くらしと協同の研究所
第14回総会 議案書



はじめに ―くらしと協同をめぐる社会的動き


ホリエモンの逮捕とその後のライブドアの崩壊は新自由主義の奔流に対して、潮の変わり目となるのであろうか? 偽メールに端を発した民主党前原執行部の崩壊は小泉自民党新自由主義プラス国家主義路線の長期にわたる独裁を予想させたが、案に相違して、小沢民主党新執行部の成立は、あたかもオセロゲームのように、小泉自民党を追い詰めるかもしれない。
一方日本経済は、日銀がゼロ金利政策を終結させたことに象徴されるように、景気は順調に上昇を続けている。しかしながらこれは90年代以降重ねられてきた新自由主義的・市場主義的『改革』の成果とは言いがたい。社外取締役を中心としたガバナンス改革、成果主義導入による雇用制度改革、系列解体などの取引慣行改革、といった改革はいずれも中途半端なまま、日本経済は『回復』過程に入った。トヨタ、松下といった代表的な『日本的経営』企業が牽引車となっていることがそれをあらわしている。

世界に目を転じると、アメリカでは、『内戦状態』にまで悪化したイラク情勢やアメリカの貧困を浮き彫りにしたハリケーンカトリーナ被災とその対策のまずさを受けて、ブッシュ大統領の支持率が30パーセント台にまで低落した一方、ヒスパニック系『不法』移民による人権を求める運動が60年代の黒人の公民権運動に比するほどにまでに盛り上がってきている。中南アメリカではベネズエラ、ボリビアに続いてペルーでも反米左派政権の誕生が確実視され、ブラジル、アルゼンチン、チリなどの中道左派政権を加えると、3億6500万人の人口のうち3億数千万人がこれら政権下で暮らすというように、明確に新自由主義とは一線を画す動きが広がってきている。フランスでは若年層に対する解雇自由権を企業に与える法律が青年と労働組合の街頭闘争によって廃棄に追い込まれ、イタリアでは中道左派が総選挙で勝利し、内政外交ともにアメリカに追随したベルルスコーニ政治は5年ぶりに終わった。

世界で、日本で、新自由主義路線はさまざまにその矛盾を露呈し、それへの批判の声は高まっている。とはいえ、新自由主義路線が直ちに破綻をきたすとは到底いえない。逆に、その論理が静かに社会経済システムを変えつつあるといってよい。国家・政府がパターナリスティックに救済の手を伸ばしてくれる時代が再び訪れることはありえない。多くの人々が国家や政府の干渉を大きなお世話だと感じ、そのために税を支払うことを拒否する動きもある。国家や政府がどのような役割を持ち、そのためにはどのような大きさで国民や企業はどの程度の負担を覚悟すべきか、についての国民的合意が形成されないまま、政府は一方的にその機能を縮小しつつある。その再分配機能の縮小、公共サービスからの撤収、加えて企業や家族共同体の揺らぎは国民のなかに格差を拡大し、『下流社会』を形成しつつある。にもかかわらず、日本においては新自由主義に替わるあたらしい社会のありようが示されていない。もちろん、ここ数年、介護をめぐって、子育てをめぐって、青年の就業をめぐって、新しい連帯と協同の動きが全国各地で広がり定着してきている。おそらく、次に求められるのは、こうした新たな協同の動きを大きく統合し社会と国のありようとして国民の前に提示していく作業であろう。

2007年問題といわれるいわゆる団塊世代の退職という人口構造の変動は、団塊ジュニアの本格的な子育て期の開始とあいまって、地域社会に新たな矛盾とさまざまな変化の可能性を呼び起こすことになるであろう。それはくらしの協同の必要性を深刻に提示する一方で、その担い手を豊富に持つことになる。くらしの協同は2000年代後半にむけて新たな発展の段階に入ろうとしている。




(第1号議案) 
2005度 活動のまとめ、会計報告(案)


