『協う』2007年8月号 特集2

くらしと協同の研究所「研究会」レポート

自主研究会「食育活動研究会」
大学生の「食の自立」をサポートする
研究会代表:あざみ祥子(コンシューマーズ京都)

 

飽食時代の食育
食育活動研究会は2006年5月に研究所の自主研究会として発足しました。 テーマは 「2005年食育基本法が設定され、 06年度は基本計画が作られようとしているなど、 国を挙げての大事業となっている。 私たちはこれまで、 食の自立と安心安全の観点から、 食の問題を積極的に取り組んできた。 2006年度は食育基本法の趣旨や計画と共に食環境など社会的要因などを含めて研究し、 特に若者の食生活に注目して食べる側から望ましい食育活動を提唱したい」 として、 具体的には①食育基本法を学ぶ ②食育基本計画と京都で進められている活動 ③中・高生又は大学生の食事調査 (給食・お弁当・業者弁当)  ④大学生向き自炊メニューの提案 ⑤出前講座 を設定しました。
日本に限ってみれば食べものは潤沢です。 しかし、 人々はいつも健康に不安を抱き、 食に起因する健康被害におびえています。 農薬は?抗生物質は?添加物は?しかしその一方で早く、 いつでも、 簡単に食べることに慣れ、 肥満を心配したり食べ残しを発生させています。 これはどう考えてもまともなことではありません。 どうしてこんなことが続いていくのか、 どうすればよいのか、 これから大きくなっていく子どもたちに、 食を考え、 食べる技を伝え、 生きる力を育んでいきたいという問題意識からテーマを設定しました。

メンバーは食育の専門家・実践家
研究員は11名で、 属性は大きく分けて
①消費者運動・生協運動で食を扱ってきたリーダー
②大学生協で、 直接食堂のメニュー作りから食材の選定に携わり大学生の食を直接指導する立場にいる生協職員・栄養士
③大学生や、 若い食関連の専門家を養成する大学教授・講師
④社会生涯教育の場などで実際に料理教室を主宰している料理研究家
の4つのグループに分かれます。 それぞれの立場から、 日本の食、 食環境・健康問題、 食料自給問題など実践的な研究を重ねてきていますが研究会は 「食育」 というキーワードで捉え直してみることになりました。 食育基本法や、 政策の変遷を学びなおし、 それぞれの実績を報告し、 「食育」 をどう捉えるか徹底デイスカッションしました。 その結果、 各世代とも食への関心は高いものの、 実生活に上手に結びつけられていないこともわかりました。 そこでメンバーの多くが関与している大学生の食生活に焦点を絞り、 実態を明らかにすることになりました。

大学生協の 「食事相談」      
京都・滋賀・奈良の大学生協で管理栄養士による 「食生活相談会」 が行われてきました。 企画実践に当たってそれぞれユニークな発想や創意工夫がほどこされ、 どこでもたいへん好評です。
しかし問題は窓口にやってくる学生がほんのわずかな学生に過ぎないということです。 大学生は若く元気ですから一見健康です。 漠然と不安を抱いている学生にしても食事との関係に気付いていないこともあり、 まずは、 学生たちをどうやって相談窓口につれてくるか、 これが課題です。
もう一つ、 「ちょっと覗いてみただけ」 と立ち寄った学生に対しても大学生協は大変具体的な指導や集団での学習を続けてきていることがわかりました。 これは、みて、 さわって、 食べてなど体験・参加型の試みです。
農産物はどうしてつくられるのか、 京都ではいまどんな野菜が植えられているか、 それらを使った料理、 食べ方などをいっしょに指導して成果をあげています。

京都らしい食育活動
京都は大学の町、 多くの若者が親元を離れて京都の地で自立の訓練をはじめます。 研究会では、 京都ではぐくまれてきた食の文化をとりいれ、 食の自立を通して立派な大人として成長するようサポートしたいと考えます。 2007年度は、 これまでの豊富な経験とネットワークをいかし、 大学生のための食育カリキュラムを、 見て、 さわって、 食べ、 考える実践を通してつくりあげていきます。

大学と地域をつなぐ
今年6月から京都生協地域理事に就任された有地淑羽 (ありちよしは) さんは、 まちづくりスタッフとしての顔をもつ。
彼女が市民代表として活動する 「きゅうたなべ倶楽部」 は同志社大学と京田辺市、 学生と市民をつなぐNPOとして設立された。
ことの発端は、 平成8年12月に決定された 「三山木地区特定土地区画整理事業」 である。 この事業の停滞をきっかけに、 地域住民の転出、 駅前商店街の空洞化、 近隣地域の治安悪化など、 三山木地区にさまざまな問題が噴出してきた。 女子大生は大学に通学するにも痴漢を心配しなければならず、 平気でごみを捨てる学生に地域住民の不満は募る。
そんな中で、 同志社生協の住宅斡旋部門で働く吉田さんから同志社大学生協の学生である杉岡秀紀 (きゅうたなべ倶楽部の学生代表) さんに、 「学生への下宿斡旋が難しい」 「学生が地域住民と触れ合う機会がほしい」 という提案があった。それを手伝う形で有地さんが加わり、 同志社大学と京田辺市の地域をつなぐまちづくりの活動は立ち上がった。