『協う』2008年12月号 特集2

特集 揺れる大学、変わる大学生協
いま、大学が揺れている。 少子化と予算の削減を背景に、国公立大学の法人化や私立大学の定員割れが拡大し、大学間の提携・合併・吸収の動きが毎週のように報じられている。 競争がなく、ぬるま湯のようだとかつて批判されていた日本の各大学は、現在生き残りをかけて必死に競い合っているのである。
  もちろん大学生協もそれに無縁ではいられない。 多くの大学では、「イメージアップ」 を図ろうと、ファストフード店やコンビニエンスストアなど外部業者の導入が相次いでいる。 そして一方では、学生生活における 「食」 と 「読書」 の貧困化が進み、そのことは、大学生協の事業にどのように影響しているのだろうか。
  いまや競争社会の縮図ともなったキャンパスのなかで模索する大学生協。 本号はその特集である。

 

座談会
「大学における生協の役割を考える」
 

大学生協は、大学内にあって食や事務機器、書籍、共済など様々な商品とサービスを組合員 (学生・教職員) に提供し、大学生活を支えてきた。 しかし、大学のおかれているきびしい経営環境のもとで大学生協はどのような方向を模索しているのか。 今回は学生・教職員と職員をお招きして、それぞれの大学生活の実情と生協への期待や課題を食をテーマに語っていただいた。

  【出席者】 (敬称略)
   名和又介:同志社大学教授、大学生協京滋・奈良地域センター会長
   伊藤 将:同志社大学3年
   千種浩香:奈良県立大学3年
   飯田朋子:大学生協京都事業連合 管理栄養士
   辰巳真理:立命館大学生協 朱雀店 店長
   横山治生:大学生協京滋・奈良地域センター事務局長

【横山】大学生協にとって 「本」 と 「めし」 が昔から大きな柱ですが、特にこの間、「食の安全・安心」 をめぐる動きと学生の食育にスポットを当てた活動が広がっていますので、今日はそういうテーマでお話ししていただきたいと思います。 まず、ご自身の学生生活や仕事で感じておられることをお話下さい。

学生生活・大学の状況
【伊藤】下宿生です。 時間がある時は自炊もしますが、帰りが遅い時は外食することが多くなります。 食費は、1回生の頃は1万円少々で、自炊で済ませていたのですが、やっぱり外食が増えると3万円以上かかります。 2万円で抑えるのは大変ですが、お金も限られているので、まず食費を抑えようということになります。

【千種】私も下宿生です。 私の周りの学生は本当にアルバイトばかりしています。 授業はお昼1時から夜9時までですが、私の一年下からは朝9時から夕方6時までの昼間期に移行します。 私たちの場合、夜9時まで授業があったので、その後ずっと夜通しバイトをしたり昼夜逆転の生活で、私もお昼に起きたり、朝ごはんがお昼ごはんという感じの食生活を送っていますが、いまの1回生は昼型というか朝型の生活をしています。  

【名和】大学構成員の状況をいうと、教員の場合、それぞれの大学が、その大学しか持っていないユニークな点を強調することが、ひとつの大きな柱になっています。 もうひとつは国公立大学に顕著な傾向ですが、地域との結びつきを非常に強く言うようになりました。
  一方、経営状況は大変です。 大学の特色を出すためには、教員を増やし、有名教授などをたくさん呼んでくる。 その一方で、職員は徹底的に減らす代わりに、パートや臨時職員が増えています。
  学生は、大学や組織との関わりを避けるというか、ある意味で非常に個人的に行動するというか、せいぜい数人のグループで動く傾向が強くてなってきました。

【辰巳】お店のあるキャンパスは院生ばかりですので学部生と違って、朝から晩まで大学にこもりきりで勉強している人が多いようです。 勉強に割く時間が欲しくて、食事を簡単にすませ、規則正しい食生活がおくれていなかったり、夜食にスナック菓子を片手にコーラを飲んだり、食生活はかなり乱れていて、体調を崩している院生も見かけます。

