2000年10月号
エッセイ
琵琶湖にて
京都工芸繊維大学生協専務理事
松浦順三
立ちはだかるようにそびえ立つ蓬莱山と海の様な琵琶湖。近くのコンビニまで車がなければ行く気にならないような所。小学校へはJRに乗って、買い物は2駅向こう。不便なようだけど自然に囲まれ、けっこう気に入っていると思っているのは、思い込もうとしているからなのか、本当に気に入っているのか、きっとどうでもいいことなのでしょう。
子供3人が大きくなるにつれ、公営団地が手狭になってきたので、妻と連日連夜の相談の結果、思い切って新築しようということになり、つい先日引っ越しができました。子供たちは自分の部屋ができたと喜んでいるし、さっそく友達もできたようで、「お客さん第1号」は娘の同級生5人でした。子供たちもすっかり新しい学校に馴染んだようで、転校後すぐの運動会も優勝するんだと張り切っていました。みんな前向きに生きているんだなと思います。きっと友達のことや先生の事で不安がいっぱいだと思うのですが、けなげに親には心配かけまいとしているかのよう。あとは親の私たちが地域の人と馴染んでいくだけ。
道行く人たちは温かく、出勤途中のJRの駅構内でも挨拶してくれます。最初はびっくり。知っている人かと思ったのですが、実は知らない人たち。今までは、歩いていてすれ違う人に挨拶する事もされることもなく(毎日同じ電車で顔を合わせる人でさえ・・)、照れがあるのか(自意識過剰なのか・・)すぅーと挨拶が返せなかった自分が恥ずかしい。子供に「挨拶しような」と言っていた事を思い出し、さらに恥ずかしい。
山あり湖ありで涼しいかと思っていたのに、さすがに今年の夏は暑かったようで、琵琶湖も渇水の危機に見舞われ、水位が1メートル近くも下がったそうです。渇水対策本部が設けられ、取水制限がされました。琵琶湖は1400万人の生活用水をまかなっているそうです。今までは、地下水が大量に出る地域に住んでいたせいか、渇水とか断水ということを気にしたことがなかったのですが、目の前にある琵琶湖の存在の大きさに圧倒され、新聞の水位欄を確認したり、雨が降ればいいなと呟いたりしている始末です。待望の雨がまとまって降り、ホッと一安心。そんな折り東海地方の水害の報を聞き、何とも言い難い。被災された方へ心からお見舞いの気持ちを送りたいと思います。
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