1998年12月号
人モノ地域2

地域にねざした生協をめざして
 はた織りのまち・丹後


当研究所が毎年開催してきた 「日本海地域のくらしと生協運動の課題」 と題する地域シンポジウムは、 今年は丹後シンポウムとして、 11月28日に京都府中郡大宮町にて開催する。 京都生協丹後支部支部長下田弘幸さん、 生協しまね常務理事大木隆之さん、 七尾生協専務理事稲元順也さんの報告と、 コープこうべ但馬事務所統括部長本村三郎さん、 大宮町常吉村村営百貨店専務広野公昭さんのコメントが予定されている。 「地域性・協同の力を活かしたくらし方とは」 と題する田中恒子さん (大阪教育大学教授・くらしと協同の研究所研究委員) のオープン講座もふくめて、 組合員の高就労率や職場班への対応など組合員の願いに生協がどう応えているか、 地域社会の変貌のなかで求められるくらしの協同と生協運動の課題などが議論される。
ここでは京都生協丹後支部支部長下田弘幸さんが実施した組合員調査を紹介する。

自らの手で独自調査を実施
京都生協は新中期計画をつくるため、 「京都生協組合員のくらし・思いの調査」 を1997年4月に実施した。 その結果、 丹後支部組合員の姿が他支部と著しく異なっていることがわかった。
しかし、 京都生協調査はサンプリングが1/70であるため、 組合員数からして丹後支部のサンプル数は140、 回答は73であった。 もっと多くの組合員のくらしや思いを知りたいと考え、 注文書配布組合員を対象に8280枚配布し、 5041枚を回収するという大きな調査を、 自らの力で今年2月に実施した。 そこには共同購入配達職員の努力と組合員の協力があった。

長時間労働に従事する組合員
調査の結果、 いくつかの特徴が明確になった。 丹後支部の組合員はフルタイムの比率が高く、 長時間労働が主流である。 しかも自宅で働くことが多いのは、 地域の産業である農林漁業以外に、 「丹後ちりめん」 に従事しているためである。
昭和50年代以降、 和装産業は不振が続き、 年毎に低迷している。 食事をとるのも機の音を聞きながら、 朝から夜遅くまで織り続けてきた。 まちを歩くとどこからともなく機の音が聞こえる。 丹後ちりめん業を支えたのは、 女性の長時間労働である。 昔から 「専業主婦は遊んでいる」 といわれる地域性が、 調査データからもみえてくる。

丹後地域に特有の組合員の願い
丹後地域は漁場が近く新鮮な魚が安く手に入る。 農産物も豊富で自家用には事欠かない。 おすそ分けの関係もまだ生きている。 だから、 1人あたり利用高が低い。 しかし、 そういった状況を前提として、 組合員のくらしとのミスマッチを探らねばならない。
ところが、 配達時の荷受けに組合員がほとんどいない班や1~2人しかいない班が6割を越えていて、 担当者は組合員とのコミュニケーションに苦労している。 ここで今回の大規模な調査が生きてくると考えられる。
丹後の催事には京都市内にはない鯖缶を使ったそぼろ寿司がある。 これにすぐ対応できるように支部に鯖缶を常時在庫として置きたい。 これは一例だが、 そういう地域政策をもたないといけないと考えている。
まだまだ地域に求められる生協にはなりきれていないと思うが、 今回の調査を活かして、 実践していきたい。



前のページへ戻る