【飯田】食と健康事業に所属しています。 また、管理栄養士の仕事をしていますので、食生活相談会が春と秋に実施しており、京都・滋賀・奈良のほとんどの大学生協の店で実施しています。 食生活相談会とは、学生と栄養士が面談し食生活と健康に関する改善や困りごと・悩み相談、たまには人生相談などもします。 食事は、学生の考え方も環境も一人ひとり全然違うので、個々人に合った対応がとても大事だなと思いながら取り組んでいます。

【横山】学生 (院生を含む) や教職員の食生活の事情は、今まで語られることが少なかったと思います。 学生の場合、どんな食事をしていますか。

【千種】実際ひどいですね。 極端な場合、お菓子が主食になっています。 友だちが 「ポッキーが主食だよ」 とか言ったときは、すごく驚いて、「えっ、そんなん食べるの、やめたほうがいいよ」 と注意する側だったのに、月日が経つと、いつのまにか私もそれが普通に(笑)。 「今日は時間もないし」 ということで、コンビニでプリンを買って済ませたりします。 ちゃんと自炊もしますが、やっぱり朝・昼・夜と3食全部というのは難しいですね。

【伊藤】お菓子が主食になるというのは女の子の
特徴ですね。 僕の後輩は夜一緒に食事をすると、2~3日後に 「あれから食べてない」 って言うんです。 「今朝は食べた?」 と聞くと、「お菓子を食べました」 と。 それではだめだと言うのですが、なかなかです。

【横山】辰巳さんは、主に院生対象の店舗と学生食堂を両方見てきた立場から、学生の食生活をどうごらんになりますか。

【辰巳】学部生の食事のとり方は、惣菜系ではなく、一番簡単にとれる丼やラーメンを1つだけ食べて終わりという傾向がよくみられました。 お店でも 「主食と主菜、副菜の組み合わせ例」 を掲示したりして呼びかけています。 しかし、学生の食べたいものとこちらが食べてほしいと思うもののギャップが大きくて、それをうまく提供することの難しさを生協に入って以来ずっと感じています。

【横山】そのギャップをうめるためには、学生への食の知識の提供や食育の分野で生協の食堂が果たす役割は大きいですね。 教職員の食生活や生協食堂の利用の実態についてはどうでしょうか。

【名和】教職員は、半分ぐらいは弁当です。 僕自身も弁当派ですが、ただ、家で作った弁当を持ってきている人は1割いないですね。 もう家庭では弁当を作らなくなっているのか、あるいは子どものためには作るけれども妻や夫のためには作らないのか、その辺はよくわかりませんが、そういう傾向があるのかなと思います。
  教職員の場合、ほとんどずっと大学にいることが多いわりには、生協食堂に対してあまり協力的でないというか、もう少し 「一緒にやりましょう」 という気持ちが持てないのかなと思います。 学生だけでなく、教職員も食育についてお互いにもう少し協力できるのではないかと思っています。
【飯田】教職員のなかでも、自分の食生活を大事にされている方は、学生と一緒のカフェテリア食堂に来られて、自分にあったバランス食を選ばれますが、あまり食事を意識しない方は、教職員用レストランで無条件に注文されるといった傾向がありますね。

【名和】なるほど。 食生活を大事にしている人とのタイアップや一緒に取り組むことが必要なのですね。

【横山】教職員、学生、生協職員それぞれの実情について語っていただきましたが、そのようななかでどういう努力や工夫がされていますか。


食生活相談会のとりくみ
【辰巳】相談会をきっかけに 「私はこんなに乱れた食生活をしていたのか」 とか 「体脂肪、こんなにあるの?!」 と気づく人がけっこういます。 先日の相談会で骨強度測定を初めて実施したのですが、最も多かったのは5段階の強度のうち下から2番目の人でした。 なかには、それをきっかけに 「ジム通いを始めました」 とか 「二条城の周りを毎日走っています」 と報告してくれる学生 (院生) がいたので、やってよかったなと思っています。

【横山】自分の状態に気づいて、具体的な行動に移すというのは、すごいですね。 学部生も、食生活相談会を通じて同様の変化がありますか?

