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『協う』2009年2月号 特集2

特集
10年目を迎えた組合員理事トップセミナー

  生協と一般企業との違いは何だろうか? 組織や事業や経営について、 さまざまな相違を指摘することができるだろうが、 最大の違いは、 生協では利用者と経営者と出資者とが一体化している (「三位一体」 である) ということだろう。 生協は組合員のものであり、 その組合員が経営を監督し、 かつ、 自ら事業の利用者ともなる組織なのである。 そこで要となるのが、 実際に組合員を代表して業務の監督や執行にあたる人々、 組合員理事である。 組合員理事の能力をいかに高めるかを課題として、 本研究所が主催してきた 「組合員理事トップセミナー」 もついに10回目を迎えた。 その課題は達成されただろうか?

 

座談会「組合員理事トップセミナーのこれまでとこれからを考える」
杉本貴志/川口清史/立川百恵/小林智子/谷美代子/仲宗根迪子/永野麻弥子


セミナーのはじまったわけは?


【杉本】きょうの座談会は、組合員理事トップセミナーのこれまでとこれからを語っていただこうという趣旨で企画しました。 いったいどうしてセミナーが開かれるようになったのでしょうか。

【立川】日本生協連が91年に女性評議会をつくったのですが、その前段で生協という組織について次のような議論がありました。
  日本の高度経済成長期は、専業主婦が最も多い時代でしたが、実際に生活を担ってみると、そこにはさまざまな歪みがある。 そこで、生活者の立場をもっと強いものにして、よりよい暮しをきちんと維持できるような社会をつくりたい、という願いで私たちは生協に結集したのです。
  ところが、生協をつくって活動している間に、「生協は本当に消費生活者の組織なのだろうか」 と疑問に思う場面が時々出てきました。 それは、「意思決定の場に生活の担い手である女性がいない」 ということを感じたからです。 1980年頃、日本生協連の総会では、400~500人のなかに女性は10人ぐらいしかいない。 その10人ぐらいが自主的にその後も何度か集まりを持って、提言書をつくり、会長宛てに提出しました。 それを受けてつくられた女性評議会は、女性の理事会に相当するものということで理事会とは別のものでした。
  92年にICAの東京大会が開かれたのですが、その頃、この研究所の集まりでも 「生協の意思決定の場への女性参画のあり方について」 ということで、私が全国のことを報告して、末川さんが京都の現状を報告しました。

【川口】その後、末川さんからお手紙をいただいて、「研究所で女性理事トップの研修の場をつくってくれないか」 という提案がありました。 当初は女性評議会が6年間で終わりましたので、その受け皿という問題意識があったように思います。 また、この研究所は設立当初から生協からはかなり自立した研究機関として 「生協に限らず広く、くらしや協同を考えよう。 それは研究者の主体性にかなり任せよう」 というスタンスで出発しました。 そのようなことで日生協理事会のシンクタンクの機能をもつ生協総研と当研究所では、当初から位置づけが違っていました。 結局、そういう研究所だからこそ、日生協の方針とは相対的に独立して、これからの生協の発展を考えた場合の女性トップの位置や役割の重要性を一緒に考えていこう、ということになったわけです。 研究者にとどまらずに組合員・理事・職員も含めた個人会員の自主的な研究や研修会を組織して、それを支援することが、いわば研究所のミッションのひとつでした。 ですから、末川さんの提案については 「研究所本来の設立目的に合うことですから、ぜひやりましょう」 ということで、お引き受けして、スタートしたのです。

【杉本】セミナーが始まる前の女性の理事長や副理事長などトップのみなさんはどんなことを考えておられたのか、セミナーが必要だというのはどういう状況だったのでしょうか。