1. 全体のまとめ


2005年の第13回総会記念シンポジウムでは、あらためて日本の生協運動の土台である共同購入、個配に焦点をあて、その直面する問題とその「進化」のための課題、方向を参加者とともに考え、議論する場をつくることができました。参加は、生協関係者を中心に関心も高まり、ここ数年で最高となりました。また、シンポジウムの成果を単行本『進化する共同購入』として出版し、生協関係者を中心にさらに広い範囲で購読、活用されています。シンポジウムでの問題提起と論点は何であったのか、議論されたこと、されなかったこと、さらに深めるべき点は何か、などが今後の課題です。
研究フォーラムでは、「グローバリゼーション」や「生協と福祉」などをテーマに取り上げました。参加者は毎回定員を上回るなど盛況で関心の高さを示しました。社会経済環境が大きく変化するもとで、人々のくらしや意識の変化と協同組織の社会的な位置や役割を正しくとらえる上からも、こうした社会事象の要因や内容読み解くことは引き続き重要です。
 各種セミナーは、研究委員・会員の参画・協力を軸に外部の研究者の協力も得、また会員生協の位置づけも得て、一つひとつ企画を成功裏に開催することができました。
研究会は、研究会は2つの特別研究会と8つの自主研究会で、くらしと協同の事業にかかわる様々な課題、関心をテーマとして調査、研究活動をすすめました。研究会の成果としては、特別研究会の一つである生協の職員教育研修研究会は最終報告書をまとめ、職員論研究会(自主研究会)からは、長年の研究会の集大成として『生協職員の挑戦』が出版されました。また、地域研究会であるえひめ・くらしと協同の研究会では、医療生協と購買生協の職員意識調査にとりくみ成果をまとめつつあります。その一方で、食を中心としたライフスタイルや地域コミュニティの関係性や相互扶助など、生協との関わりも視野に入れた、くらしの変化についての基礎的な調査・研究は十分にすすみませんでした。社会や暮らしを支える基盤が大きく変わりつつある中で、これたの系統的な調査研究の基盤づくりや研究グループの活動が求められます。
『協う』は、こうした研究所のとりくみと連携しながら、くらしと地域、協同にかかわるテーマで編集をすすめました。
これらの取り組みの具体的な内容は、次のとおりです。


2.研究会


 研究会は、会員による自主研究会と常任理事会の委嘱による特別研究会があります。2005年度は、3つの特別研究会と8つの自主研究会でスタートしました。

(1) 特別研究会 


① 生協職員の教育研修研究会
(ア) 研究会は、生協に求められる教育研修のあり方と必要とされる個別の教育研修の課題やすすめ方などを明らかにすることを目的として、2003年にスタートしました。研究会は会員生協派遣メンバーと研究者(アドバイザー)で構成し、2004年3月の第3回理事会(03年度)に中間報告「生協の目指すべき職員像」を提出し、昨年度(04年度)は、各生協においてパート職員の「戦力化」(役割と仕事力の向上)が焦眉の課題なってきていることから、「店舗におけるパート職員の教育研修」をテーマに、コープこうべ、京都生協などの事例に学ぶことから研究をすすめました。
(イ) 今年度は職員メンバーの人事異動に伴うメンバー交代もあり、第2期の研究会として再スタートしました。
・ 第2期の研究会は、生協の店舗事業におけるパート職員の仕事力アップに焦点を当て、そのための課題や方向性を明らかにする研究をすすめました。
・ 具体的には、メンバー生協の一つであるならコープのWSS(=ならコープ版レイバースケジューリングシステム)具体化のケーススタディを契機として、生協の店舗経営とレイバースケジューリング、職員教育のあり方についての学習・研究をすすめ、その成果を「店舗におけるレイバースケジューリングシステムと職員教育のあり方について」としてまとめました。
・ 研究会の経過は以下のとおりです。
第1回(5/23)研究会の経過と今年度の課題について報告・意見交流
ならコープケーススタディのすすめかた検討
第2回(7/25)ならコープ「みみなし店」ケーススタディ
第3回(8/31)ならコープWSSの研究論議、論議を踏まえて作業チームでの研究・検討をすすめることを確認
※作業チーム会議 ・・・ 第1回(10/15)、第2回第2回(12/02)
第4回(06.1/18)報告書及び各レポートの骨子検討
第5回(06.2/10)レポート検討(第一次)
第6回(06.3/08)レポート検討(第2次)
第7回(06.3/29)報告書検討

(ウ) 本研究会は研究所の第3回理事会(06.4/22)での研究報告をもって終了する予定です。研究成果(報告書)は冊子化の予定です。

② 「生協の組合員組織と活動研究会」
(ア) 大規模生協における組合員組織とその活動、生協事業と組合員の関わり、などの視点から研究をすすめ、それぞれの活動の意味や生協運営上の課題を明らかにすることを目的に、昨年7月にスタートしました。
(イ) 今年度は5回開催し、研究会メンバーの問題意識を深めるための学習とそれぞれのテーマの絞込み(確定)のための議論を進めました。
〈各回のテーマなど〉
第1回(7/2) 研究会への問題提起と助言(研究所 川口清史理事長)
第2回(9/17) 「組合員組織政策の課題」(日生協 二村睦子氏)
第3回(11/19)「パルシステムグループの組合員組織と活動」(21世紀コープ研究センター 本郷靖子氏)
第4回(1/21) 座長問題提起(井上英之氏)、各メンバーの問題意識・研究テーマの交流
第5回(3/4) 研究テーマの検討