【千種】1回生のとき、私自身は企画側でしたが、栄養士さんによる食生活相談を受けて意識がすごく変わりました。 悪い点の指摘だけでなく、たとえば 「豆類が足りないから、お豆腐を食べたらいいよ」 と具体的な提案やアドバイスをしてくださるので、食生活相談の後1カ月ぐらいはアドバイス内容や健康面をすごく意識しました。
でも、半年、1年と経って、相談しなくなると、意識も薄れてきましたね。 自分の状態がわからないと、何をしたらいいのかもわからないので定期的に自分の現状を知ることが大事だと思います。

【伊藤】食生活相談会を知ったのは学生委員会の活動に関わるようになってからです。 先日、骨強度測定をしてみたらC判定でした。 自分では骨はあると思っていたし、C判定は普通だから大丈夫だろうと思っていたら、栄養士さんに 「Bでないとだめだよ」 と言われてしまいました(笑)。 周りを見てもA判定やB判定は1割いるかどうかですね。

【飯田】食生活相談は、最近いくつかの生協では大学の保健センターと一緒に取り組むようになっています。 やはり生協の集客力が魅力なのかなと思いますが、キーワードは 「健康」 で、私たちは 「食べ方」 をメインに話をしますが、隣に保健センターの看護士さんたちのブースがあると、具合が悪い人はそこに案内することができます。 たとえば貧血が気になる学生がいたら、食事の改善の話をしつつ、「隣の保健センターのブースで相談してね」 と案内できます。 そうすると、保健センターの方は、自分の大学の学生ですから、ずっと継続してフォローできます。 やはり生協だけでなく、大学と一緒に取り組むことが大事ですね。

【横山】食生活相談の結果を、生協の内部資料にとどめず、大学に報告することも大事ですね。

【飯田】資料は専務にも渡すので、保健センターや学生課などの部署に渡していただければいいなあと思います。

【名和】生協と大学とがタイアップできる非常に重要な部分かもしれませんね。 保健センターと食生活相談をワンセットでやることと、その情報を大学と共有化することが、組織的にはまだもう少し不十分なのかなという気がします。

【横山】京都の大学生協は30年間、全国に先駆けて食生活相談をやってきましたがここ最近の変化はありますか?

【飯田】最近というより徐々に変化してきましたが、学生の食費額は、私が生協に入った20年前とほとんど変わらないと思います。 当時は、今のように海外から安い食材が入ることもなかったし、物価も高く、メニューも今より高いものが売れていたような気がします。 全体に物価が高いなかで同じ金額を出費した、つまりエンゲル係数が高かったということは、それだけ食べることが大事だったのではないかと思いますね。
今は、いつでもどこでも簡単に食べることができるようになりました。 昔はごはんどきに食べなかったら、夜中にコンビニが開いているわけでもないので、自分でごはんを作るしかなかった。 便利じゃなかったから、ちゃんと食べることができたのですね。 また、バス代も節約して、よく歩いたけれども、今の学生は歩かなくなりました。 昔はちゃんと食べて体も動かしていたけれども、今は 「ラクチン」 「簡単便利」。 学生の後ろ姿を見ると、曲がっている人が多いので、食生活相談会ではいつも 「自分の背中は見られないから、他人の背中を見て、自分もそうやと思って注意しないと」 と言うんです。

【千種】食堂に行けば、赤・黄・緑のバランスを考えたり、主食・主菜・副菜を組み合わせて食べたりしますが、自炊となると、ごはんを炊くのもお味噌汁を作るのも面倒なので、意識だけはあるのですが、なかなか実践につながらないんです。

【横山】そういう状況のなかで食生活相談は、典型的な食育活動のひとつだと思いますし、大学との連携もできて、学生の成長を支援できるのはすばらしいと思います。 一方、食堂のメニューや運営という点で、学生の食を支えるための工夫や努力はいかがでしょうか。

【辰巳】院生の学生委員会は、すごく活発で、1カ月に1回ぐらい院生懇談会を開いています。 その懇談会は、生協委員だけでなく、「友だちを呼んできてね」 という形でやっているのですが、そこで話されるのは食だけではなくて、「朱雀店がこうなったらいいなということを、何でもいいからみんなで決めていこうよ」 という雰囲気で、ざっくばらんにやっています。 そのなかで食堂のメニューの内容について、「どんなものを食べたいの?」 とか聞いてみたりします。