【仲宗根】97年というのは、さっぽろ問題といずみ問題が発覚した時期です。 そのことは私自身、組合員理事の関わり方が問われたと思いました。 また、女性評議会で 「意思決定の場に女性を増やしましょう」 という流れの中で、各生協で女性の理事長・副理事長が輩出されていったけれども、それは女性の力を期待してのことなのか、それとも社会的にアピールするためのものなのか充分議論されたか疑問です。 もうひとつは、店舗展開が広がっていましたが、「チェーンストア理論によれば、店はシステムで動くものだから個店の独自性は5%だ」 という説明を受けて、「本当にそうなのか。 それを確かめる勉強もできない」 という欲求不満があったのです。

【谷】女性評議会は6年で終了し、日生協理事会に女性枠が設けられました。 一方で常任理事制度が新設されて理事会も毎月から3カ月に1回になり、理事会で何かをみんなで話し合って決めたという感じではなかったですね。

【小林】私が理事になったのが1993年。 その翌年、私の生協は13億の赤字を出しました。 生協の経営について自分があまりにも無知であったと実感しました。 それで同期の新任理事5、6人で監事さんや財務担当の職員に講師をお願いして、自主的な学習会を3~4回やった記憶があります。 私が理事としての責任を自覚した最初の出来事でした。 執行側も組合員理事自身も理事としての責任についての認識が不十分な時代であったと思います。

【立川】女性評議会で各単協に 「組合員理事の研修制度をお持ちですか」 と調査しましたが、実施しているところは少なかったように思います。

【永野】くらしと協同の研究所が体質に合うと思われたから、話を持ってこられたんですか。

【仲宗根】女性評議会の関西メンバーの交流が深まる中で問題意識が生まれました。 自由な雰囲気の中で学びや交流の場が欲しい、地元にある研究所の力を借りよう、と末川さんが依頼されました。

【杉本】研究所としてもこの種のセミナーは前例がなかったわけで、どうやってプログラムを組まれたのですか。

【仲宗根】私はその打ち合わせにずっと参加した記憶があるけれども、あらたまっての会議体ではなくて、なにかのついでに、「京都で開くのに、どなたをお招きしましょうか」 とか相談した記憶がありますね。

【立川】そういう集まりの後で、ヒアリングみたいな形で話し合ったかもしれませんね。

【仲宗根】はじめはずっと研究委員と一緒に話し合っていましたね。 「3回目は奈良で開催してはどうか」 ということで 「じゃ奈良は私が当番でやります」 となり、「もっと広げるためにはメンバーを増やそう」 ということで、「次は名古屋でやろう」 「その次は大阪でやろう」 というふうに打ち合わせのメンバーが増えていったように思います。

【川口】 「外の人の話を聴きたい」 とか、提案を出してもらい、みなさんには研究所の会員になっていただいて、研究所の事業として企画しました。

【谷】呼びかけ人という名称になったのは後ですが、「私たちが本当にやってほしいと望んでいるのはどんなことなのかな」 ということを、みんなで持ち寄った感じでしたね。  

【川口】それからは、「講義はやめて、ゼミにしよう」 とか、どんどん変わっていきました。 途中から日生協が非常勤理事研修をやり始めたこともあって、研究所の独自性を強めた企画に変えていったのです。 もうひとつは、当初から 「これは組合員個人の主体的な取り組でなのか、それとも生協が組織として位置づけて取り組むものなのか」 という問題意識もあって、自分たちで企画をするように変わっていったと思います。
変化してきたセミナー

【杉本】講義一辺倒から参加型への変化ですね。

【川口】最初は、理事長や副理事長に必要な勉強ということで経営の勉強からやりました。 しかし、やっていく中で 「組合員理事の役割は経営で常勤理事と張り合うことではなくて、コントロールができて、チェックしたらいい。 その時に、組合員出身のトップであることの意味は大きい」 という話になっていきました。 ただ、ジェンダーの視点と組合員感覚の視点は、日本の生協では組合員のほとんどが女性ですので一致していますが、当然、このことは理論的には違うし、アプローチも違ってくるはずですね。 研究所としては、なかなかジェンダー問題を受けとめきれないところがあって、企画にしても、「組合員が参画し、ガバナンスをする」 という点が中心になっていました。 当初は研究者のところで企画を練っていたように思いますが、だんだん 「そんなことではだめだ。 実際に自分たちでやってもらおう」 ということになって、何回目ぐらいか覚えていないけれども、少しずつ企画も女性理事トップの方々に移すようになりました。

