1999年10月号
視角
大阪いずみ市民生協問題はいかに解決しうるか
中久保 武雄
6月30日、 待ちに待った大阪いずみ市民生協懲戒解雇事件の
「仮処分決定」 が出た。 これを受け、 いずみ市民生協は内田・坂田氏の懲戒解雇を解雇時点にさかのぼって解き、
8月18日より2人の勤務が再開されているとのことである。
これまでのいずみ市民生協理事会の言動を知るにつけ事態はまだ予断を許さないが、
ひとまずこのことを喜びたいと思う。 ここでは、
現時点にたって、 前副理事長らの不祥事を核心とするこの問題がいかにして解決しうるのか、
同生協への期待をこめて一文をしたためることとする。
7月31日、 日生協との話し合いの席上、 いずみ市民生協の榎
彰徳理事長は 「内部告発について仮処分裁判の結果を真摯に受け止めたい」
と述べているが、 まさにすべての解決の糸口はここにある。
しかし現実は決してそのようには進展していないところに問題がある。
いずみ市民生協は7月6日、 理事会名で 「2名の職員の懲戒解雇について」
という文書を発表した。 この文書において、 今回の裁判の決定についてはいくつかの点で
「承服できない内容を含んでいる」 が、 「いたずらに過去の問題に拘泥することなく、
人と人との結合を基礎とする協同組合原則に則った団結を優先するために、
2名の懲戒解雇を撤回することに決定した」 とし、
また 「理事会はこの問題を含め、 過去のいきがかりを捨てて、
2名の職員が協同組合原則の立場に復帰することを希望するものです」
と述べている。 これでは、 決定を受け止めたことにはならず、
したがって解決に至るとは思えない。
いずみ市民生協が 「内部告発に対する報復を主たる目的として、
おざなりな事実調査しか行わないままこれ (懲戒解雇処分)
を行い」 (決定114ページ)、 地位保全の仮処分の訴えがなされ、
2年間にわたって裁判が争われた結果、 いずみ側が全面敗訴したのである。
つまり、 すべての責はいずみ市民生協の側にあるのである。
いずみ理事会は 「過去の問題に拘泥し」 てもらわなければ困るし、
内田・坂田氏は簡単には 「過去のいきがかりを捨て」
られないのである。 決定を 「真摯に受け止める」
ならば、 1997年6月10日の懲戒解雇時点にさかのぼって、
自ら何故こうした間違った処分をしたのかの総括をおこない、
それを内外に公表しかつ当事者に謝罪すべきである。
あわせて、 2名を罪人・悪人扱いしてきたことに対して名誉回復措置を講じるべきである。
さらに、 正しい解決に導いた2名の裁判闘争に敬意を表しその労に精神的にも金銭的にも報いるべきでさえある。
さらに、 係争中の梅溪裁判を決定の主旨にそってただちに解決すべきである。
いずみ市民生協は、 梅溪裁判の7月30日付け準備書面において、
内部告発は 「誇張」 であり 「歪曲」 であってそれに対する反論は名誉毀損にあたらないと論述し、
相変わらず仮処分裁判と同じ主張を繰り返している。
このように仮処分決定を受けいれるといいながら、
仮処分裁判と同じ論理で梅溪裁判を維持し論理矛盾に陥っているのである。
決定を受け止めるのであれば、 この裁判においてただちに梅溪氏の要求にそった和解に着手すべきである。
ついでながら、 いずみ市民生協における顧問弁護士や顧問会計士の役割の異常さについて一言述べたい。
とりわけ異常さがめだったのは、 7月12日の緊急職員全体会議での顧問弁護士の発言である。
聞くところによると、 この中で顧問弁護士は裁判の核心である
「内部告発の正当性」 についての論述は一切せず、
解雇撤回は外からの支援の根拠をなくすためだという戦術を披露し、
あげくのはては 「最近の裁判所は双方からフロッピーを借り省エネをやるのだが、
フロッピーを消し忘れたのではないか」 と裁判所に対する冒涜とも思えることまで言っている。
ここにいたって、 顧問弁護士の専門家としての役割、
知識人としての資格は一体どうなっているのかと疑いたくなる。
私ども私人や私企業にとっての専門家とは、 私どもが目先の利害得失に目を奪われ先を見失っているときに、
憲法や法令あるいは社会正義の視点から全体観をさし示してくれる人々のことである。
ところが先の論旨によると顧問弁護士は自らの使命を忘れて当該者のなかにのめり込み、
戦術を競って、 社会に対して害毒を流しているのである。
生協がこうした専門家と契約をかわしているなど通常では考えられないことである。
最後に、 いずみ市民生協は先の通常総代会の理事会特別報告
「"いずみ"の前進に向けて」 において協同組合のアイデンティティに関する声明を引用して以下のように述べている。
「地域社会と生協の仲間に対し、 生協運動の基本である誠実・公開・社会的責任、
そして他への配慮という倫理的価値を信条として対応します。
また、 自己責任、 民主主義、 公平、 連帯の価値を重んじ、
相互に尊重し合い、 相互に学び合う姿勢を貫きます」。
いずみ市民生協が真にこの《価値》にそった生協への再生を願うなら、
同生協が2人の職員の懲戒解雇にいたる背景や全国の生協に対する不誠実な態度など、
およそ《価値》に違背するすべての行動と別れをつげ、
そのことを内外に宣言すること。 このことによってのみ全国の生協の仲間に復帰できると思うのである。
なかくぼ たけお
ちばコープ理事長補佐
(「梅渓・坂田・内田さんの人権と生活を守る全国連絡会」
世話人、 「生協の健全な発展を願い、 3人を守る全国の会」
事務局)