【横山】活発に院生懇談会をやっているというのは、すばらしいですね。 学生の日常的な食の実態や、食生活について様々な取り組みを紹介していただきました。 さて、大学生協に関わる教員の立場として、大学生協がもつ機能・役割を意識して、どのような食育活動、学生への啓発活動を進められていますか。


教職員・学生の食育、啓発活動
【名和】大学教員として初めて生協に関わりましたが、みなさんのお話を聴いたり資料を拝見して驚いたのは、学生生活は意外に危機的状況にあるなと強く感じました。 そこで、学内で最初にはじめたのが 「生涯健康」 というリレー式授業です。 これは保健センターのお医者さんたちと相談して具体化しました。 この授業をやってみて、「大学生協が持っている情報をきちんと大学や社会に発信することが重要だ」 と、あらためて確信しました。 そこで次に取り組んだのが、「食と健康」 という寄付講座です。 これは一過性のものとして取り組みましたが、もう一度復活しようということで、「食をとりまく環境」 というテーマで、去年から3年連続の寄付講座につながりました。 また、単に講義をするだけではきちんとした情報発信にならないのではないかということで、寄付講座を書籍としてまとめ出版しました。 ( 「食の講座」)

【横山】学生も、みずから食について学ぶためにさまざまな取り組みをしていると思いますが、その辺りの具体的な事例としてはいかがでしょうか。

【千種】奈良県にある治道はるみちトマトの生産者の方や大山乳業協同組合を訪問して、お話を伺ったことがあります。 生産者の方と交流することで、生産者の方がどんな思いでトマトや牛乳を作っているのかがわかりましたし、そのものにとても愛着がわくようになりました。
トマトを食べたり牛乳を飲んだりするとき、生産者の方の顔が浮かんできて、その食べ物を育ててくれた生産者の方への感謝と同時に、食べ物という命そのものに感謝をするようになりました。 【伊藤】大学生協ではいろいろな学びの場が用意されていますが、なかでも生産者訪問が一番大きな学びだなと感じています。 牛乳にしても、当たり前のように売られているし、当たり前のように飲んでいるけれども、生産者の方と交流して、乳搾りなどを体験すると、「こうやって牛の乳から搾り出して自分に届いている」 とわかります。
ふだん飲む牛乳は冷蔵庫で冷やされたものですが、生産者訪問のとき、温かい牛乳を飲ませてもらったんです。 牛には体温があるので当然といえば当然なのですが、本当に 「命をいただいている」 と思いましたね。

【横山】今年から京都・滋賀・奈良の大学生協では原産地表示をおこない、11月には環境団体と一緒に、フードマイレージの表示も始めたばかりですが反応としてはいかがでしょうか。


生協食堂のとりくみ
【辰巳】原産地表示を始めてから、「このメニューはどこの食材を使っていますか」 という質問が絶えないですね。 学生さんの意見としては、「中国産の野菜は使わないでほしい」 「国産のものをもっと増やしてほしい」 という声がよく出ています。
一方で学生としては 「できるだけ安い値段で食事をしたい」 という声が大きいので、「国産の食材を提供したいけれども、できるだけ安く提供する」 というジレンマがありますね。

【飯田】私たちが原産地表示に踏み切ったのは、「日本人はどれだけ世界中のお世話になって生きているか」 ということを知ってほしかったからで、地球のどこにあるかもイメージできないような国からも多くの食材が来ています。 目の前の食材が、どんなルートで届いて、どんな人が作っているのか、というところに意識を向けてほしい。 人口増加で地球上の畑が足りなくなると言われているような実態もあるのに、「国産でないとだめ」 とか 「中国産は嫌や」 という反応ではなく、どうしたらいいのかを、生協と一緒に考えていく、そういうアプローチができないかということを考えています。

【名和】生協は、いろいろな組合員の声を聴く組織ではあるけれども、あるべき食生活や食育があるはずで、そういうことに大学生協がどれだけきちんと対応できるかも非常に大きな問題です。 ややもすれば、そういった事件に流されてしまうので、大学生協はその辺をしっかり押さえていかないといけないし、それに対する啓発活動もひょっとしたら求められているのかもしれませんね。

【横山】学生のみなさんは生協食堂をどのように評価していますか? 