③ 「くらしの調査」検討プロジェクト
(ア) 05年度方針にもとづいて事業化の検討をすすめました。今年(06年)の総会記念シンポジウム企画の検討とあわせて次のような調査テーマが出されました。
・ 生協の個配に加わる組合員像を、そのライフスタイル(家族、食卓、購買・消費、生活の価値観)から捉える。
・ 都市部に増加するマンション住民に焦点をあて、「マンション・生協・コミュニティ」をテーマに、マンション住民と生協、地域コミュニティの調査。
・ 家計パターンと地域コミュニティのつきあい方など近隣関係調査。 
  など

(2) 自主研究会 

① 生協と福祉研究会
(ア)「協同組合の福祉事業と福祉活動の関連とその発展の可能性」を研究テーマにすすめました。
(イ) 調査活動と研究会および研究集会などへの参加は10回で、主には次のような調査活動を実施しました。
(訪問調査)
・ おおさかパルコープ&NPO友遊(8/2)、奈良・あすなら苑(8/6)調査
  ・ 『協う』特集にも関連させて、JAいずも、生協しまね「おたがいさま」(8/17-19)調査

② 現代生協研究会
(ア)研究テーマは、「現段階生協の存在形態の類型的研究と生協運動の展望」です。
(ウ) 今年度は、座長の都合により、研究会としての独自の調査活動や研究会が開催できませんでしたが、今後の研究構想と研究組織のあり方などについて考える必要もあり、今後の計画を練るための構想期間として位置づけました。

③ 生協理論研究会
(ア)「ポスト日本型生活協同組合の可能性に関する研究」(出版企画)の研究をすすめました。
公開研究会等で途中成果を発表しながら必要な論点を整理してきたこと、また執筆者全員の報告を終え原稿執筆を残すまでとなったことは成果です。研究会として3年目を迎えて年度内の出版を目標とし、出版を大月書店に引き受けていただくことができましたが、種々の事情により企画内容を変更して既提出原稿をまとめて出版することになります。
(エ) 研究会、研究報告は、公開研究会をふくめて6回行いました。
(オ) 生協総研との共同企画「市民生協の創設と発展:元リーダーに聞く」(生協のオーラルヒストリー)のインタビュー、原稿化をすすめました。インタビューの内容は、「生活協同組合研究」と「生協総研レポート」(No50)の「市民生協の創設と発展-元リーダーに聞く(第1集)」に掲載されました。
当研究会が担当したインタビューは次のとおりです。
横関武氏、稲川和夫氏、石田静雄氏、田辺凖也氏、加藤善正氏<以上は掲載済>、山中洋氏、冨田巌氏、立川百恵氏
         
④ 化学物質リスク研究会
(ア) 「科学物質による環境汚染リスクの削減をめざし、社会システムづぃりの方向性を考える」をテーマに、2005年度は以下のような研究課題を掲げて研究活動すすめました。
・ PRTRデータの追跡調査
・ プラスチック廃棄物の適正処理の課題と問題点の整理。
・ 化学物質規制についての考え方の整理
・ CHEJ(健康・環境と公正支援センター)との交流企画への協力
・ 水銀の有毒性についての検討
・ 蛍光管回収、適正処理に関する社会実験への協力
(イ) 研究会は6回開催し、研究会内外の方から話題提供や報告をうけ、それにもとづく討議をすすめました。また、研究会以外にも現場視察交流事業などにとりくみました。

⑤ ひろしま地域研究会 
(ア)この1年は休止状態でした。

⑥ えひめくらしと協同の研究会
(ア) 「生協組織にみる運動および事業の一体的ガバナンスの可能性に関する研究?愛媛県下における購買生協・医療生協の職員実態調査を通じて?」をテーマに、調査研究活動すすめました。
(イ) 前半は、生協職員論に関する到達点と愛媛での生協職員アンケート調査の諸課題を検討し、7/19の研究会では、「生協職員論をめぐる研究・議論の整理と今後の課題」についての講演と討議を行い、その後は、調査目的と対象者を明確にしつつ、具体的なアンケート調査項目の検討し、10月末には調査票を完成して、11~12月ににかけて調査票の配布・回収を完了しました。(現在、データの入力作業に入っている。なお回収率は、以下に添付した表の通りである。データ入力の終了後、来年1月から3月にかけて集計および分析作業に入り、5月に報告会を開催し、内外の意見を踏まえた上で6月には報告書を完成する予定)
(ウ) なお、アンケート調査は、2購買生協、3医療生協で、調査票配布枚数は、2376枚、回収率は71%(1686枚)でした。
(エ) 研究例会は9回開催しました。

