『協う』2009年2月号 視角


生協法改正と組合員理事の役割
宮部 好広 (日本生活協同組合連合会 法規対策室長)


  2008年4月1日、改正生協法が施行されました。 今回の法改正は、食品の安全や地域コミュニティへの貢献など生協の社会的な役割に対する積極的な評価のもとで、現代日本における生協の規模や社会的ポジションにふさわしい法制度の整備を図ったものです。 その中の大きなテーマの1つに機関運営の整備があります。 機関運営の整備に関する法改正の内容は多岐にわたりますが、1つ1つの規定を細かく見る前に、改正生協法のもとでの機関運営の基本的な考え方について理解することが大切です。
  改正生協法のもとでの機関運営の特徴は、役員によるチェック&バランスを重視し、それを補完するものとして組合員の直接請求権や訴権を位置づけている点にあります。
  旧生協法には理事会に関する規定がなく、法律上の機関は総 (代) 会、理事、監事というシンプルな構成でした。 こうした機関構成により、重要な事項は基本的に総 (代) 会が決め、理事は各自が分担して業務を執行し、組合員である監事がこれをチェックするという運営スタイルが想定されていたわけです。 こうした運営スタイルは、法制定当時の標準であった町内会生協のような小規模組織には適していたでしょう。 しかし、その後の発展を通じた生協の組織・事業の大規模化と事業の高度化・多様化に加え、社会・経済の急激な変化の中で迅速・適正な経営判断や執行管理が重要になったことにより、法定の機関ではない理事会の果す役割が非常に大きくなりました。
  改正生協法は、生協の実際の姿に適合した機関運営の仕組みを法律上のルールとして定めることにより、法律と実態とのギャップを解消しました。 すなわち、総 (代) 会で定めた事業計画・予算を執行するにあたって、理事会が重要事項の決定と執行管理を行うことを明確にするとともに、監事の権限・独立性の強化によってチェック機能の充実を図ったのです。 これにより、名実ともに理事会が生協運営の要として位置づけられることになり、これを監査する監事の役割の重要性もまた明らかにされました。
  今後、理事会には、組合員の意思に沿いながら迅速・適正な経営判断と的確な執行管理を行うという役割が、いっそう求められることになります。 そうした中で、出資者・利用者である組合員の代表として理事会に参画する組合員理事の役割もまた、いっそう重要になっています。 いうまでもなく、生協は組合員の組織であり、生協の事業は組合員のくらしを支えるものでなければなりません。 そうした組織と事業のあり方を実現する上で、消費者・市民である組合員の視点から発信される組合員理事の意見は重要です。 最後に、改正生協法のもとでの理事会の体制や運営に関連して、実践的に重要な視点を3点ほど紹介しておきたいと思います。
  1点目は、理事会体制についてです。 組合員の代表である組合員理事、第三者的な立場から専門的な知見を活かして参画していただく有識者理事、経営を担う常勤の理事がバランス良く配されることが、理事会全体として求められる役割を発揮していく上で重要です。 現状、有識者理事はやや学識者に偏っている印象がありますが、経営経験者を含め、より多様な方々に参画していただくことが大切です。
  2点目は、理事会運営のあり方についてです。 理事会においては、各理事が持てる力を発揮して充実した討議をすることによって、最終的に適切な結論を得ることが期待されています。 特に高額の投資など生協の財産に大きな影響を及ぼす議案については、納得のいかない事柄があれば、有識者理事など他の理事の意見にも耳を傾けつつ、組合員の代表として納得できるまで問いただすことが大切です。
  3点目は、組合員理事の役割についてです。 これまで、組合員理事は地域の組合員活動のリーダーとしての仕事に多くの時間を割くのが通例でした。 しかし、理事会の一員として求められる役割が大きくなる中で、理事とは別に活動リーダーを置く、理事をサポートするサブリーダーを設けるなどの方法により、組合員理事の負担軽減を図る生協も増えています。 組合員理事の役割や地域の組合員活動のあり方について、この機会に改めて話し合うことも大切になっています。

(みやべ よしひろ)