【立川】4回目の名古屋ぐらいだと思います。

【谷】あの当時の女性理事たちは、「こうありたい」 「ここを知りたい」 という要求と思いをすごく持っていたように思います。 でも、その後、生協で理事の任期制が導入されてくると、そこで育った理事さんは 「具体的な活動の仕方も学びたいし、交流したい」 というぐらいで、最初の頃の要求からは少し変わってきたように思います。

【立川】任期制を採り入れたことは大きいですね。

【仲宗根】これまでのセミナー参加者数を振り返ってみると、最初は経営セミナーで、理事長・副理事長・常任理事など役付き理事が中心でした。 その後4回目から組合員理事まで広げたけれども、30人未満だった。 ところが、演習を入れ始めると、40人以上の参加で、キャンセル待ちという状況です。 また、セミナーの名称は、「経営トップセミナー」 から 「女性トップセミナー」 になって、今年から 「組合員理事トップセミナー」 に変えました。

【小林】私は副理事長になって初めてトップセミナーに参加しました。 皆さんトップばかりで大変緊張しましたが、先輩方とつながりができる喜びも感じました。 印象に残っているのは先生方の講義よりも、当時重要課題であった店舗事業に関する実践的な研修でした。

【永野】理事になって最初に案内をもらった時 「この時代になぜ 『女性』 って付くのかな」 と思いましたね。 お話を聴くとわかりますが、知らない人が参加しやすい名称は 「組合員」 じゃないかと思います。 名称が変わった途端、男性の組合員理事が一人参加したのはすごいなと思います。
これからめざすもの

【杉本】当初の性格から少し変わってきて、次は何をめざすべきなのか。 男性理事が参加してきたことで今までと違うものが求められると思います。 これからの 「トップセミナー」 は何をめざせばいいのでしょうか。

【立川】日生協は、以前は 車の両輪論で、「運動と事業が一緒にならないと、協同組合・生協はだめだ」 と言っていたのが、ある時期に 「事業と運動の一体論」 に換わりました。 それは、「運動を事業にしなければいけない。 運動が、事業という形で具体的に展開されなければいけない」 というような議論だったと思います。 その頃から 「生協運動」 という言葉はほとんどなくなっていって、「事業と組合員活動しかない」 という感じになっていました。 そうなると、組合員活動の分野について 「どういう予算を組んで、どういう組合員活動をこの地域で行えばいいのか」 ということが理事会の議題にならないといけないと思うのですが、それがほとんど提案されない。 組合員理事としては、その部分が生協の理事会で提案されて、議論され、きちんと執行されているのか、監視したり、立案したり、執行にあたっては自らどんどん進めたり、そういうことができるような力を持つことが求められてくると思います。

【永野】今回のセミナーでの二場先生のゼミで、「理事会では、組合員活動についてもっと議論しなければいけない」 と言われた時に、うちの生協ではどうかな?と疑問を持ちました。 ややもすれば 「常勤がそう言うから、そういうものなんだ」 と思ってしまいがちですが、このような場で、こういう先輩方と話して、「生協とはこういうものなんだよ」 と聴くことが大切だし、あらためてトップセミナーはすごく大事だなと思います。

【杉本】二場先生は今年、「事業と組合員活動の両輪ではなくて、事業と活動と社会的運動の3つが生協には必要だ」 とおっしゃいました。 そのうえで、「生協がある地区で農業生産者が困っていると相談を持ちかけられる。 これを理事会として、どう受けとめるべきか」 という具体例を出されて、模擬理事会で議論させました。

