2001年2月号
書評1
市民一人ひとりが自発的に社会と関わるために
きょうと学生ボランティアセンター代表
赤澤清孝
『京都発 NPO最前線~自立と共生の街へ』
きょうとNPOセンター、京都新聞社会福祉事業団編
京都新聞社 1200円
本書は、京都を舞台に活動する16のNPOの事例と、立命館大学教員の川口清史氏、中村正氏からの寄稿論文から成っています。その中の一事例として、私が代表を務める「きょうと学生ボランティアセンター(以下センター)」も紹介しています。
このセンターは、私が大学4回生だった96年の10月に設立しました。主には、学生の社会参加の機会を広げるために、ボランティア活動の情報提供や相談(ボランティアコーディネート)を行うサービスを行っています。そして、昨年2000年の春に特定非営利活動促進法(NPO法)に基づく法人格を取得し、職員を雇用することになりました。いわゆるボランティア団体からNPOへと組織化を進めたわけです。ボランティア団体とNPOでは何が違うのでしょう。川口氏は「ボランティアだけでなく専門的な職員も含めた活動を行っているところにいわゆるボランティア団体とは違う市民活動団体・NPOの特徴がある」と言います。私たちの団体の専門性はボランティアコーディネートです。数あるボランティア活動先から、それぞれの学生に見あった活動先を結びつけていくという専門性が必要です。また、学生スタッフだけでは組織運営の継続性、安定性の確保が難しかったということもNPO化したことの一つの要因です。
ところで、なぜ学生はボランティア活動するのでしょう?アルバイトをすればそれだけお金も手に入れることができます。ボランティア活動の場合はその多くは無償であり、交通費なども含めると持ち出しになってしまうことも多いはずです。これは、中村氏の言葉を借りれば、そこに「人間的な関係性」のテーマがあるからなのでしょう。ボランティア活動は、社会を考える上で有益な素材を提供してくれます。そして経済的な満足ではない、人間関係上の満足を与えてくれます。それは、承認する、承認される欲望です。愛情でも、善意でもない、人間としての相互承認であろうと思います。NPOとは何かを問うとき、「政府の失敗」や「市場の失敗」などが引き合いに出されることが多いのですが、実際にボランティアする個人にとっては、こうしたことよりはむしろ、NPO活動、ボランティア活動に、人間としての相互承認の場を求めて、関わっている場合が多いのではないかと感じています。少なくとも、センターに訪れる多くの若者たちには、こうした傾向が顕著です。
NPOは、社会問題の解決の主体としてはもちろんのこと、個人が市民として主体的に他者や社会に関わるチャンネルとして今後ますます広がっていくでしょう。
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