2001年4月号
人モノ地域
「青年協同フォーラム」に参加して
松本崇
京都大学大学院経済学研究科修士課程
くらしと協同の研究所事務局
はじめに
春の陽気が漂い始めた3月21日、東京にある「大学生協会館」で日本全国の様々な協同組合で活動する青年たちの交流を目的とした「青年協同フォーラム」が開催された。今回はこのフォーラムの内容についての報告と、参加しての感想を述べたい。
「青年協同フォーラム」の概要
「青年協同フォーラム」はもともとは全国大学生活協同組合連合会(以下、大学生協連)が開催を呼びかけ、第1回目の準備会議が昨年の11月25日に行われ、この会議に6団体(大学生協連・日本生協連・コープとうきょう・日本労働者協同組合連合会・JA全中など)、18人が参加した。そして、今年3月21日の開催当日、参加者を50人程度と予定していたところに、13団体(大学生協連・日本労働者協同組合連合会・生協総合研究所・協同総合研究所・コープとうきょう・さいたまコープ・日本生協連・全国農協青年組織協議会・NPO文化学習協同ネットワークなど)、70人の参加があった。参加者は女性より男性の方が多かったようだ。また、男性は20代と30~40代の割合が五分五分程度で、女性は20代の比率が高かった。協同組合で活動する青年を主体にした会議やフォーラムは、ICA(国際協同組合同盟)などのグローバルレベルでは開催されてきており、その動きは一つの大きな流れとなっていた。だが、日本においてはそのような取り組みはこれまで行われておらず、今回の「青年協同フォーラム」がわが国における最初の取り組みとなる。
「青年協同フォーラム」のめざすもの
このフォーラムの目的は三つある。一つめは、「出会い」を大切にして、海・里・山・街の協同組合がお互いの活動内容やめざしていることを知り合い、交流することで生産・労働・消費といった縦割りで、活動が分断されがちな日本の協同組合がつながりをもち、互いに協力できるところを発見することである。二つめは、多様な協同組合による多様な協同を創り上げることで、組合員の願いの実現や地域社会の問題解決の担い手に協同組合がなることである。そして三つめに、次世代を担う青年が集い、交流することで青年や地域社会にとって魅力ある協同組合とは何かについて考え合い、そのような協同組合づくりをすすめることである。
「青年協同フォーラム」の内容
今回のフォーラムのプログラムは、まず午前に大学生協連、コープとうきょう、日本労働者協同組合連合会(以下労協)、そして全国農協青年組織協議会(以下、全青協)の各団体から活動報告があった。大学生協連の報告では、大学生協が「人間らしい豊かな生活、人と地球にやさしい生活を実現する」、「協同体験を大切にし、くらしのなかで協同の輪を広げる」、そして「文化と高等教育の充実を願い、魅力ある大学づくりに参加する」という3つの社会的使命をもって、日々の様々な活動を行っていることが報告された。続いてコープとうきょうは、「人間らしい豊かなくらしの創造」を理念として活動していることを報告した。そして労協は、労働の人間化と地域の人間的再生をめざして活動していることを報告した。最後に全青協は、地域・日本農業を守り、若い農業後継者が将来に希望の持てる施策の実現と国民合意を形成していくために活動しているということを報告した。これらを聞いて、活動する分野がそれぞれ異なっていても、協同の価値を大切にしながら活動していることがしっかり確認できたし、協同組合が連携していくことの重要性を感じた。
午後から6つの分散会に分かれたが、それぞれにテーマを設定することはせず、グループ内で自分の活動内容を紹介しあい、そこから交流するということに主眼が置かれた。私が参加した分散会は、私の他に労協や大学生協連の学生、職員、全青協の方々が参加されていた。
コミュニティでの協同
