1998年12月号
エッセイ
実印の重みと連帯保証
--法律家の立場から二十年の重み
こうち生協理事長 村上 朝満
最近は日本国も東京都も大阪府も赤字で、 金融界も企業も破産寸前の状態だといわれております。
お金はありあまっているといわれ、 オカシナ国にわれわれは住んでいるわけです。
それはそれとして、 資金繰りや倒産といいますと
「保証」 それも 「連帯保証」 のために 「印を押したばっかりに夜逃げをした」
話を聞くことがあります。
法律的に 「連帯保証」 をした場合、 催告の抗弁権や検察の抗弁権がありません。
つまり契約をした条件どおり有無をいわさず債務保証をしなければなりません。
連帯保証人は自己のすべての財産をかけて責任
(支払い) を負わなければならないのです。 複数の連帯保証人がいる場合、
債権者としては任意の一人に分割でも全額でも、
自由に債務請求ができます。
こうち生協が発展してきたなかで、 一つひとつの施設が増えていきました。
共同購入型生協として発足し、 主な支所、 商品センターを地主につくっていただき、
生協が十年、 十五年単位で賃借して、 宮本専務と私が個人としてそれぞれ
「連帯保証」 をしています。 したがって、 施設が一つ増えるたびに私の肩には億単位の責任がずしんずしんと乗ってきたのです。
こういうことは私の妻や子には話せません。 ただ、
こうち生協のかぎりなき発展を文字どおり 「心から祈念」
し、 宮本専務という機関車とともに 「鯨の泳ぐ太平洋にむかって突っ走る」
覚悟をしています。
もしこうち生協が左前になったら、 法的には全面的な金銭の支援なきかぎりは、
自己破産以外にとる道はありません。 当該施設の賃借契約満了まで、
実質上無限責任を負ったのと同じになるのです。
現在室戸岬から足摺岬まで東西約二五〇キロをカバーしているこうち生協にとっては、
コスト面の根本的な工夫がなされなければなりません。
量販店が集中する高知市とその近郊に、 人々の約半数が住んでいます。
八〇万人の県下の人口が近い将来六〇万人に激減し、
しかも若者の流出が激しい過疎地・お年寄りの国での
「生協のありかた、 運営の仕方」 は、 文字どおり高知からなのです。
理事はもとより生協職員は組合員と共に、 (有料)
ボランティア的精神で肩をよせあい手をとりあって経営努力し、
まさに 「共生」 的感性を自ら養成し、 逃げることなくお互いに努力する必要が生まれてくるでしょう。
そういう責任があると思います。
高知には 「自由は土佐の山間より」 という言葉がありますが、
私たちにとって自由とは、 発言・行動できることであり、
責任とは損失のためにはもてる有形無形の全ての財産を擲なげうつことであると、
認識しなければならないのです。 私は、 スクナクトモ、
そう思っています。