⑦ 消費者法研究会
(ア) 「求められる消費者団体訴訟制度の姿」をテーマに研究をすすめました。
(イ) 研究会は1回の開催でしたが、内閣府が発表した「消費者団体訴訟制度骨子案」について、詳しく検討を加えることができ、研究会メンバーが活動しているそれぞれの消費者団体が発表するパブリックコメントの作成に役立てることが出来ました。

⑧ 尾崎経済思想史サロン 
(ア) トピカルな話題を切り口に、その話題の持つ歴史的意味を共有しあうサロンで、今年度は憲法問題が主テーマでした。
(イ) 開催は2ヶ月に1回平均で、はじめて開催した公開講座「「主権とは何か、主権者とは誰か~私たちにとっての『憲法問題』」(2006.1.14)には、悪天候にもかかわらず30名の参加がありました。

⑨ 生協職員論研究会
(ア)研究会としては、04年度で終了しましたが、研究会の成果として『生協再生と職員の挑戦』(『生協職員論の探求』97年に次ぐ出版)を2005年7月に出版しました。
(イ) また刊行後には合評会も開催しました。


3.各種研究企画(シンポジウム、等)

(1)総会記念シンポジウム
① 第13回総会記念シンポジウムを開催しました。
(ア)第13回総会記念シンポジウムは、「進化する共同購入」をテーマに開催しました。
・ 運営委員会を中心に生協職員の参加も得て実行委員会体制を組み、1~5月にかけて、生協調査、流通企業調査、プレ研究会などを、のべ10回程度実施しました。
・ 参加者数は、1日のみの参加者を含めて総勢231人(シンポジウム;200余人)となり、ここ数年の中では最高の参加者になりました。
・ 記念シンポジウムの成果は、『進化する共同購入―コミュニケーション、商品・品揃え、ビジネスモデル』として出版しました。

② 第14回総会記念シンポジウムの準備をすすめました。

(2)研究フォーラム、講演

研究委員会の公開企画としてのような内容で開催しました。

① 第1回(9/24)『グローバリゼーションと協同組合』(参加/50名)
      報告1 「平和な共生経済をどうつくるか
―『世界社会フォーラム』の中で考えたこと」 
藤岡 惇氏(立命館大学経済学部)
      報告2 「食のグローバリゼーションと協同組合」
小池恒男 氏(滋賀県立大学環境科学部)

② 第2回(06.1/29)『超高齢社会・福祉・生活協同組合』(参加/42名)
報告1 「生協の高齢者福祉の取り組みが問いかけていること」                           
橋本 吉広 氏(地域と協同の研究センター 事務局長)
報告2 「地域福祉の推進と生協の役割~フィールドを全国から千葉に移して見えてきたもの~」   
北 昌司 氏(コミュニティケア研究所 所長)
      コメント  村城 正 氏(社会福祉法人協同福祉会 理事長)
            中村 健二 氏(おおさかパルコープ 常務理事) 

(3)セミナー

① 第7回生協女性理事・トップセミナー(05.11.26-27)を開催しました。
(ア)呼びかけ人を中心に企画づくりを進めた結果、今回はゼミナール、ロールプレイなども取り入れた参加型のセミナーになりました。
(イ)参加者は、14生協から42名と、これまでで最多の参加となりました。近畿を中心に、会員生協で組織参加の位置づけをして頂いたことも過去最高の参加につながりました。
(ウ)企画内容
講演/川口清史氏「生協のガバナンスと組合員理事」
ワークショップ〈ロールプレイ・ディスカッション〉
/アドバイザー:川口清史氏、浜岡政好氏
ゼミナール/講師:川口清史氏、浜岡政好氏、的場信樹氏、杉本貴志氏
オプショナルツアー/高台寺夜間拝観、円徳院住職法話とお茶席、長楽館