【川口】生協の理念から出発すると、神学論争になって、なかなか難しいところがあるんです。 大衆組織というか、多くの人が参加しているところで理念を持つことは大事だけれども、体系的な理念よりももっと大事だと思うのは、何ができるのかということです。 生協にはどんな社会的資源があって、こうすることによってどんな問題が解決できるのか、ということです。 社会問題もそうですが、いまの女性組合員さんや理事さんたちそれぞれの思いや、自分たちがやりたいことや、自分たちがどのようにこれからの人生を歩もうとしているのか、ということとマッチしたところで課題を出さないと、お説教になってしまいます。

【立川】 「生協はよそとは違うんだ」 と思っていたら、今度のギョーザ事件で、「生協って、よそと同じじゃないか」 ということになって、買うだけの消費者みたいになっていた組合員までも疑問を持ち始めていますね。 先生がおっしゃるように、「構成員が願っていることを実現していく」 ということでもいいのですが、要するに生協では構成員が主人公で、その構成員が何をやりたいと思っているのかが大切だ、ということだと思います。 いまの暮しではだめだと思って集まっているのですから、そこはやはり大事だと思います。

【川口】いまの暮しに対する批判はすごく大事ですね。 「どこが問題で、何を変えなければいけないのか」 ということでやるからこそ集まるのだから、単なる 「顧客」 という表現が最大の問題点です。 組合員がくらしの主体者として何をやろうとするのか、そこの出発点をもう一度はっきりさせないといけないと思います。
【仲宗根】組合員も組合員理事も、生協という資源で何かをつくりだせるのに、つくりだす苦労の経験と喜びを実感できにくくなっています。

【川口】その意味では、何ができるのかという情報をもっと知らないといけないし、研究所は、どういう新しいことができているか情報を提供しなければいけない。 島根の 「おたがいさま」 や長崎のララパーティなど、われわれはいろいろな実践を見つけて、持ち込んできたのですから、そんなことをもっとやらなければいけないと思います。

【谷】いま、組合員理事さんとはNPOの活動でよく会うので、彼女たちの関心がそちらの方に向いているのかな、と思ったりします。 もっと生協で力が発揮できるようにしたいですね。

【立川】地域社会のなかで生協が占めるポジションについていえば、組合員数は増えているのに生協の姿はだんだん小さくなっている、というように私には見えます。 しかも、「私の原点は生協でした」 という何年か前のリーダーたちが、その居場所としてNPOなどで活躍しているわけですね。 その意味では、生協やトップセミナーがそういう人材を育てるということでいいと思います。

【川口】そういう活動が再生産されているかどうかが問題ですね。
生協ガバナンスと組合員理事

【杉本】単なる理事研修ではなく、トップセミナーと名乗っている意味は、生協のなかでトップとして力を発揮する人材が育ってほしいというところにあるのだと思います。 そうだとすれば、今後の方向としては、課題を出して、自分たちで考えていくというやり方でしょうか。

【川口】私は 「ガバナンス」 というコンセプトがとても大事だと思っています。 マネジメントはマネジャーにまかせるけれども、マネジャーをコントロールする力をどう持つかということは、協同組合という組織のガバナンスの根本ですね。 それが抜けると協同組合でなくなるわけだから、事業にしても経営にしても、そこに社会的ミッションが仕込まれているかどうかをきちんと判断できて、もし仕込まれていなければ、なぜできないかを問題提起できる組合員理事にならなければいけない。 その力をどうつけるかということは、やはり依然として課題であると思います。

