1999年10月号
人モノ地域2
5万人の願いの結晶
「あすなら苑」 開設 ならコープ
9月1日開設
ならコープが設立した社会福祉法人協同福祉会の特別養護老人ホーム
「あすなら苑」 (奈良県大和郡山市) が9月1日から事業を開始した。
この 「あすなら苑」 は、 5年の月日をかけて学習活動と募金活動を行い、
組合員・職員・取引先業者が一体となってつくられたもので、
ならコープの生協運動の大きな成果といえる。
総事業費12億5200万円。 その内3億7000万円を5万人を超える人たちからの募金活動で集めた。
「あすなら苑」 とは 「明日のならの福祉をみんなで考える施設」
という考えから名付けられた。
「普通のくらし」 にこだわって
「あすなら苑」 は、 近鉄橿原線の平端駅かファミリー公園駅から歩いて10分程度と交通の便はかなりよい。
これは構想当初から 「山奥ではなく、 家族がいつでも来られるような場所を」
と 「家族とのふれあい」 にこだわってこの場所を選んだ。
規模は、 敷地面積4960㎡、 3階建てで延べ床面積は3508㎡になる。
特別養護老人ホーム50人、 ショートステイ20人、
デイサービスのB型 (痴呆のない人) 15人、 E型
(痴呆のある人) 8人、 老人介護支援センターとなっている。
9月1日から毎週5人ずつ入居が始まり、 今年の12月で全てのサービスが行われる予定である。
設計にあたっては図面の段階から 「普通のくらし」
にこだわって、 組合員が積極的にアイディアや要望を出した。
例えば4人部屋の窓側でない人たちのために天窓を設置したり、
「白一色みたいな冷たい感じのするカーテンはやめよう」
と花柄のカーテンをつけるなど、 様々な工夫がされている。
部屋も○丁目△番地と呼んでいて、 入居者が普通の家のような表札を出している。
この 「丁目」 は、 1丁目が基本的な入居部屋になっていて、
2丁目がショートステイ、 3丁目に痴呆症状の人が入居することになっている。
施設の全てがフローリングで、 1階が居室、
老人介護支援センター、 畳スペースもあるデイサービスルーム、
そして事務所となっている。 また、 ロビーには喫茶コーナーが設けられていて、
ならコープの組合員が関わっている。 2階が居室、
3階には150人収容可能なあすならホールと2つの会議室、
ボランティアセンターを設けており、 近隣の住民も利用できるようになっている。
浴場は1階に一般浴槽と個人浴槽、 座ったまま入浴できる機械が2基と寝たまま入浴できる機械がある。
2階にも座ったままで入浴できる機械と個人浴室がある。
脱衣室は広くとられていて、 その横には入浴待ちの人がくつろげるように待合室もある。
その他には、 入居者が自分で利用できるキッチンや洗濯機などが設置されていたり、
各丁目ごとに談話室が設けられている。
人とのふれあいを大切に
「あすなら苑」 は多くの組合員からの募金によってできた施設である。
その組合員から 「ハードよりソフト」 「うつわより中身」
といった今後への期待の言葉が寄せられている。
「あすなら苑」 の基本理念として 『①利用者
(入居者) に対して、 介助・介護や相談に応じるなどのサービスがスムーズにできるよう努力します。
②利用者 (入居者) のみなさんができるだけ
「普通の生活」 ができるように、 安全と安心を心がけて働きます。
③「人間の生活は日常の雑事のくりかえし」 なので、
利用者 (入居者) の方々がそれらをとどこおりなく維持できるようにすることが私たちの使命だと考えます』
といった職員が具体的にめざす3点を掲げている。
心の安心が保てるように、 人々・家族・職員とのふれあいを大切にしていくことをめざしている。
現在、 ならコープと協力して入居者の要望にあわせたボランティアを募集している。
仲宗根迪子さん (ならコープ副理事長) は 「洗濯物たたみや夕食介助といった仕事にたいするボランティアでなく、
お年寄り一人ひとりに数名のボランティアが担当して、
ふれあいを大切にしていきたい」 と話している。
今後の実践に期待したい。