『協う』2007年8月号 生協のひと・生協のモノ
大学と地域をつなぐNPO組織「きゅうたなべ倶楽部」
林美玉(京都大学大学院経済学研究科 博士後期過程)
大学と地域をつなぐ
今年6月から京都生協地域理事に就任された有地淑羽 (ありちよしは) さんは、 まちづくりスタッフとしての顔をもつ。
彼女が市民代表として活動する 「きゅうたなべ倶楽部」 は同志社大学と京田辺市、 学生と市民をつなぐNPOとして設立された。
ことの発端は、 平成8年12月に決定された 「三山木地区特定土地区画整理事業」 である。 この事業の停滞をきっかけに、 地域住民の転出、 駅前商店街の空洞化、 近隣地域の治安悪化など、 三山木地区にさまざまな問題が噴出してきた。 女子大生は大学に通学するにも痴漢を心配しなければならず、 平気でごみを捨てる学生に地域住民の不満は募る。
そんな中で、 同志社生協の住宅斡旋部門で働く吉田さんから同志社大学生協の学生である杉岡秀紀 (きゅうたなべ倶楽部の学生代表) さんに、 「学生への下宿斡旋が難しい」 「学生が地域住民と触れ合う機会がほしい」 という提案があった。それを手伝う形で有地さんが加わり、 同志社大学と京田辺市の地域をつなぐまちづくりの活動は立ち上がった。
主な活動
地域住民と大学生との間におけるコミュニケーションの乖離を解決することをミッションとする 「きゅうたなべ倶楽部」 は、 さまざまなまちづくりにつながる活動に臨んでいる。
毎月第2金曜日にはゲストスピーカーを招いてまちづくりをテーマに意見交換する情報交換会を開催している。
冒頭のレストランのご主人などの地域住民、 同志社大大学、 同志社女子大学だけにとどまらず様々大学の学生、 行政の担当者など多くの関係者が参加する。
また、 フリーペーパー 「たなべ デ・ビュー」 「京田辺MAP君」 も発行する。
これは学生が自分たちの通う町に興味を持ってもらうための地域情報誌である。 その他にも市民向けのパソコン講習を開催したり、 地域の掃除活動に参加したり、 地域活性化イベントを仕掛けたり、 「きゅうたなべ倶楽部」 の活動は広がりをみせている。
現在は、 使用している事務室や設備の費用は、 同志社生協に応援してもらっているが、 事業の自立化を志向することも忘れてはいない。 会費のほかには、 たとえば、 卒業生のいらなくなった家電・家具・日用品などを販売するキャンパスリユースを開催するなどの努力を通じて、 事業収益も徐々に増えている。
今後の展開
2003年4月に発足された 「きゅうたなべ倶楽部」 は、 今年で4年目を迎えた。 京田辺市と同志社大学は一昨年包括協定を締結した。
同志社大学は現代的教育ニーズ取組支援プログラム (現代GP) における地域連携プロジェクトで、 まちづくりに積極的に取り組みをはじめた。 「大学と地域をつなぐという当初の目的は達成された」 と有地さんは評価する。
新しいメンバーへと入れ替わり、 次なるボランティアセンター開設の夢がどのように実現されていくのか、 今後の 「きゅうたなべ倶楽部」 の展開か楽しみである。