【仲宗根】3期6年という流れのなかで、いまおっしゃった役割を果たすために、どれだけ 「情報収集」 し 「判断材料」 を使いこなし 「経験の蓄積」 を生かすということを実現するには、自分の生協の範囲では非常に限られています。 その意味では、このセミナーは情報収集の場やチェックする感度を磨く場としての役割を果たしているし、また日常活動とは違う研究者と議論するなかで磨くことができている面も大きい。 でも、社会経験を持たない人たちがまだまだ多い組合員理事のなかでは、やはり演習は必要だと思います。
  またジェンダーでいうと、日本の生協は女性リーダーを育てたいと願っているのかということもあります。 まだまだ生活の主を女性が担っている訳ですから、生協が女性たちの組織である以上、そのリーダーを、組織として育てる義務があるし、その責任を各生協は果たしてほしいと思います。

【谷】今回のセミナーに参加した理事さんの話を聞いて感じたことですが、先生が話したことで 「自分の生協でなにができるのか」 と考えたりするきっかけづくりになっているようです。 そういう意味では、ふだん単協では話題にならないことも取り上げるとともに、例の演習のように、いろいろな問題を出しながら続けたらいいと思います。

【小林】私の生協では常任理事の必須研修と位置付けて参加しています。 生協法改正もあって、今、組合員理事さん達が組織のガバナンスや理事の責任をとても重く受け止めていることが、理事会での発言の中でも感じられます。 その理事会での議論をリードしているのが常任理事さん達だと思っています。 セミナーでの理論だけでなく実践を通じて学ぶという経験は大変有効だと感じています。

【杉本】研究所として今後は、ジェンダー問題も大事ですが、むしろ組合員理事の問題が中心だということになるのでしょうか。

【谷】いくら 「ジェンダー」 と言っても、参加者の問題意識から入らないとだめでしょうね。

【立川】 「本来、組合員理事はどうあるべきか」 という提起については、本当は日生協あたりできちんと提起されなければいけないと思うんです。

【仲宗根】生協法が改正され、それに基づいた機関運営の考え方が示されています。 今回、セミナーの名称も 「女性」 から 「組合員理事」 に変更したのもそのことが影響しています。

【立川】法律として、「こういうことですよ」 というのはあると思いますが、実際に役割として何を求めて、そのことがどのようになっているのか、その点は単協ごとにずいぶん違うだろうと思います。 それを変えようというのは、組合員理事の力ではなかなか難しいと思うし、与えられたポジションとしてやるという形になると思います。

【仲宗根】問題を複雑にしている背景としては、事業がどんどん連合化されているので、事業連合に入るかどうかの決定には組合員理事も参加するけれども、事業連合で動き出すと、それを組合員理事がどう判断するかは本当に難しいでしょうね。

【谷】そのようななかで悩んでいる組合員理事はけっこう多いと思うので、セミナーの感想文から考えてみてはどうだろうか。 また、組合員理事として悩んでいるど真ん中の人たちのなかで呼びかけ人を増やして、そういう人たちの問題意識を出し合い、話し合うのもいいのではないでしょうか。

【永野】最初は頼まれて、副理事長になっても、任期を果たすうちに、「もう失うものはない。 だから、ここで言いたいことを言って、自分の思いを遂げるんだ」 という自覚が芽生えていくのですが、セミナーはそのきっかけが生まれやすい。 同じ生協の仲間内だけではない、他生協の先輩方の思いなどをワーッと聞くと、ハッと気づく自分がいるんです。 ここで1年間、呼びかけ人をさせていただいて、「あぁ、そうなんだ。 ならば私は、こういうことをするために理事になったんじゃないか」 と少しずつわかるきっかけをもらえます。 ここに答えはないけれども、その意味では、トップセミナーはすごく大事だと思います。

【川口】われわれはそのためにやっているようなものです(笑)。

【永野】40人のなかの1人か2人がそんな経験をされるだけでも意味があるではないかと思います。

【立川】 「協同組合」 ですから、そういう人育てみたいなことは本当に大事ですよね。
期待すること

【杉本】最後に、トップセミナーで取り上げてほしいテーマも含めて、ひとことずつお願いします。

【立川】ここで学んだ人たちは、生協にとどまらず、いろいろな社会的活動に参加していると思います。 セミナー参加者のその後の活動を追跡調査してみることでここがどう役立ったのか再確認することも大事ではないかと思います。

