『協う』2010年4月号 特集1

生協における買い物支援の取り組みについて

青竹 豊(日本生活協同組合連合会 渉外広報本部長)

はじめに
高齢化の進展、流通事情をはじめとする地域社会の急速な変化の中、「買い物難民」「フードデザート」などの言葉が関心を集めている。
内閣府の調査によれば、日常生活における「不便」として「日常の買い物に不便」を感じている高齢者が大幅に増加し、他項目を引き離している。

買い物は、食生活を支えるライフラインでもあり、その買い物の困難さは、①地域と②世代・人で分けると整理しやすい。過疎地における高齢者というように、困難さが重複するところに、社会問題としての重大性があると言えよう。

本稿では、生協の事業と活動について、買い物支援という点から概要を紹介する。なお、各事例についての最新状況は、各生協ホームページで確認いただきたい。

宅配における買い物支援
  生協の宅配事業は、食料品を中心に日常生活物資を幅広く取り扱い、各都道府県のほぼ全域に対してサービス提供を行なっている点に特長がある。
そのため、中山間地域・過疎地・離島など、日常生活物資の購入先が少ない地域で住民生活を支えるなど、買い物支援で一定の役割を果たしている。
  高齢者・障がい者・子育て家庭・交通弱者など、買い物での外出に困難を抱える方にとって、宅配は「便利さ」で支えになっている(下表参照)。
  多くの生協では、こうしたご家庭に対して個配配達料の減額などを行なっている。

(1)中山間地域、離島への配達事例
岐阜県のコープぎふの取り組みは、後掲のレポートで紹介されている。「ジョイントサポートシステム」という組合員の配達協力による配送効率化なども、生協独自の特長と言えよう。

<わかやま市民生協>
  和歌山県は中山間地域が多いが、県内全域に配送している。K村では、世帯数280のうち、組合員数は21名(2005年度末)。村内に生活物資を購入できるところがなく、生協の個別配送が重宝されている。配送センターから週一回片道約1.5時間かけて配送している。

<鳥取県生協>
  N町では、2009年3月、JAの3店舗が撤退した。同町多里地区では生鮮食品を扱う店がなくなり、とくに高齢者の買い物が困難になった。町や自治会からの働きかけで16世帯が鳥取県生協に加入し、宅配を利用することになった。(読売新聞2009年6月11日付け参照)

<コープかごしま>
  コープかごしまでは、住民のいる県内25の離島全てで配送を実施しており、重要なライフラインを担っている。1985年の開始当初は月1回配送であったが、現在は週1回配達している。
  北海道・新潟・東京・沖縄をはじめ、離島配送に取り組んでいる生協は多い。

(2)お弁当宅配
最近、弁当宅配に取り組む生協が拡大しつつある。高齢者が中心であるが、単身者や子育て家庭等での利用もあり、コープやまぐちのほか、生協ひろしま、ならコープ、大阪いずみ市民生協などでも取り組みつつある。日経MJ2010.1/27付)

(3)その他の支援
さいたまコープの「地域ステーション」では、仕事などの都合で生協からの配達品を受け取れない組合員向けに、一般商店に協力いただき、宅配注文商品の受け取り場所を提供いただいている。43生協4,669箇所で「地域ステーション」が展開され、うち酒屋・クリーニング店等一般商店が3,963か所(2006年度実績)。

店舗における買い物支援
生協の店舗における買い物支援は、店舗アクセスや店内でのサポートのほか、移動店舗の取り組みもある。コープさっぽろなどでは、地域のくらしを支えるため、過疎地での出店に果敢にチャレンジしている。

(1)買い物バス
コープさっぽろは、2009年2月に出店した過疎地の赤平市内で、無料バスを走らせている。生協店舗だけでなく病院など公共施設も結ぶ交通手段として市内を循環するもので、1日2コース7往復運行している。他でもお買い物バスを運行する生協があるが、利用者が少ない場合もある。

(2)買い物代行サービス
さいたまコープでは、買物代行サービス「あったまる便」を実施している。店舗で購入した商品の配達のほか、電話で注文を受け付け当日中に配達する。現在9店舗で実施している(有料)。みやぎ生協(宮城県)の「ふれあい便」など、他の生協でも取り組んでいる。

(3)移動店舗
福井県民生協では、移動店舗「ハーツ便」を2009年10月に始めた。過疎地域や豪雪地帯などに住む高齢者や自動車を持たない人の支援として、月~土曜日にトラック3台を18ルートで運行する。生鮮食品、総菜類、日配品、冷凍食品など、生協店舗取扱商品からピックアップした約600品目が購入できる。1か所当り7人以上のグループをつくっていただき、週1000人ほどが利用している。

くらしの助け合い活動
全国の生協では、組合員同士の家事援助である「くらしの助け合い活動」に、1980年代から取り組んでいる。この活動は、高齢者、障がい者、子育て・病気・怪我でお困りの組合員に、お買い物代行、外出同行(買い物、通院、散歩)、家事、話し相手、お食事・配食などを、組合員中心に行うものである。65生協、2万8000人が参加、活動時間は121万時間になる(2008年度)。

今後の課題
今後の課題として考えられる点は、以下のとおりである。
1つは、コスト等の削減努力である。過疎地など買い物困難な地域に展開すればするほど、配送コストを下げ効率を高めることが必要になる。班・グループにまとまって生協を利用いただくことや、配送面で組合員の協力を得る工夫も重要であろう。過疎地や人口減少地域の店舗については、さらに事業力量の抜本的強化が不可欠である。
2つは、国や地域社会の協力を得ることである。生協の宅配について行政や自治会など住民組織のご協力を得て周知いただくほか、資金的支援なども考えられよう。
2007年に成立した改正生協法は、「山間僻地・離島等での物資提供」の員外利用を認めた。これは、そうした地域におけるインフラ形成を生協に期待したものであろう。こうした期待を受け止め社会的役割の発揮に努力していきたい。