第一号議案
「阪神淡路大震災」による瀬戸内シンポジウムの延期にもとづき、第三回総会並びに記念シンポジウム�研究討論集会を9/9に開催した。これによって、1995年度(会計期間は規約どおり)事業期間は、実質1995.9.9から1996.3.20までとなった。第1回理事会(9/9)で承認された新しい研究委員会態勢(委員23名に拡充)のもとで、10月第1回研究委員会(丸岡合宿)開催、11月生協総合研究所全国研究集会に向けた準備と集会参加、以降第4回の研究委員会を開催し、事業執行につとめてきた。
第三回総会で確認された「広域化と地域化」の取組みは、95年度期間中に、石川生協と共催した「石川シンポジウム」(3/23)、『協う』のやむをえない隔月発行と地域版発行計画などの着手、九州エリア賛助会員の会員へのお誘いなどの取組みを進めた。他方で、当研究所の中長期計画策定にむけては常設研究会のあり方や事務局体制の問題などが含まれており、これらも96年度の重点課題となる。
第三回総会・記念講演並びにシンポジウム・研究討論集会等では「地域のニーズ」をどう把握しどう実現していくかが転換期における生協の基本的課題としてとらえられ、同時に再生をめざし新しい生協像をいかに追究していくかが論議された。これらをふまえるならば、当研究所の中長期計画では「広域化と地域化」の方針が意味する地域ニーズの独自性・多様性にこたえる調査研究事業の具体化が第一の柱とされる。そして、各地における調査研究の推進主体との有効なネットワークを形成するためのサポート機能の強化が第二の柱となる。各地での自主�自律の趣旨を活かしたこの課題の遂行には、実績の積み重ねと人材育成が不可欠であり、計画は当然そうした課題を内包することとなる。
研究委員会幹事会(3/15)は、第四回総会記念シンポジウムのテーマに「新しい生協像の再生」を第3回研究委員会(3/20)において提起し、第二回理事会(5/12)と第4回研究委員会(5/24)、そして第三回理事会(6/22)を経て第四回総会に提案することとする。
研究委員会‥‥95年度委員数は、「広域化と地域化」を担う研究委員会態勢づくりをめざすものとして23名が承認され、10月の丸岡合宿より始動したが、第2回委員会(12月)では早速に96年度事業計画を視野においた常設研究会の再編�事務局態勢等短期調整課題を検討、第3回委員会(96年3月)では96年事業計画素案等の準備に、ついで第4回委員会(5/24)を経て第三回理事会、本総会への提案と慌ただしく経過していった。「広域化と地域化」をめざすことに伴い、委員会開催では日程の調整、開催数の限定化、集中した論議形成などに課題を残してきた。一方では研究委員に共同研究のコーディネーター役を課し、他方で、限られた委員会開催の下で積極的な研究交流がはかられねばならず、全体として「広域化」の下での「地域」重視のための連携や運営上の改善が求められてきている。
幹事会‥‥委員会開催までの業務運営�管理等にかかわる事項など、全般的業務が幹事会に付託され、これが過密的なスケジュールともなる状況が生じている。運営項目の整理と研究委員による適度な分担も含めた調整をはかるため、各研究会等における事務局の形成や整備を含め、広域化のための円滑な運営態勢づくりが緊急課題となっている。幹事レベルの過密化と事務局態勢の整備課題は、研究所の「センター機能」形成にも滞りを生じさせ、中長期計画での課題としている。
「生協運動の現状分析プロジェクト」(野村秀和・若林靖永)は、「コープこうべ調査」「京都生協調査」等を取組み、中間報告を生協総研全国研究集会に報告(若林靖永・メイティ店)した。とくに、全国研究集会においては「転換期のマネジメント」に積極的に協力し、野村所長が「主査」として、コープこうべの「創造的復興」を初め多様なる生協の再生にむけた取組みの現状を報告した。両調査は引き続き継続され理論的成果を『年報』第3号などに掲載予定であるが、生協像再生の視点として「こうべ」等の事例と教訓の普遍化をはかるためにまとめを緊急に刊行することがのぞまれている。
