2000年6月号
書評2

「コンビニ革命」 の裏で何が起こっているか


松本 崇
くらしと協同の研究所事務局、
立命館大学政策科学部学生


「コンビニの光と影」
本間重紀編
花伝社 1999年8月


今、 コンビニエンスストア (以下、 コンビニ) 業界は空前の好業績にわいている。 これを象徴する出来事として先日、 小売業の売り上げトップの座がスーパー大手のダイエーからコンビニ大手のセブンイレブン・ジャパンに交代したということが報道された。 24時間営業、 POSシステムの活用による売れ筋商品の充実、 公共料金振り込み等の商品供給以外のサービス提供を実現することで、 手軽さや利便性の高さを売りにして、 若者を中心に利用客の大幅な開拓に成功した。 またその利便性の高さが注目され、 最近ではインターネットを利用したEC (電子商取引) ビジネスの大きな担い手としても活躍が期待されている。 このように言うことなしの繁栄を続けているように思えるコンビニであるが、 大きな問題点もその繁栄の裏で起こっている。 そのコンビニの 「影」 の部分に光を当てたのが本書である。
コンビニ店舗の大部分はコンビニ本社とフランチャイズ契約を結んだ、 独立した自営業者 (店主) が経営している。 フランチャイズ契約とは簡単に言えば、 店主がコンビニ本社ののれん (ブランド) を借りて、 自分自身で店を経営していくことであり、 本社と店主とは対等な条件の下で契約を行うことになっている。 だが、 この契約の中に大きな問題点があると本書は指摘する。 それらを列挙すると、 (1)本社が契約前の情報を独占することによる、 本社と店主との不平等、 (2)開店前に本社に多額の出資をするにもかかわらず、 店主側の経営権が大幅に制約されている、 (3)各店舗が独立しているにもかかわらず、 本社側が会計のすべてを握っている、 (4)契約後に解約する場合には、 多額の賠償金を本社側に支払わなくてはならないために途中解約が難しい、 そして(5)契約書やマニュアルが新規出店をする経営に素人の店主側には難解であり、 なおかつそれらは契約後は本社に保管されていて、 店主側が簡単には見られない、 などといったことが指摘されている。 これらの指摘を本書では、 法学者たちがコンビニ契約を 「消費者契約」 の一種として捉え直しての分析を試みている。 また、 過去に実際にコンビニやフランチャイズチェーンを経営していた人たちが自分自身の実例を述べており、 コンビニ経営の厳しい実状が初めて読む人にもわかりやすくなっている。
本書で指摘されているコンビニ契約の5つの問題点は、 コンビニ本社と店主という事業者同士の契約上のトラブルとして、 大々的に報道されることはあまりない。 だが店主といっても、 そのほとんどは脱サラして店を持とうとする人など、 経営には全くの素人が多い。 その人たちが何の経営的な教育を受けずに難解な契約書を基にした契約を行う際には、 消費者契約法での保護とまではいかないまでも、 それに準じた保護の必要性が本書を読むことで感じられる。



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