【伊藤】揚げ物が多いですね。

【千種】たしかに。

【伊藤】揚げ物は体にどうなのかなと思ったりしますが、高温で揚げるから衛生面では管理しやすいんですか。

【飯田】やっぱり揚げ物は絶対的な人気がありますね。 院生になるとちょっと離れていきますが、1~2回生には人気があります。

【伊藤】今は価格が上がって変わってきましたが、以前はうどんやそばが安かったので、それだけしか食べない学生が多くて。

【横山】今の人気メニューは?

【飯田】ささみチーズやチキン南蛮、つまりはお肉ですね。 特にチキン。 甘辛ステーキなどはみんな大好きです。

【伊藤】売れるというのはわかるけれども、もう少しバランスのとれたメニューがほしい。 どれがバランスとれているのかも、赤・黄・緑である程度はわかるけれども、いいバランスのとり方を
教えてほしい。

【横山】つまり、一品ですべてを満たすことはできないので、生協食堂は、食べ方提案というか、「今の自分の体にとって何と何を組み合わせて食べたらいいのか」 ということがわかるような提供の仕方をしている。 そういう知恵を持ってもらうための教育を大学生協がしていかなければいけないということですね。

【名和】しかし、学生委員会がやっているコンテストは、「丼コンテスト」 や 「パフェコンテスト」 ばかりなんですよ(笑)。 「大学生協はバランスをとれた食を考えています」 と言いながら、「パフェコンテストで、パフェがこれだけ売れました」 とかいうのはどうなのかなと。

【辰巳】私も、学部の食堂にいたときは 「パフェコンテスト」 をやっていました。 学生の好きなものから入ったほうが取っ掛かりをつくりやすいと思いました。 そして 「生協食堂をこういうふうに変えていきたい」 という学生の思いをみんなで考えていけるような取り組みにつなげられたらと思いました。 そういうコンテストをやることで 「私たちの声をここまで出していけるんだ」 と気づいてもらいたいと思いました。

【横山】 「一声カード」 で意見・要望を反映させることはできても、「自分たちでメニューをつくることができるんだ」 とか 「もっと関わることができるんだ」 ということを実感してもらいたいということですね。 そういうきっかけによってもっといろいろな取り組みや関わりができる、というのは、たしかにそうかもしれません。

【飯田】この10年、組合員の声を聴くということをかなり集中してやってきて、要望もどんどん採り入れてきました。 それで、食べなきゃいけないものをきちんと提供できない食堂になってしまったと、個人的には思っています。 昔は男子が多かったのでメニューも、Mサイズしか出さなかった。 今は、男子でもおかずはSサイズが多くて、ごはんもSSです。 学生は食費を使いたくないから、安くあげようとする。 それでも、一品だけでなく上手に取り合わせて食べてくれたらいい。 Sサイズでも、他のメニューを一品足して、Mサイズの必要な中身であればいいのですが、それは脇に置いて、食べたいものだけを食べて安くあげるという方向にどんどん進んでいる。 女の子でも野菜ばかりではなくてタンパク質をちゃんと摂らないと体はできない。 その意味で、生協食堂は、組合員の声は聴いても、わがままを聴くだけの存在にはならないように。 うるさいことを言う親も必要ではないかと思います。

【名和】今までの大学は、「大学で勉強すればいい」 というスタンスだけで運営されていました。 一方、大学生協は、福利厚生事業を受け持つ形で、現在もやっているし今後もやっていくのでしょうが、大学との連携ということをもう少し追求できないかなと思います。 つまり、学生は大学で勉強すればそれで終わりという状況ではなくなっています。 たとえば体の健康の問題もあるし、精神的な面でも心の病などが深刻な状況ですから、大学の役割としてそういうことも受け持たざるを得ないし目配りせざるを得ない状況が生まれています。
  大学はもっと積極的に大学生協の福利厚生機能と関わるような姿勢を持ってほしいし、大学生協は資料や情報を大学に開示し、「こうしませんか」 という提案をしていくことが大切だと思います。