【仲宗根】当初からセミナーに関わってきた私の次への伝言は、やっぱり人と人とのネットワークですね。 「育ち合う」 という言葉がありますが、私自身が、生協で受けた恩恵を次の世代に伝えることであり、自分の生協のなかでもそのことを思いながらやってきました。 ですから、このセミナーは 「伝え合い磨きあうネットワーク」 ということを大事にしてほしいと思います。  

【永野】私がここで得たものを、次の人も得てほしい。 私が本当にこだわるのは、肩書ではなくて、組合員理事のリーダーとして身につけなければいけない資質です。 それは自分で身につけなければいけないけれども、そのきっかけづくりになるようなセミナーを続けてほしいと思うし、自分の任期がある限りは続けたいと思っています。

【谷】組合員理事は、自分の持っている力をまだ知らないと思います。 それが掘り出せるような場所は、たとえば横のつながりでもあるし、ここの勉強でもある。 だから、単協では右にならえで 「平等」 がいいみたいだけど、ぜひとも違う可能性を見いだしてほしいし、このセミナーではそのきっかけをつくってほしいと思います。

【小林】10年を経過して、今回 「女性」 という名称をはずしました。 ジェンダーの視点で出発したこのセミナーも、そこから一歩前進してもいいのではと思います。 性別の関係なく、非常勤であっても理事としての責任や役割を果たしていきたい、その力を蓄積したいという理事さん達の願いを実現していくセミナーでありたいと思います。 世話人会そのものが私の研修の場で
したし、世話人にも新たなメンバーが参加してほしいですね。

【川口】セミナーの初期の頃を思い出すと、やっぱり教えてもだめですね。 いま大学でも 「学習者主体」 「学習者中心」 ということを言っています。 要するに、学ぶ人が自分たちでつかみ取っていかなければいけないわけで、教師は何か知識を教えるのではなく、学びをどう手助けするかという関係でなければ実際の力がつかない。 本当に学ぶ人たちが、学ぶことで力をつけて、それが実際にどうだったのかということを検証する意味でも、いいセミナーになっていると思うし、ここでやっていることが、ここだけにとどまらずに、もう少しいろいろな研修事業に活かせたらと思います。

【杉本】その意味では、最もくらしと協同の研究所らしい取り組みかもしれません。 われわれも、決して 「使われている」 とは思っていませんので、とても楽しく勉強させてもらいながら、参加しています。 本日はどうもありがとうございました。
  

「第一回女性経営トップセミナー」 のよびかけ文を執筆された末川千穂子 (前京都生活協同組合理事長) さんに当時のお話をうかがった。  

-セミナーを開催しようと思ったのはなぜですか?- 
  セミナーが始まるにいたった力は三つあって、その一つは、「生協を担っている主体が女性であるのに意思決定に女性がいない」、そのための力を身に着けたい、二つめは、「女性評議会でつくられたネットワークを継続していきたい」、三つ目は 「京都生協自体がもっていた当時の理事たちの学びたいという欲求があった」 こと、これらを受け入れていただいた研究所によってスタートできたと思っています。
- 『女性トップが内局に位置づけられる』 ということは?-
  当時、女性理事トップは全国的にも多かったのですが 「組合員組織の担当」 みたいなところがあって、理事長になるのであれば女性であっても常勤の理事長と同様に業務の会議に参加して責任をもつことだと考えていました。 しかし、生協の公式文書は労務問題を含めて理事長名で出ていましたから、そういう意味では 「何が起きても私の責任」 という覚悟をもちつつ、一方で怖さを感じていました。 それを支えたものは 「ここで逃げては女がすたる」、「職業ではないが 『仕事』」 としてやっている」 ということです。 これを自らにいいきかせて5年間準常勤の理事長をやってきました。
(聞き手:仲宗根迪子)