『協う』2009年12月号 特集1

Ⅰ児童・生徒・学生に生協はどう伝えられているのか?

次代を担う子どもたちに生協を知ってもらいたい
-ならコープの取り組み事例より-


廣瀬 佳代(「協う」編集委員 京都生協組合員)

 
次の時代を担う子どもたちに生協を知ってもらいたい―事業や活動をすすめるなかで、生協関係者なら誰もが感じていることを具体的にすすめているのが、ならコープのせいきょう子ども新聞、トラック添乗体験、子ども一日店長の取り組みである。


せいきょう子ども新聞「にじのはし」

  はじまりは1982年4月。子どもたちにも生協のことを知ってもらいたいという親の願いがきっかけで、職員が作っていた子ども向けの広報誌を子どもたちが記者として関わるようになった。当初は年4回、現在は3月、7月、12月の年3回発行し、今年の7月発行のものが102号になる。発行部数は11万部。共同購入の組合員に各1部と店舗で配布している。
  子ども記者は、小学3~6年生までの15人程度が登録し、実質の活動は常時7~8名だ。毎年、春号で「子ども記者をやってみたい人を募集します。年6回程度あつまって取材をしたり記事を書きます」という募集記事を出せば、募集枠はすぐ埋まるそうである。小学3年になるのを待って参加する子、親からぜひ参加させたいという意向で参加する子、きょうだいでの参加等さまざまだが、女子が多くなる傾向があるようだ。また、対象年齢は中学3年までなので、中学生になっても続けたいといって卒業する子も多いが、部活などで忙しく参加できないのが現状である。
  新聞はA3判4ページで、メイン、サブの記事、民話、料理(「君も名コックさん」)、催し等の告知、パズル、4コマまんが(公募)等で構成され、編集後記も全員の分が署名入りで掲載されている。記事の内容は子どもたちに希望を聞きながら決め、取材先はいろいろなネットワークの中から選ばれている。最近の号では動物写真家の宮崎学さん(野生動物から私たちへのメッセージ)、科学実験(水溶液の性質)、なら100年会館(コンサートの舞台裏に潜入)等がメインの記事になっている。また、最新の7月号の「インフルエンザについて勉強したよ」は、学習会に参加した子ども全員が1段落ずつ担当して記事を書き、職員がそれを尊重しつつ統一感を持たせて編集することで、読み手にとってとてもわかりやすい記事になっている。
  新聞の作成には、事務局の職員1名の他に組合員スタッフ2名が関わっている。組合員スタッフは、取材先とのコーディネートや、料理コーナーの準備等、幅広い知識と経験、そしてネットワーク力で、子ども新聞を支えている。
  子ども記者は、取材や編集を通して、学校や家庭以外で接する大人たちからさまざまなメッセージを受け取り、興味の幅を広げていっている。こうした経験が、子どもたちのこれからの糧となっていくだろう。


配達トラック添乗体験

  子どもの仕事体験として、共同購入の配達のトラックに添乗するという企画は、2003年に生駒支所が独自に始めたことがきっかけだ。2009年には4つの支所で実施している。夏休みの1日、午前中にトラックに添乗し、昼食後、午後はデザート作りや宿題を一緒にするなどの取り組みがされている。子どもの社会参加、子どもに生協のことを知ってもらいたいことはもちろんだが、生協が地域で役立ち、頼りになる存在であることを知ってもらうにはどうすればいいかという思いが、トラック添乗体験という企画に至った。
  今年、北部支所では、56名の応募があり、抽選の結果、28名が添乗体験をした。8月12日と18日の2日、1台に2名ずつ、延べ15台のトラックが子どもを乗せて配達に出た。「生協のトラックに乗ってみたい」という未知の体験への興味をきっかけに、生協が地域でどういうことをしているのかを知り、仕事をしている大人と関わることで、社会を知ることにつながっている。
  一方、子どもたちと直に接する職員にとっても、この取り組みはよい影響を及ぼしているようだ。子どもたちの期待に応えようと俄然はりきり、その反応を肌で感じることができる。また、子どもたちを乗せていることで、さらなる「安全運転」意識を高めることになると同時に、配達先での組合員との会話も広がり、あらたな気持ちで仕事に向き合うことにもつながっている。
  参加した子どもたちの感想では、「ありがとうと言ってもらって嬉しかった」ということが共通のキーワードになっている。他にも「名刺を作ってもらったのが嬉しい」等、人との関わりのなかで自分の存在を意識している姿がうかがえる。


コープサマースクール「子ども一日店長」

  店舗の仕事を体験する「子ども一日店長」の取り組みは、2001年に3店舗で始まり、2009年は全10店舗で10回開催し100人が参加している。リピーターも多く、2~3日で定員に達する店舗もある。ならコープが企画目的としていることは、小学生(3~6年)の夏休みの自由研究等のお手伝いすること、実践学習を通じてコープの「安心、安全、信頼」を体感することとその家族への波及効果、そしてキッズコンシュマーを育成することにある。
  プログラムは8時45分~12時15分の3時間30分の間に、温度チェック、果物の糖度測定、商品の陳列、発注、レジ、店内放送等など、実体験が中心となっている。人気はレジ体験と店内放送ということで、時代は変われども子どもたちの潜在的な興味は変わっていないようだ。店内放送で子どもの声が聞こえてくると、場がなごみ、ほっとする来店者も多い。また、バックヤードなど普段見られないところを見たり、売り場にある商品がどのようにできているのかを知れるのも新鮮な体験のようである。
  毎回10名ほどの子どもたちを受け入れる現場では、対応に一定の手間はかかるものの、継続して取り組んでいきたいという店長が多く、他部署より支援を得るなどの工夫もなされている。

 中学生の職業体験の教育カリキュラムとは違って、現場発信の直截の取り組みをしているのが、今回取材した、ならコープである。子どもたちはトラック添乗や一日店長等の体験を通して職員や組合員との関わりの中で、多くのことを感じるであろう。また、地域に生協があることの価値を知ってもらいたいという現場の発信は、職員にとっても自分たちの仕事はどう見られているのかを振り返る機会となる。子ども新聞の取り組みも含め、生協とそこにまつわる人たちのこうした双方向の関わりこそが、結果として「子どもたちへの教育」となり、社会への貢献となっているのではないだろうか。