② 第4回学識理事研究交流会(06.3.11)
(ア)おおさかパルコープの協力を得て、同生協の本部ビルで開催し、参加は、12生協から26名でした。
(イ)企画内容
話題提供1:「生協のガバナンスと学識理事・監事の役割-パルコープの10年を振り返って-」 
          乕田喜代隆 氏(おおさかパルコープ理事、弁護士)
話題提供2:「CSR(企業の社会的責任)とその背景-企業に求められるもの-」
          森岡孝二氏(関西大学経済学部教授、株主オンブズマン代表) 
ディスカッション
交流会

4. 受託研究事業

(1)日生協医療部会『第5回職員意識調査』受託研究
① 日本生協連医療部会より、『第5回職員意識調査』について委託研究の申し入れがあり、昨年12月の常任理事会で受託を確認し、2006年1月より共同研究会がスタートしました。
② 今回の医療生協職員意識調査は、次の目的と位置づけをもって実施されます。
(ア)医療生協で働く職員の仕事と意識の実体について調査研究し、マネジメントや処遇あり方、労務管理の改善課題を明らかにする。
(イ)調査結果は、今後の人材育成政策や教育プログラムへの活用および次期の医療部会中期計画策定のための基礎資料とする。
(ウ)調査研究のプロセスを『医療生協人』モデルを検証し、医療生協人像を深める過程として位置づけて、共同研究会をすすめる。
③ 調査報告書は2006年10月を目処にまとめる予定です。


5. 出版刊行、会員への情報提供など

(1)『協う』編集と発行
① 2006年度の企画
6月号/特集「「平和を考える」、ほか
8月号/特集「進化する共同購入」(総会記念シンポジウム)、ほか
10月号/特集「福祉と協同」、ほか
12月号/特集「グローバリゼーション考」、ほか
06.2月号/特集「生と死を考える」、ほか
06.4月号/特集「シニア世代と生協」、ほか

(2)出版刊行、ホームページ
   出版・刊行をとおして、研究会および研究企画の成果を発信してきました。
① 単行本
(ア)『生協再生と職員の挑戦』戸木田・三好編 かもがわ出版(9月)(生協職員論研究会)
(イ)『進化する共同購入―コミュニケーション、商品・品揃え、ビジネスモデル』くらしと協同の研究所編 コープ出版(11月)

② 通巻冊子
(ア)第7回生協・女性理事トップセミナー(通巻〇号)<予定>

③ Discussion Paper
(ア)第4回学識理事研究交流会(通巻〇号)<予定>
(イ)フォーラム「超高齢社会・福祉・生活協同組合」<予定>

④ ホームページ
(ア)定期更新と「事務局だより」(ブログ)の更新をすすめました。また、ホームページをとおして、研究成果を発信してきました。


6.研究助成、講師活動・紹介

(1)研究助成
(2)講師活動、講師紹介など 
① 今年度は、以下の内容でした。
8/30 近畿地区生協府県連協議会・行政合同会議/講演「地域のセーフテ
 ィネットと生協の役割」/講師:浜岡政好氏
9/7コープしが所属長学習会「生協事業の課題と展望」講師:川口清史氏
10/4 パルコープ組合員(地域活動)学習会/講師:的場信樹氏
10/11京都府生協連学習会「安心・安全のまちづくり―地域のセーフティネットと生協の役割」/講師:浜岡政好氏
1/13岡山県生協連研修交流会・講演「日本の社会経済システムの構造変化と生協」/川口清史氏
2/16 京都生協子育て支援交流会 コメンテーター/近本聡子氏(講師紹介)
3/16 おかやまコープ センター長・幹部職員学習講演会/講師:川口清史氏
3/23ララコープ 幹部職員学習会/乕田喜代隆氏(講師紹介)


7.外部研究会への参加、研究会開催協力、研究所交流、その他渉外活動

(1)外部研究会等への参加、開催協力
① 「地域と協同の研究センター創立10周年記念のつどい」(11/29)参加

② 第3回協協同組合福祉フォーラム2006イン松山(2/25-26)
(ア)開催にあたっては、同フォーラム開催準備会より申入れを受けて、準備ための共同研究会「協同組合福祉研究会」を立ち上げて協力を行ないました。
(イ)共同研究会は4回開催され、研究所からは、「生協と福祉研究会」と運営委員会のメンバーが参加しました。

③ 研究所交流会(生協総研主催)(12/9)参加


(3)渉外活動
① 出版物の送付とあわせて、研究所入会のお勧めしています。


8.機関会議、運営会議
(1)第13回総会
    2005年6月25日に開催し、研究会の内容や進捗などについて交流しました。また、提案があった会費基準の一部見直しについては、その後の理事会で検討し会費基準の一部見直しを行ないました。