この中ではいくつかのトピックがでてきたが、その中でも最も時間が割かれたテーマが協同組合間協同についてである。まず、今までの協同組合間協同は産直に代表されるような物流面・事業面での協同が先行し、実利が前面にでていたのではないかという問題提起があった。それに対して議論の中から、「今までの協同組合間の協同は多くの成果を生みだしてきた。それを認識した上でこれからは協同組合間協同がどのような社会をめざすために行われるのかということをもっと明確にしていかなくてはならない」、という意見や「協同組合間協同も大切だが、地域にいる協同組合以外の他の団体との連携ももっと進めていかなくてはならない」という意見も出てきた。そしてこれから大切なのは、「よりよい地域コミュニティを協同で創り上げる」という共通の理念を掲げ、それを現在の協同組合間協同の中に埋め込んでいくことが重要になるという意見が共有されたと思う。そしてそのためにはまず、協同の大切さを自覚した青年が、今回のような集まりを継続的に行うなかで、地域での協同組合間協同のベースをつくっていくことが大切だという意見も出た。
継続したフォーラムへ
分散会の後は再び全体会が行われ、それぞれのグループで話し合われた内容の報告が行われた。他の多くのグループでも私が参加した分散会のように、活動するフィールドが異なる協同組合がその違いを認識した上で、地域内での協同をどう創り上げていくのかということが議論の大半を占めたようである。そしてこの議論を継続して行うためにも、今回のような集まりが引き続き行われることを要望する意見が多数出た。また、このような青年の集まりを全国レベルだけではなく、地域ごとに行うことを望む意見も出た。各グループの報告の後に何人かが感想を述べる場面があったが、そのなかで「青年に期待されない組織は続かない」という意見があり、次世代を担う若い人たちに支持されない、あるいは共感されない組織は社会のなかでの生存が困難になるのではないかという考え方であった。それに対して今回のような青年が集まるフォーラムが開かれたことは、協同組合のこれからの発展にとって「宝」となるだろうという感想であった。もう一つは、今回このフォーラムにおいて青年が集まって交流し、議論を交わす中で「協同の種」というものが蒔かれた。だが、はたしてその「種」の中身はいったい何なのかということはまだわからない。よって、この中身を確かなものにしていくためにはこれからもこのような青年によるフォーラムの継続的な開催が必要ではないか、という意見であった。
フォーラムのルーツと今後
今回のフォーラムは、『協う』第53号の岡安喜三郎さんの論文「青年と協同組合」(以下、岡安論文)の中での、「コミュニティベースの"協同"を21世紀の第一のビジョンとするならば、『協同組合青年フォーラム』プランは、もう一つの21世紀ビジョンである。これは日本のあらゆる協同組合セクター(NPOを含めて)を対象に、働き、活動する青年の情報交換、交流等をすすめる全国ネットワーク組織を結成しようというものである。(中略)『若者は国の宝である』との堅い信念を持って、協同組合運動にあって青年が様々な舞台に登場することを支援したい」とする提案が基礎になっている。それに対して、第55号での中島達弥さんの特集記事「青年と協同 21世紀の新しい『生き方』と『働き方』」(以下、中島特集)の中で、「岡安論文に提起されている、『協同組合青年フォーラム』のように『協同組合』の青年が集う場というよりも、むしろ、ベースとして協同に価値を置く多様な個人・組織が出会う場としたほうがいいのではないだろうか。したがって、『青年協同フォーラム』とした方が望ましいと考える」と提起しており、この考えが今回のフォーラムの実現に直接的に結びついている。
フォーラムの最大の成果は、次世代を担う青年たちの間で、これからも今回のようなフォーラムを継続的に開催していくという合意が形成されたことである。それは青年が地域内で活動しながらも、地域を超えて互いに連携を深め、21世紀を「協同の世紀」とするための「芽」が出てきたことだと私は考える。岡安論文の中で述べられている「コミュニティベースの"協同"」や、中島特集で出てくる「協同に価値を置く多様な個人・組織が出会う場」を実現させるためにも、今回のフォーラムにおいて出された成果をもとに、今後はこのようなフォーラムが地域単位で開催されることを期待したい。
前のページへ戻る