいってほんと?
店の中がほんまに明るいねぇ。 通路も広いし感動やわぁ。 ベビーカーもカートも子供連れやと人に当たるのが気になるし、 そういう心配がないのがええわ。 子供用のカートも面白いのが置いたった。 ふだん障害を持つ人に出会うことはあんまりないけど、 いろんなタイプの車椅子に乗った人もけっこうようけいいてはった。 障害者にとっても買いやすい店なんやと思う。 それに、 こんな大きな店舗やけど温度のコントロールも上手にしたって冷房が染みとおるようなこともないねぇ。 子供も大丈夫。 トイレも広いし、 ベビーシートかて2ヶ所あったんよ。 男性用にもベビーシートがあるんかなぁ?京阪・くずは駅には最近あるんやけど。
買いやすい売り場やねぇ。 私みたいなチーズ好きにはナチュラルチーズを切って売ってくれるのが魅力的やわぁ。 お酒も豊富やし、 計り売りも楽しいし。 そやけど、 食料品以外の品揃えは中途半端でおしいなぁ。 2階の園芸とかアウトドアは好きな人にとっては物足りんのとちゃう?衣料も値段はそれなりに安いけど選べる範囲が少ないのはかなんなぁ。 おもちゃ売り場と子供服売り場が近いのはええねんけど、 赤ちゃんと幼児に別れてて子供が二人いたら離れててめんどくさいわ。 フードコート (ファストフードコーナー) もあまりようなかった。 5店しかあらへん。 行列してる石焼ビビンバは食べられへんかったし、 残念やなぁ。 びっくりしたんは、 ドライ商品の陳列棚がめちゃくちゃ背が高い。 なんでかなぁ。 どうやって並べるんやろう。 天井まで並んでいるとすごいインパクトがあるしアピール力もあって安いんやと思ってしまう。 なんやお店の人の数・警備員さんの数が少ないような気がしたけど。 案内係やからってローラースケートを履いている店員さんがようけいるって聞いてたけど、 あんまり見かけへんかった。 家電やパソコン売り場の店員さんが少のうて十分な説明がしてもらえるんやろか。 女性下着の売り場では店員さんが服の上からブラジャーのサイズを測ってはってね、 「私見栄はってたわ」 てゆうてはるお客さんがいてはった。 服脱がんでも測ってもらえるんは親切やなぁ。 ベーカリーのとこでフランス人の職人さんが二人いて笑顔と片言の日本語で話してはった。 おしゃべりして試食して楽しんだら買うやろなぁ。 おいしそうなにおいもしてくるし、 焼き立てアツアツのパン。 前もってゆうといたら時間に合わせて作っといてくれる。 どこでもやれることやないね。 それに、 店の関係の人なんか欧米系の外国の人がようけいはった。 茶パツかと思ったらほんまの外国の人やった。
野菜の種類が少ないし安いもんはようけ置いたあるけど、 全体として魅力があらへん。 よかったんは写真で生産者・生産地を地図もつけてはっきりさしてる有機栽培の売り場やった。 せっかくパネルを作るんやったら、 あれぐらい立派なのを作らんと意味ないよねぇ。
食のファッション性がかなり高かったやんか。 さくらんぼ、 ブラックベリー、 ラズベリー、 スターフルーツなどトロピカルな果物がぎょうさん並んでた。 お惣菜も和・洋・中となんでもありで楽しかった。 洋惣菜のとこはフランスの昼ご飯・晩御飯がすぐ食べられんねんなぁと言う感じの揃え方やった。
煮物の盛り合わせが3種類入って100円で一人食べきりサイズはええなぁ。 値段も100円から200円位までのお惣菜やった。 フードカバーが付いてるとこが清潔ってかんじやった。 むき出しで置いているのはほこりとかハエがいてへんのかなぁって、 なんとなくいやな気がするやんか。
「計り売り」 の効果のほどは?
ナッツと米の計り売りに感動したわぁ。 5種類あってみんな同じ値段やからちょっとずつ入れて買えるし、 バナナを自分でちぎって計るのもなんか楽しいやん。 キャベツもじゃがいもも100グラム25円と書いてあったけど100グラムってどのくらいかわからへん。 2・3回買うとカンが働くのかもわからんけど。 欲しい量だけ買えるのがええなぁとおもた。
京都生協のきぬがさのお店にもあんのやけど 「ロス」 が多いんやて。 トマトとか桃とかさわりまくるから傷みがはよなる。 押さへんのがマナーなんやけど。 計り売りに向いてへんものもあるのと違う?