(2)理事会、監事会
   開催状況は以下のとおりです。

〈理事会〉
第1回(12/24)/講演企画、活動の進捗と今後の取り組みの報告
第2回(06.4/22)/総会議案検討
第3回(06.7/1)/総会議案、研究委員の確認

 〈常任理事会〉
第1回(12/12)/経過報告、次年度に向けての研究課題など検討
第2回(06.4/4)/第14回総会記念シンポジウムの企画討議、研究所06年度方針検討

 〈監事会〉
    第1回(06.4/28)

(3)企画委員会
    企画委員会は、研究所の事業計画案づくりや諸研究企画を充実させるために設けられ、専務理事および団体会員と研究委員会からの推薦者で構成しています。今年度は以下のような内容で開催し、研究活動と実践現場の情報交流をすすめながら、総会シンポジウムをはじめとした諸企画の検討、年度事業計画の検討などを行ないました。また、日常的にも研究と実践をつなぐパイプとしての役割を果たしました。

〈開催状況〉   
第1回(8/27) 
増田佳昭委員から話題提供、第13回総会シンポジウムの振り返り論議
第2回(11/24)
 経過報告、各生協の状況の交流、次年度に向けての研究課題など検討
第3回(05.1/29)
第14回総会記念シンポジウムの企画討議、研究所06年度方針検討

(4)運営委員会、研究委員会
〈運営委員会〉
毎月開催し、研究委員会をはじめとした諸研究企画、セミナー企画の具体化や研究会活動や研究上の問題意識の交流・議論をすすめました。

〈研究委員会〉
本年は2回の公開企画(研究フォーラム)を開催しました。会議では、自主研究会と委員の研究上の問題意識の交流などを行ないました。


9.会員状況

(1)個人会員
・ 2005年度の加入9人、退会11人で、会員数は198名(正会員190人、賛助会員8人)です。(2006年3月20日現在)

(2)団体会員
・ 入会が2団体で、退会はありませんでした。
・ 団体の会員数は、38団体(正会員31、賛助会員7)となりました。(2006年3月20日現在)


10.事務局体制
・ 事務局は、研究活動とくらしや地域、生協をはじめとした様々な協同組織の実践の場をつなぎなら、研究所の活動を推進しました。
・ 2005年度の研究所事務局体制は、以下のとおりでした。

      事務局長 清水 隆
事務局員 林輝泰、岩根泉
客員研究員 久保建夫(非常勤)
院生事務局 名和洋人、玉置了、宮川加奈子(非常勤)






(第2号議案)
2006年度活動方針及び予算(案)


1. 2006年度研究活動の基調

(1) 経済のグローバル化や規制緩和で激しくなる社会の二極分化や少子高齢化がすすむなかで、くらしや地域社会の変化をとらえることが引き続き重要です。また、そうした社会の中での生協や協同組織のあり方や役割の探求がいっそう求められています。
(2)景気回復がくらしのレベルで実感できない中で、生協事業は引き続き厳しい競争にさらされています。市場競争の激化と様々な社会環境の変化の中で、生協には、組合員のくらしと協同組合としての発展方向を見据えた事業のあり方、探求がこれまで以上に求められています。
(3)こうした状況のもとで、研究所には、生協や協同組織が、人々のくらしや社会に意味のある積極的な役割を果たせるよう、これまで以上に研究活動を強めることが求められています。「くらし」と「協同」に関わる様々な調査・研究を、シンポジウムをはじめとした研究企画や研究会、出版物などを通してすすめます。また、個人会員や団体会員の構成員の積極的な研究参加・寄稿を呼びかけます。


2.研究会について
(1)特別研究会
① 生協の組合員組織と活動研究会
(ア) 当初より約2年を目処に期間を設定しており、2006年度も継続します。
(イ) 組合員組織とその活動、事業と組合員の関わりなどの視点から、組合員活動のもつ意味や可能性、生協運営上の課題を明らかにします。また、メンバーが組合員、職員、研究者で構成されていることを踏まえて、研究をとおした組合員、職員の調査分析力の向上をはかることを研究会の目的としても位置付けます。
(ウ) 今年度は、昨年の予備的な学習、研究を踏まえながら各メンバーの研究テーマや調査対象をきめ、研究・調査をすすめます。

