1999年12月号
エッセイ

「お父さん、 お父さん、 ビールいかが」

コープえひめ理事長
大川 耕三


愛媛県地方の秋祭りが一段落し、 すがすがしい秋晴れの下、 県内各地で生協まつりが開かれている。 いま流行のフリーマーケットあり、 うどんやカレーのコーナーは言うにおよばず、 昔なつかしの百円くじや 「命がけで」 機械を操作するパットライス、 ステージではビンゴゲームや田舎ならではの 「もちまき」 など多彩な催しがとりくまれている (不況の時代を反映してか、 最近、 この種の催し物 『生協まつり、 産直米の収穫祭』 に家族づれでの参加が多い)。
ものめずらしそうに会場を歩いていると、 コープ委員会のテントの中から 「お父さん、 お父さん、 ビールいかが」 と威勢のいい声が。 まさか自分のこととは思わず二歩三歩と歩いているともう一度 「お父さん、 お父さん、 ビールいかが」 の声。 思わずあたりをキョロキョロし、 声の方へ向かって 「僕のこと?」 と聞くと、 「そうよ、 あなたしかいないでしょう」 と笑いながら、 すでに片手にビールもう一方の手にから揚げをもってさしだしているではないか。 苦笑いしながらお代六百円を払いいただくと、 今度はコープ委員全員が 「毎度ありがとう~ございました」 の合唱。 何ともいえないすてきな笑顔にひかれ、 つい 「お疲れさん、 がんばってね」 のひとことが。
いま、 私たちコープえひめでは 「生協のため、 みんなのためになる」 生協活動から 「組合員一人ひとりのよりよい生活づくりのためにある」 生協活動へと活動の目的・方向を大きく転換してきています。 いわゆる 「やらされ感・委員のなり手がいない」 状態がつづく中で、 五~六年前から、 どうしたら組合員一人ひとりが自発的 (自然な形で) に生協活動に参加できる状態がつくれるか、 ということを模索してきました。 その一つの到達点が、 生協の存在意義の中心を 「組合員一人ひとりのよりよい生活づくりをすすめることにあり」 と再確認し、 生協活動も 「よりよい生活づくりのためにしたいことを楽しくすすめよう」 としてきました。
心なしか、 ここ一~二年組合員の声が大きくなり、 すてきな笑顔が広がってきたように感じるのは私一人だけでしょうか。 先日もある理事が 「組合員のみなさんが・・・したい、 ・・・しようと生き生きしてきたのは良いのだが、 今度、 コープ委員会でラブホテルの探検にいきたいと言ったらどうしよう」 の声。
組合員のみなさんの 「くったくのない」 発想や行動の後追いにならないように、 常に 「組合員一人ひとりの生活の場 (コミュニティ) にしっかり根づく」 ことの必要性を痛感しているこの頃です。
来週の生協まつりでも聞こえてくるかしら、 「お父さん、 お父さん、 ビールいかが」。



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