八百屋さんは計り売りでその場で詰めてくれたやろ。 10年程前まではそういう店が多かったやんか。 環境問題からゆうても流通ゴミを減らすことが出来るのに。 日本の流通業者は消費者が買わへんからゆうて、 なかなか採用せえへん。
計り売りは環境問題との関係で消費者の主張やんか。 社会の習慣にしていかなあかん。 流通業界が消費者と一緒に商品に対するモラルを作っていく、 生協がもっとがんばらんとあかん。 生協やと消費者がもっと主体的に参加できんのに、 一番得意でないとあかんのに。
計り売りは環境をどうのこうのとむつかしいこと言うよりも自分の生活を作るのにいいことやと思う。 自分の生活の無駄を無くすために面倒かもしれないけれどそうしたい。 今すぐ全部せんでもええんやから。
うたい文句は…商品の絞りこみ、最低価格保証、15日間無条件返品
家電なんかの買い物をする時に予算を立てやすい。 値段が3タイプぐらいしかあれへんし。 安い、 中くらい、 高い。 専門店に行く前に参考にしやすいやん。 店員さんのフォロー無しで売れるんやろか。
書籍の文庫も作者の数が少なかったで。 園芸用品はメーカーは一つやったけど品物の種類はようけあった。 ほかの品揃えは貧弱やなかったし、 価格帯毎に選べるようになってた。
お豆腐は普通のもので15種類ぐらい、 ごま豆腐とかで10いくつかあった。 でもメーカーは3つか4つぐらい。 大阪のメーカーなんかなと思たら徳島や京都、 神戸で地元があらへん。 ここで商品を揃えていくと単調で、 自分のオリジナリティーがあまり出えへん気がする。 返品は普通はせえへんけど、 たまに返したいと思う時があるやん。 きちっと書いたあると安心して買えるし信頼を作る上でも大きいと思うわ。 でも、 日本人は足が短いから裾をカットしたら次に売れへんしどうすんのかなぁ?それを見込んだと言う値段でもないし。 こうてから15日以内でレシートと袋を持って来たらええよ、 と言うのはいいアイデアやなぁ。
エンドの陳列で1アイテム2アイテムで上まで積み上げてあったやんか?すごいボリュームやった。 大きな値段の表示で安さをアピールしてたけど、 あれが最低価格保証なんやろうか?こうてそ損はせえへんという安心感はあるけど。 安さだけでみんな買いに来るんかなぁ?価格破壊力っていうけどほんまかなぁ?
取材後記
見学の後フードコートで思い思いのものを買って昼食を取り、 感想を話し合いました。 私は3月に中国の青島カルフールを訪問・買い物してきたのですが、 カラーコントロール、 物量ともにすごいと思いました。 通りから窓ガラス越しにオートウォークに鈴なりの人が見え、 入ってみたいと思わせる。 計り売りもナッツ・海産物・乾物・菓子とたくさんあり、 店員さんが計量してラベルを貼ってくれるのが新鮮でした。 中国は計り売りが中心の国ですが、 間違いだらけの発音の中国語がいらない分だけ買い物が楽です。 夜の9時ごろでしたがドライ売り場ではまだ品出しを高いステップを使ってしていたし、 ローラースケートで走り回る店員もたくさんいました。 お客もこんな時間にどうしてと思うぐらい多かった。 一ヶ所しかないレジのラインでは何のためにと思うくらいたくさんの警備員が立っていました。
同じようなつくりなのに印象がぜんぜん違いました。 日本の店は上品です。 活気もなかった。 生活のにおいがあまりしないように出来ている。 期待の計り売りも最低価格保証もなじんでいるようには見えませんでした。 しかし、 明るく・通路が広いのはとてもよかった。 週に1回行っておしゃれな暮らしを楽しみたい人むけでしょうか。 一度行ってみる価値はあると思います。
(文責・岡本やすよ)
コメント
巨大流通外資の上陸ということで大きな話題になったカルフールであるが、 出店から半年を経て苦戦が伝えられている。
フランス小売業大手のカルフールは世界に9千店を展開し、 年間売上高が約6兆円という世界有数の巨大小売業であり、 近年アジアへの進出をすすめている (アメリカ進出には失敗し撤退している)。 カルフールが元祖と言われる 「ハイパーマーケット」 は、 スーパーマーケット、 ディスカウントストア、 ウェアハウスクラブ (倉庫型小売業) を合わせたような巨大小売店であり、 食料品、 衣料品、 住居関連、 家電製品、 さらには園芸用品、 自転車、 本、 CD 、 パソコンまでを取り扱う、 日常の生活で必要なものはすべてここで購入できる本格的なワンストップショッピング業態である。
フランスの小売業であるが、 フランスの商品を売ることを目玉にしているわけではない。 ワインやチーズやパンに見られるフランスの香りはあくまでもトッピングにすぎない。 カルフールは、 その国の消費者が普通に購入する商品をいかに安く提供できるかということに注力しているお店である。
結果、 確かに違いはいくつかあるが、 あまり日本の総合スーパーと鮮明な違いがあるかというとそれほどでもないのが実情である。
違いの点では、 今回の 「協う」 訪問団の調査の通りで、 建物の明るさや広さ、 最低価格保証、 無条件返品、 量り売り、 フランス商品などが特徴的である。
その背後にある仕組みについて補足すると、 メーカーとの直接取引で卸を省き、 個々の商品分野ごとに取扱商品アイテムを絞り込み、 大量注文・大量販売とひきかえに仕入価格の値切り・リベート交渉を徹底するというのが、 カルフールの基本的な商品調達の考え方である。 いま、 売場のエンド (角) には、 おすすめ商品がまとめて大量に陳列され、 黄色に赤のマークのプロモーションマークをつけて、 一点集中といっていい販売が行われている。 消費者から見れば、 お店のおすすめ商品が何か一目でわかるし、 大量陳列そのものが迫力のある広告になっている。 ところが直接取引はあまりすすんでいないし、 それを実現する物流の仕組みも整備されていないので、 その威力が発揮されるどころか、 衝撃力のある安さをアピールできていないし、 しばしば品切れを起こしているのが実態である。
もちろん小売業はいかに市場の変化に対応して変化できるかが問われる事業である。 カルフールがどれだけの変化対応をすすめるか、 仕組みづくりをすすめられるか、 今後の動きに注目していきたい。
(若林靖永 京都大学 研究所理事・研究委員会幹事)
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