【飯田】その意味では、お昼休みを学部ごとに少しずらしていただけると、学生がきちんと食べるために一番大事ですね。 全員を一度に収容できる食堂なんてないですからね。  

【横山】最後に抱負やチャレンジしたいことをお願いします。
今後の生協の課題

【伊藤】タバコを吸う学生が多い。 タバコを吸うと体力が落ちるという話を聞きますが、友だちに聞くと 「そんなに変わらない」 と言います。 自分の体をもう少し気づかうというか、体を大切にして、しっかりとした食事を考えるような学生を増やしていきたいと思います。

【千種】生産者の方との交流する場面を活動に活かしていけるようになれたらと思います。 食生活相談会にも取り入れて、「生協牛乳が好き」 という人を増やしたり、生産者訪問で終わるのではなく、その商品の良さを広めていけるようにしたいと思います。

【辰巳】大学と学生と生協職員が一緒になっていろんなことをやっていけたらと思います。 「こんなことをもっと知りたい」 とか 「こんなことを生協がもっと伝えていかなければいけない」 というようなことを話し合いながらすすめられたらと思います。

【飯田】昨今 「食の自立」 が言われるようになりましたが、大学生協の先輩たちは 「食の自立」 という言葉でずっと昔から取り組み続けてきました。
  高校までは親の保護下にありますが、大学生になると、自宅生もそうですが、特に下宿生は、初めて自分の生活のすべてに責任を持つ暮しが始まります。 消費者としても最初の一歩を踏み出し、お金に見合う価値を考えて買うようになります。 大学を卒業して、社会人・消費者として本格的な一歩を踏み出し、4年間の大学生活の間に、消費者として物事をどう考えるかということを学んでほしいし、「生活の自立」 も大学のなかである程度マスターして、社会に出ていってほしいと思います。 したがって、いろいろな大学生協のお店がその自立をどこまでサポートしていけるのか、ということが生協として最も考えるべきことではないかと思います。

【名和】大学生協のいいところは、学生が自分のことだけでなく友だちの健康の話をし、助け合いの気持ちを持っていることですね。 そういう学生がたくさんいるところが大学生協だ、ということが僕にとって最大の魅力ですね。
  先ほど伊藤さんが学生の喫煙と健康の問題を話していたけれども、大学のなかで、学生同士でも、教職員同士も、生協の職員同士も、みんなそれぞれに、あるいは一緒になって話をしなければいけないことですね。
  それから、千種さんがおっしゃった産地交流は、いま一番大切なことで、生産現場を見なければいけないと思います。 したがって、大学生協は、学生を生産現場に連れていく役割があるのではないか。 生産現場にいくことで、日本の生産者たちが置かれている現状をちゃんと知り、「自分に何ができるか」 と考えると思います。
  大学生協は先に出したビジョンとアクションプランのなかで、「協同・協力・自立・参加」 の4つをはっきり打ち出しました。 協同組合としてあるべき姿について、僕が一番好きな言葉は 「1人は万人のために 万人は1人のために」 です。 助け合いの精神は協同組合の原点であり、これをもう少しみんなで意識していきたいと思います。
  それとともに、大学との協力関係をお互いにもう少し積極的に進めたほうが、大学も大学生協も学生もハッピーになるのではないか。
  もうひとつは、飯田さんがおっしゃった 「食の自立」 です。 いまは社会全体が依存症にかかっているのではないかと思うので、大切な考え方だと思います。 最後は、言うまでもなく 「連帯」 です。 これはまさに助け合いです。
  このように大学生協は、非常にいいことも言っているし、おもしろい実践活動もいっぱいあります。 それをもう少し意識して、よりよい方向につなげていけば、大きな可能性を秘めている組織だということをみなさんのお話を聴きながら確信しました。

【横山】ありがとうございました。 いまおっしゃったことは、食の問題だけでなく、すべての分野で言えることかなと思います。 どうもありがとうございました。