2000年4月号
視角
非常勤理事に期待すること
津村 明子
私は1959 (昭和34) 年から88年までNHKに、
その後10年間、 大阪府にいました。 98年からは大阪府生協連の会長になり、
ここから生協とのつきあいが始まりました。 ですから、
生協人と言うより外部に長くいた者の目から見た生協、
特に非常勤理事の女性たちが果たしている役割について考えてみます。
左には男性、 右には女性
ある生協の総代会へあいさつに行った時、 向かって左は男性ばかり、
右は女性ばかりで、 たいへん不思議に思いました。
これは何故ですかと聞くと、 右側は非常勤理事ですとのことです。
女性の非常勤理事はどういう役割を果たしているのか考えました。
例えばどれくらいの頻度で生協の事務所にいて、
その地域で活動して、 その活動が生協にとってどういうウェートがあるのでしょう。
もしも非常勤理事の仕事が全部なくなった場合、
どうなるのでしょう。 よく、 非常勤理事はお飾りなのかと自分たちでも言っていますが、
ほんとうはお飾りで、 組合員代表だから一応敬意を表さないといけないのでそうしているのか、
それとも、 その方々の仕事、 運動が大いに役立っているのでしょうか。
専門職として
もし、 生協にとって、 非常勤理事がなくてはならない存在なら、
工夫の仕方はいっぱいあります。 非常勤理事をどのように組み込んでいくことができるかが、
生協にとっての分かれ道です。 例えば、 専門職制度などができないでしょうか。
広報や宣伝、 営業や商品開発、 ちょとした組合員からの相談、
経営担当など、 考えたらきりがないほどあります。
その仕事を専門職として位置づけ、 男性と一緒に仕事をしていくのです。
せっかく有能な女性がいっぱいいるのに、 その人たちを活用しないという方法はないと思います。
女性理事も初めから経営担当などできないと決めつけないで、
経営やマネジメントの研修をもっとすべきです。
試験制度などもして、 その方面に入りたいという人がいれば、
その道をつくるなど、 必要な能力アップのために生協は責任を持ってやっていくべきです。
今生協のリストラが課題だと言われていますが、
ほんとうにリストラができるほどたくさんの職員がいるのか疑問です。
関西地連のジェンダー問題懇話会で現場の方からお話をお聞きすると、
無駄な職員がいるとは思えません。 でも、 正社員をパート職員に変えていくとか、
アウトソーシングするとか、 派遣の人を入れるとか、
あまり良いことはないのですが、 普通の民間会社なら仕方がないかもしれませんが、
生協がそんなことをして良いのでしょうか。 その前にできることがあるように思います。
女性の非常勤理事は良く考えて意見表明しないといけません。
自分たちの力で
私がNHKに入ったときは、 女性は男性と同じ資格で採用されましたが、
当時の大阪支局には200人のディレクターなどの放送職がいて、
そのうち同期の女性は5人しかいませんでした。
それまでは、 結婚しても働き続ける女性はいませんでした。
先輩たちはみなシングルです。 結婚していると、
まだ居座っているとか、 周りの人に迷惑を掛けているとか、
子供を作って良いの?とか言われた時代です。
でも、 そのころの私たちは平気でした。 NHKにある古い部分を全部洗い出して、
自分たちで解決しようと先輩も入れて全部で10人くらいで運動を始めました。
これは労働組合運動でもなく、 職場で私たち自身が言い出しました。
例えば、 扶養家族手当の改正を求める運動です。
当時私の夫は大学院生で無職だったので扶養家族に入れようとしたら、
女性には手当がつきませんと言われました。 夫を扶養することは無職でも女性だからできなかったのです。
また、 親を扶養できるのは長男だけでした。 長男以外にも親を扶養している人はいっぱいいました。
これはおかしいと、 運動を開始し、 実質扶養制度を勝ち取るまでに7年かかりました。
このような運動を自分たち自身で起こして、 制度を変えていったのです。
女性の進出が生協や社会を変える
ある生協の合併式での話ですが、 そこは親切な個配をしていて事業的にものびています。
拡大至上主義をとらず、 無理しない程度でのびていこうとしているのが成功している理由です。
しかも、 配達はワーカーズコレクティブで、 理事長は女性です。
そこに産直の生産者の方もお見えになっていて、
こうおっしゃっていました。 「ここの生協は出発の際には女性が誰もいませんでした。
どうしていないのと聞いたら、 女は足手まといになって、
ちっとも働かないから女は要らない、 と当時の男性の人たちが言っていました。
でも今は、 女性でもっているのですね」。
どんどん女性が生協にも社会にも出ていくべきだと思っています。
生協には女性がたくさんいて人材は豊富です。
くらしや子育てなど身近に相談できる人、 カウンセラーの役割なども期待されています。
それを先輩の女性たちがやっていくことが大事です。
今のくらしは複雑になってきていますので、 生活をリードする指南役が必要です。
そのような意味の専門家は生協だけでなく、 社会が期待しています。
生協内だけでなく外に出ること、 華やかに自分の能力を外に出していただきたいと思います。
つむら あきこ
大阪府生活協同組合連合会会長理事