② 「くらしの調査」プロジェクト
(ア) 今年度は、当研究所の調査事業としてスタートさせる準備をすすめます。
(イ) 主に、生協組合員の暮らし・ライフスタイル(食卓、購買・消費、意識、世代、家族、地域コミュニティとの関わり方)について、テーマを絞り込みながら系統的な調査活動をすすめることを目指します。
(ウ) 具体的には、会員生協のリソースや問題意識とのすり合わせを行いながら、独自のモニター制度なども検討します。
(エ) 年度をまたがる事業として予算化を行います。プロジェクト体制については、研究委員会の協力を得ながら確立をはかります。

(2)自主研究会
  ① 生協と福祉研究会
代表:上掛利博氏(京都府立大学)、ほか5名
(ア) 06年度は「新しい福祉の創造と協同組合」をテーマに、介護保険事業にとどまらない、高齢者、障害者、子どもを含めて、安心して暮らせる地域づくりの中での協同組合の福祉を考えます。
(イ) 研究成果は、研究所の総会シンポジウムの分科会や秋のシンポジウムなどに反映する予定ですすめます。また、最終的には報告書としてまとめる予定です。

② 現代生協研究会
代表:田中秀樹氏(広島大学)、ほか8名
(ア) 研究テーマは、「現段階の生協の存在形態と展開方向についての実証的研究」とします。
(イ) 同研究会がまとめた「中間報告書」をもとに、今後の研究方向性と研究会のあり方について討議します。
(ウ) 将来的には報告書を完成することをめざします。

③ 生協理論研究会
代表:的場信樹氏(佛教大学)、ほか4名
(ア) 出版企画「ポスト日本型生活協同組合の可能性に関する研究」をもって研究をすすめましたが、同書の出版をもって研究会を終了します。

④ えひめ・くらしと協同の研究会
代表:冨長泰行氏(愛媛医療生協)、ほか9名
(ア) 06年度は、生協職員の意識調査(アンケート調査)の分析を行います。(春の研究集会4月~9月)
(イ) 調査研究の成果はレポート、研究集会等で発表します。
(ウ) 8月に研究集会をもち、その後の研究テーマを検討します。

 ⑤ 化学物質リスク研究会
代表:原強氏(レイチェル・カーソン日本協会)、ほか5名
(ウ) 基本的な研究テーマは継続します。
① 家庭用有害廃棄物に関する研究
② 廃棄物処理施設の環境負荷の実態についての情報集約
③ ヨーロッパの化学物質規制の動向把握
④ PRTRデータの追跡調査
(エ) ゲストスピーカーも交え、例会は6回程度とします。
(オ) 「家庭内有害廃棄物」についての研究を何らかの形でまとまることをめざします。

 ⑥ 消費者法研究会
代表:松本修司氏(京都生協)、ほか5名
(ア)「消費者団体訴訟制度のこれから」をテーマとします。
(イ)例会は4回程度開催し、公開研究会で成果を発表する予定です。

 ⑦ 尾崎経済思想史サロン
代表:久保建夫氏(研究所)、ほか7名
(ア)トピカルな話題を切り口に、その話題の持つ歴史的意味を共有しあいます。
(イ)開催は2ヶ月に一度程度とし、来春(1月)に公開講座を開催する予定。
(ウ)今年は、憲法の主権者=生活者の内容を理論的に具体化し、冊子化を目指します。

  ⑧ 食育活動研究会
代表:あざみ祥子氏(NPO法人コンシューマーズ京都)、ほか9名
(ア)食育基本法の趣旨や計画と共に食環境など社会的要因を含めて研究し、特に中学生から大学生まで若い層の食生活を調査し、食べる側から望ましい食育活動を提唱することを目指します。
(イ)研究の成果は、中間発表を京都消費者大会(9月)と全国消費者フオーラム(2月)で行い、最終的に報告レポートとして出します。

  ⑨ 生活圏市場研究会
代表:久保建夫氏(研究所)、ほか2名
(ア)生協組合員を巡るくらしと生協事業の関係を、生活圏市場という視点から捉えなおし、組合員と職員の接点で実践的な検証を試みます。
(イ)月一回のペースで調査あるいは例会を行います。調査は組合員、職員ヒアリングによって日常生活の実際から「生活圏市場」を考察します。
(ウ)研究成果については、報告書の作成や報告会開催をめざします。


3.シンポジウム等、研究企画について
(1)総会記念シンポジウム
① 引き続き、年間の中心企画として位置づけます。
② 運営委員会を中心に企画委員会を組織して開催準備をすすめます。

(2)セミナー等
  ① 第8回生協女性トップセミナー
(ア) 組合員理事・リーダーの問題関心に応え、役割向上につながるテーマ設定と運営を目指します。
(イ) 企画については、昨年の総括を踏まえて、企画づくりから運営までを、呼びかけ人を中心にすすめます。