浜岡組合員調査プロジェクト(浜岡政好・藤田実)は、生協しまね調査作業に95年7月より着手、11月アンケート配布・回収、データ入力、分析、生協しまね理事会への報告(4/10)と短期間であったために課題を残したが、生協しまねの主体的な取組みにより調査の「地域化」を成功させた。この成果は、生協しまねの地域での役割をさらに深めて分析することの展望をひらき、さらには「広域化と地域化」取組みのモデル事例として他の地域調査事業において追究する。
協同組合間協同調査(藤谷築次・久保建夫)は、96年度の出版予定にある。
職員論研究会(戸木田嘉久・久保建夫)は、原稿執筆が海外留学等のため遅れているが、96年8月頃の刊行には、シンポジウムや学習会などでのフォローアップも予定している。女性パート職員問題の本格的分析等が今時の課題として残されているが、チームの再編成に関わらず調査研究を継続する領域である。組合員活動研究会(井上英之・藤田実)は、いくつかの「組織改革」、組合員活動とボランティア活動などをゆらぎ論やコミュニケーション論、関係性論、戦前戦後の女性運動の研究課題等から検討してきたが歴史的考察等や他の視点補強など課題が残る。その中で、農協婦人部の活動と生協組合員の活動との比較論を担当していた馬場富太郎氏が急逝され、新たに大幅なメンバー拡充が必要となっている。農村地域研究会は、美山調査第一次報告(9月総会)後の本報告書作成中に主査馬場富太郎氏が急逝され、庄司俊作が主査代行として報告書を美山町�美山農協の後援にて刊行(6月中)予定だが、研究会の再編が必要である。「フォーラム/女性と協同組合」(上野勝代・的場信樹)は、「北京会議」に参加(小林治子)し、第1期を終了、第2期「フォーラム/女性と協同組合」(代表上野勝代)を準備している。生活様式研究会(代表浜岡政好)は、生協しまね調査等を素材に新たな再出発も含め調査に取組み、しばらく研究会は休止状態にあったが、96年度の再編を検討する(調査の「地域化」とプロジェクトとの連携�調整の課題も生じてきている)。消費組合の歴史研究会(青木郁夫・西山功)は、戦前(戦後)消費組合に関する資料収集�整理等をめざしているが、京都生協「30年史」に一部協力するなどもあり中断している。今後は歴史学研究者の参加による陣容強化が必要となっている。「中小企業と協同組合研究会」(二場邦彦・的場信樹)は、京都の中小企業と協同組合に関する調査を実施、2月に報告、補充調査を96年度に予定しているが、96年度新しい事務局員を研究会より選出する。「健康�医療�協同組合研究会」(代表松野喜六)は、姫路医療生協のヒアリングを実施し、以後企画準備と事務局体勢の確立を追求している。「参加型地域福祉と生協運動」(川口清史・的場信樹)出版計画は急速な環境変化に対応した調整が緊急課題である。なお、後続の「生協の福祉活動に関する研究」(上掛利博・千葉正司)は96年度「福祉事業研究」を包含して発足を準備中。「土佐くらしの研究会」(玉置雄次郎・田辺)は定例研究会を継続し、県内協同組合調査を一巡中。地域にはたす協同組合の役割などについて96年初冬に中間まとめの予定。「ヒロシマくらしと協同の研究会」は、田中秀樹事務局長帰国後再開。「鹿児島研究会」(代表仲村政文)は独立した研究組織として再開準備中で、山本賢治(鹿児島経済大学)が協力�交流をはかるため当研究委員に就任、『協う』地域版も準備中。「おかやまくらしと協同の研究会」(呼びかけ人代表下野克己)は、当面は三ヶ月一回のペースで公開講座形式で96年4月度に始動、また「えひめ暮らしと協同の研究会」(代表北島健一・松本仁)が準備を重ねている。他に地域研究会として石川で準備がすすみ、西日本各地での一層の取組みを励ますこととなっている。
