1998年8月号
人モノ地域


開かれた研究所づくり
新しい芽を探り、 実践的提言を

井上英之新所長は語る


いそがれる安定的基盤の確立
先日の第6回総会で、 木原正雄前理事長がご高齢ということで、 野村秀和理事長になり、 私が所長という大任を受けることになった。
研究所の基盤としての協同組合、 生協陣営は根本的に経営の危機と信頼の危機に直面している。 どうすれば危機をのりきっていけるか、 そこに研究所の存在意義が明確にある。 全国にいろいろな研究所があるが、 内在的、 外在的に危機を意識してつくられたのは当研究所だけだと思う。 その点で、 いっそう出番ができたとは思うが、 ただそれが安定的、 確実にできるかというと必ずしもそうではない。 この5年間、 年々財政的には厳しくなり、 今後なおいっそう厳しくなることが予想され、 そのなかでも確実に前進する安定的な基盤をどうつくるかが、 あらためて問われている。 研究所では何ができて、 何ができていないのかを考え、 運営しなければならない。

研究所の到達点と弱点
生協陣営は一見して発展しているようにみえるが、 実はたいへんな危機であり、 転換期だという意識があり、 コ-プこうべに関する本を出版してきたが、 「なぜ今、 コープこうべなのか」 という点で情報の発信力が必ずしも充分ではなかった。 また、 研究所の前身の調査資料室時代に関わってきた研究者が、 設立時から中心的な役割を果たしてきたため、 結果として一部のメンバーの請け負いにならざるを得ず、 みんなに開かれ、 いろんな人が関わるような研究所になれたかというと、 そうではない。 京都という土地柄、 多くの大学がある。 ここで、 実践と理論を結合させた新しいタイプの研究者を育て、 西日本全体に派遣していくことは大事なことだ。 この点もまだ不充分である。
この5年間、 研究所全体としての発信力は強めてきたが、 研究所の値打ち、 蓄積、 方法論をきたえ、 多くの人に参加の場をつくり、 開かれた研究所になれたかというとそうでないし、 人材育成などが全般にわたって成功しているわけでもない。

当面する課題
今一番大切なのは、 生協、 協同組合が経営危機、 信頼危機のなかでどういう状況にあり、 どんな必死の模索をしているか、 模索のなかに育っている新しい芽は何か、 を見つめ続けないといけないし、 発信しないといけない。
そして、 研究と実践・運動の溝を埋めていくことも大切である。 もう少し実践的課題を整理し、 実践家も関わることができる提言が必要ではないか。 生協が経営・信頼の危機のなかで、 何を残し、 何を切りすて、 どんなリストラをすればいいのかなどは、 実践的な課題である。
また、 公的介護保険制度との関係で国や自治体は生協に介護保険の担い手をつくってくれるのか、 特養をつくってくれるのか、 そういう大きな期待をしている。 しかし、 経営危機のなかでは自ずと限定せざるをえない。 その時、 生協の社会的位置を明確にし、 生協にとってプラスになり、 これなら生協陣営でもできるということにターゲットを絞り、 現場の人や実践家も加わり、 シャープな提言をまとめていかねばならない。 このことはここ1、 2年以内にできないといけないと思う。
研究所では今、 次なる研究所づくりの第Ⅱ期を意識的に開始しないといけない時期にきている。 女性理事の研修や各地域の研究所づくり、 『協う』 の改善などいろいろな課題が残されている。 会員のみなさんのご協力をお願いしたい。




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