2000年4月号
人モノ地域2

ロバアト・オウエン協会、
震災後初の関西講演会


ロバアト・オウエン協会関西新春講演会プログラム
2000年1月15日 関西大学千里山キャンパス
講演会 (関西大学100周年記念会館ホール)
講演1 2000年のロバアト・オウエン
ロバアト・オウエン協会会長 都築 忠七
講演2 「コープぎふ」 の実践と今後の展望
~笑顔あふれる協同のあるくらしをめざして
生活協同組合コープぎふ専務理事 川崎 直巳
講演3 21世紀における協同組合運動 ~その思想と実践
明治大学教授 中川 雄一郎
懇親会 (新関西大学会館・関大生協 「BON PLAT」)


心配されたいわゆる2000年問題も無事にクリアした1月15日、 大阪・千里山の関西大学100周年記念会館にて 「ロバアト・オウエン協会関西新春講演会」 が開催された。 しばしば生協運動の精神的父とも呼ばれるオウエンを研究する世界でも唯一の団体として、 一昨年創立40年を迎えたロバアト・オウエン協会であるが、 西日本での講演会の開催は震災以後諸般の事情で途絶えており、 実に久しぶりのことである。
もともとこのオウエン協会は、 1958年秋、 関西学院大学で産声を上げた関西生まれの協会である。 事務局が東京に設置されて以後も、 堀経夫初代会長や久保芳和創立会員をはじめとする関西在住の研究者、 そしてコープこうべや兵庫県生活協同組合連合会など協同組合組織とその関係者が協会の発展に多大な貢献をされてきたことは、 一昨年まとめられた 『ロバアト・オウエン協会40年の歩み』 に詳しい。 生協組織に甚大な被害をもたらした阪神・淡路大震災は、 協会関西支部の活動にも打撃を与えたが、 21世紀を目前にして、 その再興を図るべく企画されたのが、 この新春講演会であった。
久しぶりの関西地区での集会ということもあって、 今回の講演会には東京より都築忠七会長と中川雄一郎協会理事が講師として派遣された。 また特別に、 懸案の合併を果たして全国的にもこれからの発展が注目されるコープぎふの川崎直巳専務をお招きし、 講演をいただいたが、 これはこのオウエン協会が研究者と実践家との交流をその大きな目標のひとつとしているという伝統に則ったものである。 3つの講演は、 協会が毎年刊行している 『ロバアト・オウエン協会年報』 に今後掲載されることとなろうが、 およそ60名の参加者は、 都築会長の講演 「2000年のロバアト・オウエン」 からは、 いまあらためて思想家オウエンを振り返る意義を、 中川理事の講演 「21世紀における協同組合運動」 からは、 オウエンの思想を受け継ぐ新時代の協同組合運動のあたらしい理念を、 そして川崎専務の講演 「 『コープぎふ』 の実践と今後の展望」 からは、 その実践としての生協運動の奮闘ぶりと可能性とを、 皆それぞれ感じとったに違いない。


オウエンといえば150年も前の外国の思想家であり、 他の歴史・思想関係の学会であれば、 大学関係者以外の出席は稀であろう。 しかし今回の講演会は、 講師も聴衆もバラエティーに富む、 オウエン協会ならではの講演会とすることができた。 岐阜から遠路はるばる、 コンピュータとプロジェクターによるプレゼンテーションの準備までして駆けつけていただいた、 川崎専務はじめコープぎふの方々、 そして新年のなにかと慌ただしい時期にご協力いただいた京阪神各生協関係者のご支援の賜物である。 日本生協連関西地連には、 講演会の後援をしていただいた。
オウエン協会は、 会員100名ばかりのこじんまりとしたサロンにすぎないが、 『ロバアト・オウエン論集』 (家の光協会、 1971年) や 『ロバアト・オウエンと協同組合運動』 (家の光協会、 1986年)、 そして Robert Owen and the World of Co-operationHokusen-sha1992 など論文集や前述の年報等の各種刊行物、 あるいは研究集会・講演会を企画、 「ロバアト・オウエンを中心とする協同主義を研究し、 協同組合その他同好の士と協力して協同思想の普及を図る」 (会則より) べく活動を続けている。 これまで活動は主として東京を中心に展開してきたが、 協同組合・生協運動がもっとも盛んともいえる (そして協会誕生の地でもある) 西日本地区においても、 今後活動を本格化することがもとめられよう。 オウエン協会にとっては、 関西支部を再建し、 関西での講演会・研究集会を定期開催すること (そしてさらに中四国、 九州、 東北、 北海道へと活動を真に全国的なものに広げること) が、 国際的な展開と並んで組織としての今後の課題であるし、 それはたとえば京阪神の生協組織からすれば、 ともに顔を揃えて 「協同」 の理念を考える、 貴重な連帯の場ともなり得るのではないだろうか。
オウエンの名を冠しているとはいえ、 オウエン協会は単なるオウエン信奉者の集まりではない。 3月にでたばかりの協会の年報24号の構成からも、 それは明らかであろう。


『ロバアト・オウエン協会年報』
24号 (2000年3月発行)
【巻頭言】
1999年都築 忠七
【研究集会報告】
産消協同型の農法展開 - 「プロシューマー」 の時代を迎えて
河野 直践
ドイツにおける 「赤と緑」 の実験とその挫折 - 思想史的位置づけのための試論小野  一
第三共和政下のフランス生産協同組合運動鈴木  岳
ニュータウンへの旅とオウエンのビデオ大谷 正夫
【論文】
E・V・ニールとJ・B・A・ゴダン
- 「協同労働」 と 「コミュニティ福祉」 中川 雄一郎
【海外情報】
ICAケベック大会が問いかけるもの栗本  昭
ニュー・ラナークの近況
白井  厚
【書評】
J・バーチャル 『国際協同組合運動 - モラル・エコノミーをめざして』 今井 義夫
白井堯子 『福沢諭吉と宣教師たち
- 知られざる明治期の日英関係』
高島 道枝・土方 直史
【新刊紹介】
E・ファーラー、 C・ストリークヴェルダ編 『資本主義に反対する消費者たち? - 欧米と日本の消費者協同組合1840-1990年』
杉本 貴志
【追悼】
板垣晋吉さん (1912~1999年) を偲ぶ高橋 芳郎


ロバアト・オウエン協会は、 これからのあたらしい 「協同」 のあり方を、 オウエンの思想と行動 (その正と負の両側面) を見ながら考えていこうという、 さまざまな考え、 さまざまな立場の人々が集まった研究会であり、 サロンでもある。 研究者のみならず、 生協、 農協、 その他各種協同組合や非営利組織の関係者の方々に、 協会の存在と活動へのご注目をお願いしたい。 協会への入会 (個人会員および団体会員) や、 協会出版物の入手等についてのお問い合わせは、 ロバアト・オウエン協会事務局 (生協総合研究所内、 TEL 03-5216-6025 FAX 03-5216-6030) まで。

(文責 杉本貴志 関西大学助教授)



前のページへ戻る