「田中恒子ゼミナール」(田中恒子・的場信樹)は、2年間のゼミナール期間を終了、卒業論文を作成し製本化する(助成)。このゼミナールの大きな成果をうけ、会員期待のゼミナール�講座の開設がまたれている。第三回総会記念シンポジウム「コープこうべの創造的復興から何を学ぶか」は大きな成果をおさめ、続く研究討論集会における会員参加方式の取組み方も好評であった。諸研究会の中間報告が総会第2部として行われたことなどと合わせ、参加型研究を目指す当研究所のあり方にようやく目途が立つことになった。「石川シンポジウム」(96/3/23)は、95年度事業として石川生協との共催により取り組まれ、「地域化」のもう一つのモデル事業として大きな成果を残した。
「公開講座」(上野勝代・西山)は、第2回研究委員会で94年度成果と教訓を明らかにし、96年度開催準備に着手している。「武内�協同組合論講座」(武内哲夫・鈴木)は、開催要綱を第3回研究委員会で確認し、6月より開講(毎月第1土曜日午後)する。講義要綱からいえば連続受講を求めたいところ。「木原理事長を囲むつどい」(木原正雄・金山)は若手職員との交流を重ねた。「特別講座(研究委員会主催)」は研究委員提案方式として計画化を検討した。出張講演を開催した(野村所長1月生協とくしま、武内哲夫委員1月コープしが)が、日程調整などで希望に添えない場合もあった。
1995年度は、川口清史立命館大学教授に「ノンプロフィット・オーガニゼーションに関する研究動向」を、田中秀樹広島大学助教授に在外研究として「スウェーデンの協同組合に関する実態調査研究」に関する調査研究を委託した。川口�田中両氏論文の掲載を『年報』第3号に予定している。
96年募集要綱を『協う』4月号「差し込み」でおこなった。95年度助成については、京都生協産直事例研究、民主的経営論研究等の報告書(5編)が提出され、総会第2部で研究者から報告する。
『協う』は、NO.26より新しい第2期編集委員会(編集委員長上掛、顧問井上、他)の下でNO.29(96年2号)より隔月(偶数月)発行として、奇数月に申し出のあった地域研究会の企画�編集による「地域版」発行�発信をめざすこととした。これは編集態勢や予算上の厳しい状況の中でのあり方としてやむを得ずめざしたものであるが、他方で、各地からの個性豊かな発信情報が享受しうる可能性を切り開くものとなっている。しかし、こうした事業変更についての会員とのコミュニケーションが不足していたことは大いなる反省である。中長期計画策定論議とあわせた編集態勢づくりが課題である。
『年報』は、第2号(編集委員長浜岡政好)が6月発行、第3号(編集委員長川口清史)は遅くとも新春発行予定、第4号(編集委員長上掛利博)97年6月発行予定をめざしてすすめている。第1号以来、企画�編集への参加と普及が課題となっている。ワーキングペーパーはシンポジウム記録等(1996.1.20)発行。
「生協しまね組合員アンケート調査」(主査浜岡政好)を受託し、生協しまね理事会に調査結果を報告した(96.4.10)。コープならより、中長期計画作成に向けての学習会の複数講師派遣要請があった。
くらしと協同にかかわる分野で、他の研究機関や学術団体との交流および協力関係を発展させることは引き続き重視される。95年度の海外交流は11月所長の訪韓を皮切りに96年2月3日、韓国農漁村社会研究所の来訪(7名、当研究所から理事長・所長等出席)、2月10日同女性民友会来訪(8名、中村尚司理事、上掛幹事�上野�中嶋委員等出席)、4月10日韓国キリスト教生協代表来訪(17名、府連原常務講演)と交流をかさねた。また、国内交流としては、生協総合研究所との共同企画事業「社会経済システム」研究会の成果が刊行予定だが、新しい企画等にも協力する。コープこうべの創造的復興過程の共同研究は95年4月以来精力的にすすめられ、『年報』第3号などに研究成果を掲載する予定にある。
的場信樹主任研究員が退職し、95年9月金沢大学助教授に就任し、事務局機能に支障を来たしたが、96/3京都生協職員が加わり、事務局機能再編が緊急課題となっている。特に研究スタッフは長期にわたる育成期間が必要であり、団体会員�会員からの出向�ボランティアを含めた強化策が求められている。