2000年8月号
人モノ地域2
ボ ラ ン テ ィ ア の す す め
~自分を見つめる機会として~
立命館大学大学院政策科学研究科修士課程 西村 智子
「何か人の役にたちたい」。 そんな思いをもってボランティア活動をされた方はこれまでにかなりおられると思います。
私も1995年の阪神淡路大震災をきっかけに老人ホームやデイサービスセンターなどでボランティア活動をしてきました。
そのなかでも特に印象深かったのは、 98年に1年間カナダのバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学へ留学したときでした。
日本のデイサービスセンターにあたるような施設や幼稚園などにも行きましたが、
今日は、 その時の幼稚園でのボランティア体験について話したいと思います。
「契約書」
留学前、 カナダは学生のボランティア活動が盛んであると聞いていたので、
日本での体験がいかせるかもしれない、 ぜひカナダでもいかしたいという気持ちでいっぱいでした。
ところが、 いざ始めようとすると、 活動種類が多く、
どの活動にするか迷うくらいでした。 また、 ボランティアに参加するには一種の契約書のようなものを書いてボランティア先に提出しなければならないことには驚きました。
その内容は、 名前や住所だけでなく、 保証人
(本人の身元確認のためだとか?) の名前、 連絡先、
本人との関係、 そしてボランティアで自分ができること、
できないこと、 志望動機、 活動可能日時など、
かなり細々したもので、 書くのにかなり苦労したのを覚えています。
さらには過去の犯罪経歴も調べられるほどで、
ボランティアを採用する時の慎重さを感じました。
支えられて
事前に書いた 「契約書」 をみながらボランティアコーディネーターと面接し、
自分のできることできないこと、 やりたいことやりたくないことをはっきり述べているので、
自分の役割が明確でした。 例えば、 私はカナダでトライアスロンにも挑戦していたので、
毎週木曜日、 一人の軽度の障害をもった幼稚園児に園のプールで水泳を教えることになりました。
同時に水泳中に他のボランティアスタッフをまとめる役割も任されたのですが、
私の英語力の未熟さからうまく説明できない時があり、
別のボランティアや専任スタッフに助けてもらうこともありました。
そうすると、 ボランティアコーディネーターや幼稚園の先生だけでなく、
スタッフや幼稚園児の母親まで、 私がボランティア活動に自信をなくさないか、
心配してくれるほどでした。 皆さんの励ましには本当に感謝しています。
また、 私が病気で休んで久しぶりに訪ねたとき、
子供たちや常勤スタッフみんなが私の病状を心配し回復を心待ちにしてくれていて、
「自分はここで必要とされている」 と、 とても感激しました。
私はたくさんの人に支えられて活動を続けました。
帰国して数週間の間、 毎週木曜日になると 「あ、
今日はボランティアにいく日だ」 と思い出してはさみしく、
かつ、 なつかしく思うほど、 ボランティア活動は私の日常生活の重要な部分を占めていました。
私にできること
ボランティア活動は 「ボランタリー」 なモノであるが故に、
自分勝手な都合で活動を休みたくなったり、 継続して活動することが困難になるときもあります。
でも、 ボランティアはアルバイトのようにお金はもらえないけれども、
それ以上に価値のある、 大切なものがあると思うし、
自分を社会の中で生かす貴重な機会だと思います。
それは、 いろいろな人の立場を考えるようになることや、
学校や家での 「自分」 とは異なった 「自分」 を発見する機会にもなるからです。
ぜひ一度、 ボランティア活動を体験することをみなさんにおすすめします。
「笑顔を絶やしてはだめですよ。 あなたの笑顔は私たちをハッピーにしてくれるのですからね」。
女性が私にこう言ってくれました。
私ができること、 私だけができることは一体何か―ボランティア活動を通して今それを見つけようとしているところです。