2000年8月号
エッセイ

購買or販売、 生協はどっち側から歩むのか


宮崎県民生協
副理事長 椎木 孝雄


「あなたが所属している生協は何をするところか?」 この素朴な問いに、 果たしてどれくらいの生協人が、 確信をもって答えることが出来るのだろうか? 「生協のあり方」 については、 いろんな論議がされているが、 「わが生協は何をするところか?」 を明確にせずに、 そのあり方だけを検討してもしかたがない気がしている。

「協同組合は、 共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、 共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために………自発的な組織である」 と定義されている。 ニーズに経済的も社会的も文化的もないと思う。 宮崎県民生協は、 組合員一人ひとりの購買に応える、 購買協同組合 (Purchase co-op) であり続けようと再確認した。 もともと組合員は、 幸せにくらしていくため、 その手段である商品を購入するために生協をつくった (に加入した) と思う。

そもそも、 「買う」 も 「売る」 も 「交換するコト」 として同一の 「コト」 であり、 それをどちら側から捉えたかにすぎない。 私が買うとき、 相手は売るのであり、 私が売るとき、 相手は買うのである。 だが、 「買う」 は商品を手に入れるコトを目的にし、 お金を手段とする。 「売る」 は商品を手段とし、 利益を実現することを目的とする。 生協が (組合員への) 購買対応を業として営むためには、 必要とされる商品や対応の在り方など、 組合員の生のくらしから、 その欲するところを読み取って対応する。 「買う」 は、 生のくらしから出発する。 販売を業として営むためには、 商品内容をよく知ってどんな人たちが買ってくれるかを読み取って、 買ってくれる人をさがす。 「売る」 は、 利益から出発する。 このように、 「買う」 のと 「売る」 のとでは、 仕事の出発・目的がまったく異なるのである。

福祉や介護、 環境、 健康ということにしても 「購買」 と言う切り口もあれば、 「販売」 という切り口もある。 我々が 「購買」 と言うとき、 ある分野を指すのではなく 「販売」 に対置した言葉としてつかう。

「生協は組合員が生活に必要なものを買うところだ」 と捉えたとき、 「生協の主体は組合員である」 ことが明確になる。 そして、 購買主体者である組合員が、 「買うコト」 を極めること、 生協がそれに対応しぬくことによって、 生協で取り扱う商品や生協、 ひいては社会まで変えうるはずだと思っている。 「商品や生協や社会にあわせて生きていけ」 というより、 生きるにふさわしいように、 「商品も生協も社会も変えていく」 ことの方が楽しいではないか。 地域の中で 「生協のようにやろうよ」 といわれるように、 購買協同組合 (Purchase co-op) として、 日々の実践に努力したいと思う。


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