② 第5回生協学識理事監事研究交流会
(ア) 引き続き、生協の学識役員の問題関心に応えるものとして企画します。
(イ) 生協の学識役員経験者を中心に企画検討を行います。
   
③ 社会経済セミナー
(ア) 理事会開催時を中心に適時開催します。

(3)シンポジウム、フォーラム
① くらし、協同、生協の調査研究の交流・発表の場として、研究委員会開催時をメインにしながら、適時開催します。
② 運営委員会、企画委員会と事務局を軸に、研究委員の参画を得ながら、企画づくりを行います。
(予定)
・2006.9月研究委員会開催時
・2006.12月研究委員会開催時
『社会的協同組合シンポジウム―イタリアの社会的協同組合と「庄内まちづくり事業協同組合」の経験はわれわれに何を提起しているのか?―』
・2007.3月研究委員会開催時


4.受託研究事業

(1)日生協医療部会『第5回職員意識調査』受託研究
① 日本生協連医療部会からの委託にもとづき、共同研究会としてすすめます。
② 今回調査の目的と位置づけは次のとおりです。
・医療生協で働く職員の仕事と意識の実体について調査研究し、マネジメントや処遇あり方、労務管理の改善課題を明らかにする。
・調査結果は、今後の人材育成政策や教育プログラムへの活用および次期の医療部会中期計画策定のための基礎資料とする。
・調査研究のプロセスを『医療生協人』モデルを検証し、医療生協人像を深める過程として位置づけて、共同研究会をすすめる。
③ 研究所からは、浜岡政好氏(運営委員、佛教大学)、高山一夫氏(研究委員・京都橘大学)、岡本哲弥氏(京都橘大学)と久保客員研究員、事務局が共同研究会に参加して調査分析を行います。また、調査実施機関である産能大と連携しながらすすめます。
④ 調査報告書は2006年10月を目処にまとめる予定です。


5.会員への情報提供、出版、講師紹介、研究助成等
(1)『協う』は、研究所と会員をつなぐ情報媒体の柱として、引き続き編集の充実に努めます。

(2)研究成果や研究企画の内容を、単行本、通巻、Discussion Paperなど、出版物として会員内外に発信します。

(3)ホームページを、会員と研究所とつなぐ媒体として充実させます。

(4)講師紹介や研究企画などを通して、団体会員との連絡・連携を強めます。


6.研究所間の交流、提携

(1) 生協・協同組合関連の研究所、地域の多様な研究機関との交流を引き続きすすめます。
(2) 生協総合研究所との合同企画「現代生協のオーラルヒストリー企画」は継続します。
① くらしと協同の研究所の母体は生協理論研究会とし、同研究会の基礎研究として位置づけます。
② 研究成果の一部は『生活協同組合研究』『生協総研レポート』(生協総研)に掲載されます。


7.研究所の運営
(1) 運営委員会、企画委員会を軸に、月次・四半期毎の具体化をはかり、研究所の日常活動を推進します。

(運営委員会)
毎月第3金曜18:30~(日程調整が必要な場合は前後週の金曜日)

(企画委員会開催月)
第1回  8月
第2回  11月 進捗報告と次年度方針第一次論議
第3回  3月 次年度方針原案検討

(2) 研究委員会
① 開催は年3回とします。
② 一部は「研究フォーラム」として、研究会および研究委員による研究報告を基本に、諸研究の報告と交流をすすめます。テーマによっては、研究委員以外の会員参加もオープンにします。
③ 二部では、研究所の諸企画・方針の進捗や研究企画の報告・検討など行います。
④ 研究委員には、定期的に生協・協同組合研究の成果や実践情報などをとおして、諸研究と生協研究の接点づくりを行います。

(研究委員会開催月)
第1回  10月 
第2回  1月
第3回  3月 

(3) 理事会、常任理事会、監事会
① 理事会は年3回開催します。
② 常任理事会は、理事会開催と合わせて適宜開催します。
③ 監事会は年度最終の理事会前に開催します。

(理事会開催日)
第1回 12月  日(土) 
第2回  4月  日(土) 総会議案検討
第3回  7月  日(土) 総会議案確認

(4) 総会・シンポジウム
第14回 2006年7月1日~2日
第15回 2007年6月30日~7月1日《予定》 
 
(5) 財政
・ 引き続き、経費の効果的運用と圧縮に努めるとともに、受託事業や共同研究の拡大をめざします。
・ 会員の拡大をはかり、財政の安定をめざします。